虎印シロップ



俺の足だか、お前の足だか。 俺の腕だかお前の腕だか。 
しゃぶってるんだか、吸われてるんだか。 

こりゃまた器用に絡まるもんだ。  難攻不落の知恵の輪じゃないか。 


『知恵の輪だったら、イカサマだろう?  だって、俺ら、繋がってるじゃん』


あ〜、キタ、それ、なし、いや、良かったんだけど、咥えたまま喋るのやめれ。 思わずお前の、イカシた後ろ頭を鷲掴んだので、ウエッとなったお前が涙目で睨む。 

悪い、ついな。

けど、お前ってば、すげぇエロいよ、その顔は。 もう、犯罪。 このクソ暑いのに、股座に潜って頑張っちゃってたものだから、真っ赤な顔して、ぬらっとした唇で。
あ〜駄目駄目、そんなの見ちゃうと、俺、もう、ケダモノ。



『見せろよ、ケダモノスピリッツ。』

180度の小さな旅をし、俺は、お前を、引っ張り上げる。 チロリと伸ばした舌に触れ、勿体つけて唇を合わせたらもう、ケダモノ二匹は貪るばかり。 散々啜り、溢れさせ、蜘蛛みたいに動く指は、忙しなく擦ったり摘んだりと大活躍。

ところでこの部屋暑過ぎないか?

抗議の証か鎖骨を噛まれた。 謝罪の意を持ち乳首を噛んだ。
俺たちのソレは、辛抱堪らず、仲良く触れ合いゆらゆらしてる。


『ゆっくり、な。』

ケダモノを宥めつすかしつ、紳士な俺は、心して侵入する。 侵入完了、大きくお前が溜息をつけば、それが合図。 ゆっくり動かし、角度を変えつつ、お前の好い場所を探し出す。

小さく短い声があがり、お前は魚のように跳ね、熱い粘膜が俺を絞り込む。 みつけた、みつけた、動け動け、俺。  そしてお前の声が聴きたい。 

半端に掠れて、いつもよりハイトーンの、歌うような、哀願するような、言葉にならない お前の声が、俺は、聴きたい。 

お前は、伸ばした腕を俺に巻きつけ、時折、抓ったり噛んだりするが、そんな風に、我慢するな。 ちっとも、みっとも無くなんてねぇから。 

俺は、あんあん言ってるお前も、堪んなく好きなんだよ。


『 畜生、じゃ、もっと、あんあん、言わせて見やがれ 』

強気なお前の望むように。 深く、深く、擦れあい、揺すられ揺すりだから、お前はあんあん歌うし、俺はそれ聴くと結構やばくなる。 お前の頭が首の下の窪みをくすぐる。 

なぁ、こんなに擦れあって絡まってヌルヌルの俺達、溶けるんじゃあないか? 

そう云うの、ガキの頃知ってたな。 

ぐるぐるぐるぐる、だんだん溶ける。 ぐるぐる擦れて、ぐるぐる縺れて、俺が俺だか、お前がお前だか、ぐるぐる溶けて、わかんなくなって。  

熱くて甘くて、とろっと滴る、シロップみたく、なるんじゃねぇの? 


『 黙れ、クソ、・・ッ・・・・・ とっととイケよ 』

くだらねぇ事考えてるのは、そうでもしないと余裕がねぇし。  
やっぱ、先にイッちゃあ、駄目だろう。 駄目なんだけど、あ〜、ぐるぐるしてきた。 目玉の裏が、ちかちかしてきて、ぐるぐるぐるぐる。  

はぁ〜〜  お前も、大概、頑張るね。 

なぁ、もうイッちゃえよ。   

オトナな俺は、一緒にイこうと譲歩するけど、いざその時は、必ず俺より、一瞬でも後にイこうとする、負けず嫌いなお前。 でももう、限界だろ、俺の掌は腹はお前ので濡れている。 俺は、イク。  ケダモノ二匹で、シロップなんざ、なりたくもねぇ。  

あ、でも、ちょっとイイかもな。 お前と俺と、甘ったるい、何かに、なっちゃうのってのも。そんで、幸せな誰かに、喰われちまうってのも。


『 シロップじゃねぇよ。 トラだ。   虎がバターになるんだよ、クソ。 』

うつ伏せに伸びたお前は、タバコに手を伸ばす。 最後のクソは、てめぇにだろ? 
いつもの事だ。 先にイクのは悔しいんだか、しばらくこっちを見やしねぇ。 

けど、そうか。 ありゃ、トラか。 で、バターな。 
どのみち、おおむね、間違っちゃあいねぇし。 


『 麦茶くれ 』


ほいよ、待ちな。 氷は二つな。  
あ〜、俺って、マジ、優しくねぇか? 


優しい俺の、トラ印バター。   悪くねぇ。  うん。  全く、悪かねぇな。



『 あとでホットケーキ、作ってやる。 だから、黙れ。 』



   June 30, 2002



         
     


 *   『ちびくろサンボ(今、これNGですか?)』のトラバター。 ホットケーキも忘れずに。