CHITCHI&SURREY
   
        



 13日の金曜日。今世紀稀にみる嵐の夜に、/母親の(その直後、水深5センチの浴槽にて謎の溺死を遂げる。胃袋からは大量に飲み込んだバスキューブの薔薇の泡。)/膣から生まれ落ちた悪魔の赤ん坊。/同時刻、豪雨による土砂崩れでタワー崩壊、真下のエロ映画館を直撃。/父親(ユルい勃起チュウに圧死。全身は鉄筋をダイレクトに受け、歯磨き粉チューブを猛烈に握り潰した状態に酷似。口からは生温いホットドックゲロ。地面で自分の脳ミソと混じり合う。)衝動において皆殺しの開始。/終焉はアノ場所へ向かう。(2HIT)
―――時間の跳躍。20years after。光の早さで飛べ!(20年後、2人は路上で出会う。双子のようにひどく似ていた。セックスを繰り返し、チッチ&サリーというイカレた名前で呼び合った。)

 フリッパーで弾かれたシルバーの球は斜面を加速し、点滅する光がそれを追う。耳に流れ込むのはピンボールのヒット音だ。チッチはベッドの上で身体を折り曲げた。不定期な呼吸をし、スプリングから転がり落ちる。腹部には床に散乱したカセットテープの感触。得点は最強のハイスコア。
容赦なく「幻聴」は神経を攻撃する。絶えまなく続き、最後はきまって神サマの言葉が聞こえた。(神のコトバは信号化されている。認識は不可能。)チッチは室内を見回して絶叫した。空中を小さなUFOが飛来し、1機、2機と増殖していた。アダムスキー型飛行物体は「神」の命令下に旋回する。チッチは苦笑した。…見え始めたのだ。自分は生まれながらに狂っているらしかった。チッチ自身そう感じていた。だがラインを越えろと感じる。信号化されたコトバは何を意味するのか。ソイツは間違いなく人間になりすましている。無差別に人を殺していけば発見できるかもしれない。身体を斜に捩った。皮膚の下で薄いプラスチック製のカセットケースが割れた。

 「―――サヨナラ、セカイ。」

 チッチは嗚咽した。キッチンで買い置きのゼリービーンズを食い、果物ナイフを探した。それが世界との決別&神を殺す行為の始まりだった。
 
 サリーはコインランドリーで雑誌を何度も読み返した。怠惰に時間を潰す。熱を含んだ乾燥機のドラムはグルグルと回り、円形のガラス越しにシャツや靴下がジャンプしていた。サリーは自動販売機で吸い慣れない煙草を買って1本だけ吸う。いつも吸っているヤツは売り切れのランプが点いていたからだ。フィルターを口に噛むと、サリーは洗い終えた衣類をカバンに詰め込む。湿度は高く、どこか蜜に似た感触がした。アパートに戻る途中、住宅街を抜ける。知らない花が貪欲に生を謳歌していた。近くで誰かがピアノを弾いていた。やがて自宅が見える距離に差し掛かると、路上にいるチッチの姿を目撃した。挙動不振な動きをしている。サリーは舌打ちした。

 「お前、そこで何やってんの?」

 チッチは透明な袋に入ったゼリービーンズを噛みながら、路上駐車の黄色いバンを凝視していた。反応は無かった。

 「なぁ、サリー。アレ貰おうぜ。」

 「――へっ?」

 「アレで皆殺しして回ろう。最後は神サマをブッ殺そう。」

 チッチの手には果物ナイフが握られている。いつもリンゴやハムをカットするやつだ。ヤバイと感じた。サリーは片腕で咄嗟にチッチの身体を阻止した。だがチッチはその制止を振り切って逃亡を図った。前方の車内には男が瓶入りのジュースを飲んでいる。チッチは鈍い動作でボンネットに乗り上げた。フロントガラスを威嚇するようにベロリと舐める。男は一瞬にして何かを察知すると物凄い早さでキーを回した。チッチはギラついた目で路上のブロック片を促すと「殺せ」とサリーに言った。

 「殺せ、サリー。神サマをブッ殺そう。」

 再度、チッチは言葉を放つ。どこかコマ送りの映像を見ているようだ。彼方で知らない花が静かに揺れている。破綻していく感触。それは手ごたえが無いのにリアル感を帯びていた。チッチは紛れもなく完全にイカレた。イカレた人間としてそこに存在してしまったのだと思った。サリーは足元のコンクリート片を両手で掴んだ。そのまま矢継ぎ早に男の頭部へと振り落とした。泡のような液体を吐いて(誕生日とかでブッ放つクラッカーのように噴射。)ぐにゃりと顔面が歪んだ。地面に血液が侵食する。それはある種の象徴だった。サリーは男をバンから引きずり降ろした。(3HIT)

 「―――乗れよ。神サマのところに連れていってやるし。」

 サリーは運転席に乗り込む。黄色いバンは安っぽいエンジン音を放った。シート脇に差してある瓶入りコーラは、まだ冷たくべっとりと水滴が付着している。サリーはそれを喉に流し込んだ。チッチはゼリービーンズで色が交じりあい、斑になったベロを突き出す。――全ては開始された。予定されていたようにだ。南に向う。その方向にかならずいるとチッチは断言した。途中、給油所で4人を殺害。ただ衝動のままに実行する。(7HIT/内、1人は目に、もう1人はケツに薔薇の花を突っ込まれる。)
―――チッチの中で、音は依然として支配していた。

 車を何度か乗り替えながらチッチとサリーはひたすら南に向かった。カーラジオからは自分達を追うニュースが流れている。チッチは買ったパンを食った直後、車内に全部吐き出した。明らかに衰弱し、発熱していた。チッチは吐瀉物を拭い、高熱に冒された指でフロントガラスの前方を指す。「まだ続けろ」という合図だった。それでも行為を続行するのは「神」に対して執着している証拠だ。眼下に町が見えた。真昼の光線が支配している。太陽は狂いもなく頭上を照らす。平等に光を放っていた。

 「殺そうサリー。皆殺しを続けよう。」

 サリーは従った。指示通り無差別にヤッていくだけだ。猛スピードで坂道を下りる。チッチはその振動で大きく身体を弾ませた。鉄条網に沿って入口を探し、町に侵入した。手っ取り早く、目に入った食料品店に入る。客1人と店主を確認。店主は立ったまま呆然と首を横に振った。(絶叫する間もなくビビリ小便ダダ漏れ。)チッチは最悪の状況下で猛烈に笑っていた。挑発するように下半身を剥き出す。片手にナイフを持ち、萎えたペニスを手で支えるとプロペラみたいに高速回転させた。チッチは棚にある食料を投げ捨て陳列棚上に立った。後ろを向いて膝を曲げ、連中どもにケツの穴を広げて見せる。そのまま公開ショーのように排便を開始した。汚物は異臭を帯びて次々と床へ落下した。

 「十字を切って跪け!」

 チッチはケツを出したまま肉切り包丁(武器レベルアップ)を振り上げた。客の腹部をメッタ刺しにする。その後、電子レンジ(!)でトドメをさした。西瓜のように鮮やかな血液が散った。頭蓋骨が砕けて、プリンのような脳漿がチッチの顔面に飛ぶ。床にある身体はただの肉塊だ。チッチはそいつの頭部を踏み砕く。鈍い音を放った。口の中に靴底を捩じ込むと、残った単眼の目は透明なゼラチンのようにキラキラと透き通っていた。(8HIT/電子レンジで天国行き。)チッチは身に付けていた衣服を脱ぐ。2人は店を出ると南に向かって200メートル歩いた。目前に、建物に遮られた光景&剥き出しの鉄塔が現れた。錆びた金属の表面は磨耗して剥がれている。彼方から供給される電力がこのラインに乗って届くのだ。

「コイツに登ろう。もっと先が分かる。」

 チッチは全裸(フルチン、靴だけ着用。ケツはウンコ塗れ。)で、遥か頭上にそびえる尖端に向かって足を掛けた。萎えたペニスが硬度を帯びる。一点を目指して空へと登っていく。その姿はひどく美しかった。
 
「―――サリー。警察だ!」

 チッチの叫び声が聞こえた。サリーは町の侵入口に視線を送った。再度、鉄塔を目で追う。チッチは更に上部へ移動していた。水平に伸びる配線に手を伸ばす。――それはある種、天国(?)へのドアを開けたともいえた。
チッチの身体は火花を飛ばし、異質な変化を開始した。汚物に塗れた尻がビキビキと動く。町の細部へと供給される筈の電流が一斉に流れ込んだ。

「―――チッチ!」

 サリーは、上空で弾けるチッチの強烈な痙攣を見た。あらゆる言葉をもってその光景を表現する事は不可能だ。ひとつのサイケデリックを体験する。チッチの身体から無数の蝶。同時に鮮やかな陽射しの中をゼリービーンズの雨が降り注ぐ。(時間の後退>>生まれ落ちたあの夜も雨は激しくエロ映画館を叩いていた。)チッチの身体から極彩色の羽根。ミクロレベルの粒子をまき散らし、硬直したまま配線の上で踊る。かつてヒロシマで目撃されたような光がチッチを包み、テレビ番組のコントで観るような「神」があらわれた。歓喜に湧く肉体&肉塊。やがてチッチの身体は配線から解放される。風塵を巻き上げて滑り込むパトカーの上に落下した。(9HIT/感電死ヤロウ、THE END。)

 その限りなく美しい光景は消え失せた。サリーは空から視線を外し、ゆっくりと周囲を一瞥する。銃口を向けた警察官が包囲していた。サリーは微かに顎を上げる。従順に両手を天に翳した。容赦なく地面に寝かされ、その手首には手錠が掛けられる。チッチの死体が見えた。全身に不規則な穴が開き、髪の毛の焼け焦げた匂いがした。口の中にザラついた砂が侵入する。ゆっくりと奥歯で噛み砕く。――終焉はアノ「階段」へ向かう。チッチが愛した世界の人間達に裁かれるのだ。

 チッチはかつてない奇跡のような変貌を遂げた。チッチが蝶とカラフルなゼリービーンズの融合であったように、全ての物質は解かれ、分解される。だとしたら、このリアルな肉体は何の融合だろう。モラルという名のロープは首に掛かり一直線に落下する。首の骨を砕いて振り子のように左右に揺れる。答えはその瞬間に判明するだろう。強力な陶酔感が全身を襲った。
―――歓喜に湧く肉体&肉塊。破片はひどく甘い。
砂を飲み込み、不敵に笑った。

「―――I'm Happy!」

その真下へとダイブする。(10HIT!!!ミナゴロシ完了!)


                       END






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       >  ウメキュさんへ、愛を受け取ってクダサイ。
           本文の(/HIT)は殺した人間をカウントしてみましたガ、ドウヨ。

       
        
        サイコ兄弟参上ッ!! 義理人情ナッシングッ!!

    ドウヨって言われても、スゲェ! としか言いようのない疾走感。
    ブラウン管からドロリケチャップが流れたらヤだなとかそんな気持ちになりました。
    屠殺場でゲームする気分? まァそんなです。 
                         読後なんかキます。 アリガトウ御座いました。 

 
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