コラージュ・プレイ・ゴウ
                  
   



   日曜日の午後八時「利家とまつ」が始まったのに、ハニィは部屋から出てこない。

正確に言うと昨日の夕方、買ったばかりのデスクトップをぶら下げて、ハニィは部屋に篭ってしまった。 以来、便所と風呂に、出てきただけで引き篭もりは続いてる。  どうした、ハニィ? 悩みがあるなら、俺に言えよ。 俺の、この胸、いつでも貸すぜ。

なにしろ、おかしい。今朝は、10時のサンデープロジェクトすら、ハニィは見に来なかった。 いつもは『ソウタロウさん、痺れるぜ!今日も、ガツンと言ってくれよ!』と、前傾姿勢で応援するのに、それすら凌駕する事情とは、ああ、ミゼラブル、俺には全く想像つかねぇ。

昼頃、流石に 「なんか喰えよ」 と ドア越しに、声を掛けたのだけど 

『うるせェ、勝手に一人で喰っとけ。』 

そう、返事があっただけ。 
わかるよハニィ、オマエは何だか今、手が離せない。 
だけども俺には 『ちゃんと食べろよ』 そんな優しいオマエの真意、俺はしかと汲み取るぜ。

けどよぉ、ハニィ、もう九時過ぎだ。 今日の「あるある」は大豆だと。 なぁ、見に来いよ、最中もあるぜ。  孤独な俺は、一人 十時の「ウルルン」を見た。



『おまたせ、ダ〜リン! 泣くほど、感激?』

ハニィが、ドアを開け放つ。 俺はその時泣いていた。 ハニィ、見ろよ、イイトコロだぞ、パブアの気の良い連中と、今 正に別れの瞬間だ。

『そんなな、どうでもイイんだよ。』 

ハニィが無情にテレビを消した。 ムカッパラ来た俺だったけど、何だかハニィはテンション高め。 キュートな瞳がきらきらしてる。 なぁ、どうしたよ。 悩みは、すっかり解決か?

『はぁ?なに言ってんの? ボケたか、ダーリン。 見ろよ、俺様の傑作を!!』

そして、パソを立ち上げる。 すると、画面一杯 笑顔のハニィ。 おぉ!これ、ロングビーチん時のだろ?  黒のビキニの似合う、君は ビーチのセクシーマーメイド。 あぁ、ハニィ、コレを俺に作ってたのかい?


『ソレもあるけど、ホントの見所はこんなんじゃねぇよ。   ほれ、定期サイズ。』

気の効くハニィは、定期サイズでパウチの画像を放って寄越した。 
アリガトよ、コレでいつでも一緒だな。  


『さぁ!ここからが問題です!! ビーチクを捜せ!プレイ・ゴウ!!』

ハニィが、ガシッとクリックする。 そしたら、点滅するハートが7つ、それぞれにはビーチク画像。


『よく見ろ、ダーリン、俺のはどれだ? 愛があったらわかるよな!!』

わかるのか? って、いや、ハニィ、でも、


『なんだよ、てめぇ、デモってなんだよ。 日頃の愛顧はどうしたよ。』

そりゃ、そうだけども、けどよぉハニィ。  じゃ、オマエは俺のチンコがわかるのか?

ハニィはにやりと笑って、右手でワッカを作って見せた。


『これ、ビフォー。 これ、アフター。』

何だか自信、たっぷりだ。 言われてみると、そんなかな、俺。 
やむなく、7つのビーチクを睨む。

ハニィのは、色がこんくらい。 撫でるとこう、引っかかる感じで・・・


『妙な手つき、してんじゃねぇよ』

いや、ぶつなよ、おい、だって想い出してるんだよ。 そう言うオマエだって、さっきのはどうよ。 ガードしつつ、記憶を頼りに、俺は一つを指差した。 これだよ、きっと。 多分、そう。


『これ?これか? よ〜し、スイッチ・オン!』

ハートをクリック、たちまち出てくる カンノミホ。


『はずれ〜! けど、傾向としてはイイ線いってる。 ネクスト・チャ〜ンス!!』

イイ線か、この系列か、じゃ、これか?


『ぶぶ〜〜〜っ!!キムラタクヤは焼けてんだろ? 俺ぁ、色白なんだよ、ボケ。しっかり見ろよ。』

んな事言うけど、乳輪のとこは、わかんねぇじゃん。  
わあったよ、色白色白・・・ハイ、これだ。


『白けりゃイイのか?てめぇはよ!!目玉、開けとけ! こりゃ、ミヤザワリエだ。 そんでもう、三つ外れな。 オマエの愛は、偽者なんかァ?』


ああ、まずい、まずい、物凄いまずい、すっかりハニィが切れかけている。 
俺の愛は、ホンモノだけど、世の中そうそう優しくねぇよ。 
助けて、神様、一体どのビーチクですか?


『ふうん、で、コレにすんの?』

ーーー うん・・・。


『馬鹿野郎!シャロンストーンじゃねぇかよ、こら! タイプ的には俺だけどもよ、そんなの言い訳になんねぇぞ!!』

タイプ的って、ハニィ、そりゃ違うと思う。 

でも、今ソレは、言わないでおく。 
もはや般若のハニィの顔が、俺を崖っプチに追い詰める。


『後三つ、三つだとよ!! 7引く3は4! な! ドンだけ間違えりゃぁ、気が済むんだよ!』

気が済むモンなら済ませて欲しい。 もうもう、ハニィ、俺は泣きたい。 
なぁ、止めようよ。 
なんでもするから、ゴメンよハニィ、だから許して。 許してくれる?



・・・  許してくれるわけもなく、不運な俺は、デビフジン、マツムラ、とミスをして、いまや、天国に一番近い哀れな男。 マツムラで、ハニィの鉄拳が飛び、俺は激しい頭痛と戦う。 いよいよ二つ。 二者択一。 俺の生死の別れ時。  死神みたいなハニィが笑う。


『さぁ、ダ〜リン、行ってみようか?ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な!!』

スウィッチ・オン!!  


押した途端に、画面に舞い散る花吹雪。 

BGMのお囃子に乗って、ハトヤの浴衣姿のハニィが回転。 
三回まわって浴衣を半脱ぎ。 あぁ、ビーチクが、蛍光ピンクに光ってる!! 
画面右から、ピンクの丸文字スクロール。
  

                『 好きにして!!はぁと! 』 



『感動したろ?感動したか? なに固まってんだよ、ビックリしたか? 
最後のアレな、千代大海!アレ選んだら、コロスね、俺は。セルフで、撮るのは結構大変!! 苦労したぜぇ〜。 おいおい、ダ〜リン、ダンマリさんかよ? やや、もしや てめぇ、むらっとキタか? しょ〜がねぇなぁ、やっとくか?!』




その晩、俺の息子は深くこうべを垂れたままだった。  


今宵の俺は、愛の迷い子。









     * ダーリンとハニィ 第13話愛の迷い子(完)
        次回 第14話 ダーリン危機一髪・消えた幼稚園バスをお届け致します
   

                 乳首祭りにいそいそ出品、タカタさん、ゴメン。