腿スリ侍
御江戸、いいトコ八百八町、秋の夜長の女房肥える、隣は何をする人ぞ。
「やってまんがな、ツカノシン様、よぉけぇ、旨み、もろうてまッせぇ〜」
垂れた目袋、陰険狸、堺の商人、恵比寿屋番頭、ニタリと笑って、袖の下。
差し出す小判を、すいっと手繰る、隈の浮く顔、カマキリ酷似、痩躯猫背の悪徳奉行、闇夜の似合う、ツカノシン。
「して、首尾はどうじゃ? 恵比寿屋よ。」
「明日、深夜、スジカワの屋敷、其処の、あ奴めを、送る算段。」
声を潜めて恵比寿屋が示す、薄暗がりの、部屋の隅、小さく正座す、影一つ。 すっぽり被った黒頭巾、面隠すが風情は若い、女にしては、上背は高く、男にしては、些か儚い。 その頼りなさに、眉顰め、怪訝な表情、顕わの奉行。
「あ奴、一体何物ぞ? この大役が、勤まるテダレか?」
すると、恵比寿屋身を乗り出して、一層顰めた小声で伝える。
「天神堀の、カラクリ頭巾・・・荒らした屋敷に、歌留多をを一枚、しかも主の、枕元に置く、テダレっちゅうたら、そら、凄腕ですわな、ツカノシン様、御安心を。」
売れない女郎の、端唄三味線、哀れに流るる、遊郭の夜、行燈揺れる、奥座敷にて、物の怪二匹がニンマリとした。
夜回りの声、ただ物悲しく、夜も更けて、ところは深川、茗荷谷。
灯りも消えた、スジカワの家。 主も従者も眠りに沈む、その最中、唯一動く、影一つ。 何故だか優雅な抜き足差し足、月明かり弾く黒耀の瞳、頭巾に隠れる、麗し白皙誰が知る?
やがて、するりと障子が開き、射し込む月夜が主を照らす。 武者絵、さながら凛々しいかんばせ、眠れる獅子の閉じたるまなこ。 覗き込むのは、二つの黒耀。 ひらひら闇にも、仄白い手が、指先に挟む一枚の札。
「獅子も眠れば、仔ウサギにすら噛まれよう・・愚かな主よ、絵図面は頂いた。」
枕元に忍ばせた札、音もなく消え入ろうとする頭巾の来客、しかし、その足首を鋼の縛めが、地に縫い止める。 瞬間、振り上げられた小刀をはらい、煌く刃先を袂で除ける。
「・・・えてに帆を上げ・・・ ほほう、ウサギめ、何処に船出る?この月夜。」
摘んだ札を読み上げるのは、闇に漂い、なおかつ染み入る深い声。 握り込む踝の軋みも、幽かな苦痛の声すら愉しげに、引き倒し手繰り寄せ、憐れウサギの頭巾を剥がす。
かぼそい首筋、華奢な骨組み、カラクリ頭巾の正体見たり。 浄瑠璃人形、悲恋の小姓、眦に影、花のかんばせ、白ウサギ。 強屈な主に、組み敷かれつつも、返答がえすは、美貌の盗人。
「突き出すか? いや、いっそ、ならば、殺すが良い! 憐れまれ、永らえる身では無し!」
ウサギの叫びは、獅子の肌に消え、瞬く黒耀、驚きに揺れる。 屠られる如、獅子の吐息の、いと熱きかな。 上下する胸は、あまりに薄く、逆らう細腕、括られ頭上に。
「狩りの楽しみ、屠るばかりではない。ソレを味わう楽しみも然り。 まして、美しき獲物とあらば、尚更。」
「な、何をなさいます? 慰み者にする御積もりか!?」
「誰ぞの差し金か知らぬが、スジカワ四代目を愚弄した咎、この身体で償って貰おうぞ! ふふふ・・・幸い未だ夜は長い。」
にやりと唇、釣り上げて、白磁の痩躯に点々と、喰らい付くかの、朱印が散る。 淡い胸元の、蕾を摘まれ、吸われて、ウサギが月夜に跳ねる。 月夜のウサギは艶やかに鳴く。
からげた裾は、手折られた花。 花に蜜蜂、刺すのは毒か? 毒ばかりで無し。 やがて、果実はしとどに濡れて、捲くられた裾、其処より誘う、ウサギ、哀しや、哀しや、ウサギ。 淫らな責め苦に、哀願し、鳴く。
「・・・あぁっ・・もういっそ、もう、いっそ・・・」
「なに、まだまだよ、音をあげるには、ちと早いぞ、ウサギ!」
クルリ返され、容易く収まる柳腰。 剥き身の尻が、夜気に曝され、突き出した姿、羞恥に震える、懇願ウサギ。
「ソォレ!ウサギよ、えてに帆をかけ行こうじゃないか? 今宵帆かけて主と行こうぞ!!」
「あぁ、なりませぬ! あ・・っふ・ん・・ぁあぁ・・」
御宝拝見、山里の覇者、栗の花の香、本体マツタケ。
秋の味覚は尻の間に消ゆる。
「江戸にハビコル、悪党め! 天突く御宝にて成敗しようぞッ、我、人呼んで、腿スリ侍、スジカワツクヨシ、とくと味わえ!!」
「も、腿スリ・・・、お前が? お前がか?!・・ァッ・ひァッ・」
ウサギの問いかけ散り散りに、ツクヨシの先が、ウサギのイナリを、鰻の如くに内腿滑り、ここじゃどうじゃと責め立てて突く。 灼熱の御宝、果実を掠め、その熟れた実は、しかと握られ、否応無く絞られる。 水蜜は泣けど如く。 涙は黒耀にも滲むのだが、そこに一つ、強固な意志。 しかし、獅子は舐め取る、菊座すらも。
「ひとぉ〜ツ!突くのは傘の為! ハウッ・・ッ・・いいぞ! ウサギ! 主のイナリはアケビのようだ!!」
「イ・・いやぁっ・・」
もがけど縛め、緩まず。 寧ろ、捩る身淫靡な指が、按配ヨロシと、這い回り、ぬらりと蝮のこうべにも似た、熱い塊閉じようとする、ウサギの両腿しかと挟まれ、一層猛りを顕わに示す。
「ふたァ〜ツ!擦れる竿の為!・・うぅっ・・クッ!・・ 毛脛ばかりは風情がないが、主は白くてナント艶やか! ケツも、腿も、祝い餅の白さながらに! ほうれ! どうじゃ! 良い按配だ!」
「はぁあ・あ・ッ・・ンッ・ も、もう、ひと思いに、御宝名刀、この身の菊座の鞘に収めて下さりませぇっ!! ・ん・はぁ・ッ・・・」
「みぃ〜っつ!滲めど、漏らさぬが武士! ・・フホッ・・ォうを・・スバラシキかな! まッこと名器じゃ! 我息子を泣かせるとはなッ! フォッほ! が、しかし主のも、沼地の如くのヌカルミようぞッ!! どうじゃ! ん? ん?」
巧みで執拗、愛撫を受けて、艶めく白磁はしっとり色づく。 可憐な菊座は宝刀求め、ヒクリヒクリと指すらに歓喜。 哀れウサギや生殺し、いっそ恥辱と苦痛のみなら、強請る身体の浅ましきなど、知らず涙に頬濡らすものを。 今や濡れるは、息づく果実。 爛熟の淫、放てず喘ぐ。
「・・ご、後生です・・ンふぁ・・ゥつ・っ、イカせてくださいぃッ・ぅ・・お侍様ァ〜っ・・イカせてぇ・あぁァ・ンつッ・ぅ・・・」
「よぉ〜ッつ! 四方やコレほどの名器、再び見舞えるとは、我天に感謝しようぞッ!・・フぅッ・あ・ハァッ!!」
「ふ・・再びとは、、ソレは・・ァ・はあぁン・・」
「フン、なに、10年近くは前の事、主君の敵と抜き身を翳す、戯けた浪人峰打ち組み敷き・ ・ソ奴が、何とも、婀娜な男で、悔し涙がまたソソル。 して、喰らわばまた、絶品名器、そうじゃ、ソ奴、主に似ておる、腰の窪みにホクロが三つ、喘げば突き出す淫靡な尻の、ホクロのかたちが思い出しても、うッ・・ク・はァッ・つ・・フッ・・・」
高みを堪えて、柔肌弄る、侍の手をウサギが掴む。やんわり掴んで、怠惰に振り向き、濡れた流し目口元に笑み。 凄艶な色香、身震い脈付くマツタケの露。
「ねぇ、お侍様、
その、戯け浪人、どうなった事か、行く末、存じておりまするか?」
「喘いで、強請って、添い遂げてくれと、戯けめ、オボコ娘の夢語りなんぞ唱えてメソメソ泣いてはいたが。 ハテ、捨てて置いたが、ア奴がどうした?」
ウサギ自ら、股に挟んだ侍の竿、やわやわ弄りその腰揺らし、朱を纏う眦、淫靡な肢体。 低く語りは、吐息と続く。
「・・・ 男は、一夜の淫無に溺れ、捨てられても尚も影を追い、病身の妻と幼き子らを、顧みずばかりか、疎ましく思い、ヨタカの真似事、行きずりの男、寝所に連れ込む自堕落の日々。
そして或る夜、妻子を捨てて、微々たる財持ち、旅の役者と遁走す。
三日後峠で撲殺された、男は、猟師に発見される。
愚かなりけり、笑いますかな?
お侍様・・ この顔、身体に、馴染み、覚えは御座いますかな?」
「ヌ・主は・・いったい・・ふ・をォッ・クぅッ・・・!」
きゅっと指先絞り込み、イカさぬ仇打ち、ウサギが噛み付く。
真珠の歯列に逞しき腕も、肉引き裂かれ闇に、獅子が、叫ぶ。
「我は、3代目イナナキ流、カリヤキクエモン、淫欲に死す父の仇、そなたの流儀で打ち据えようぞ! 我名刀、アジ之エノキ受けてたもれ!!」
「ホソッ!ナガっ!ミギマガリッ?! ふぁっ・・クッ・はあぁァ・クワッ!!」
途端に反転、意外にムッチリ官能のケツ、侍の谷をグワシと割り込み、ウサギ転じて種馬の如く。 手中にオサメル仇の菊座。
♪〜ホッテェ〜ホッテェ〜またホッテェ〜担いで担いでヒトマワリ。
「積年の恨み、今こそ果さん! イナナケ、畜生、どうじゃ、コッチは、如何か、どうじゃ!!」
「ウッふぉオ〜ッカァつッ!! キツイの一発ッッウぅ〜〜ん」
夜鳴き蕎麦屋が最後の客を、追い出すその頃、屋敷は色めく。
大八車に幼子乗せた、陰気な男が眉根をよせる。
「・・・ わかるか、コレが ・・・」
「・・・ 父上、因業の匂いが致しまする。・・・」
「因業は連なる、この地を二度と通るでないぞ、良いか、ダイゴロウ」
幕末勤皇、花のお江戸は八百八町。
人の出会いは十人十色、回り逢うたは仏の妙縁。
後にスジカワ四代目ツクヨシ、生涯妻を娶らず、身の回り一切、いつの間にか居着いた美しき小姓に命じ、幸せに、そして、恥じらう笑みを浮かべておったそうだとか、違うとか、やっぱりそうだったとか。
カヨウナ夫婦も居たそうな。
October 20, 2002
* 侍(サトミコウタロウ似45歳)と、訳有り美少年コソドロ。 スマタでリバ。 ノ〜プロブレム。
きっとスマタはこんなじゃないと、スマタ教授はカンカンだろう。 ワカランよ、深きスマタ。
しかし、今回作成した、喘ぎ声サンプル5種、今後役立つ、きっと、とっても。
|