極楽カタストロフィー


    
 # 1.

アスファルトの照り返しに、脳髄が泡吹きそうだ。 

すれ違う整髪料の胸糞悪さに、そいつのアレはさぞや酷でぇ臭いなんだろうよと甲虫のようにてかる頭を眺めた。 そんな脈絡なき俺自身の荒み振り、思わず声を上げて笑いそうなのを堪える。

が、そいつを咥えんのに、一つも問題は無い。
寧ろ--- あぁ大方、えらく貧相だろうソイツのマラを、俺は嬉々として餓鬼が喜ぶアイスみてぇにしゃぶんだろうよ。 汁だらけなのを舌先で掬い、間抜けが間抜けな声なんざ上げりゃ、仕置きに裏筋皮一枚ってのを噛んでヤルのも悪くはねぇな、ハハ全く悪かねぇ。 

薄ら寒い妄想に、俺は笑みを浮かべる。

信号待ちの一山幾らの茶パツの女が、怪訝な顔をして俺を見る。

どうした、女? 笑う男は珍しいかよ、

俺は殊更微笑みかけて、軽い目配せをオプションにつけた。
何故か、女が頬を染める。 
馬鹿め、ブスがイイ気に自惚れんじゃねぇ。 ケツマンコには、興味はねぇよ。
目玉の裏が、チカチカ点滅を始めた。 
俺は餓えている、欲している。
衝動は殺意と酷似し、このまま浅ましい淫欲に喰い尽くされてしまいたい。



     # 2.

某百貨店5階呉服売り場、ココはいつでも人影が無い。
かつ清潔で、適度にざわめいているとなれば、連れ込んで遣るには全く気が利くじゃないか。

そいつは、チワワみてぇに震えて、不似合いの白いデカイケツをオドオドと突き出す。 なんかクダラネェ事言おうとして開きかけた口に、芋虫みてぇなそいつの指を突っ込み、手始めに 『舐めろ』 と命じた。

『しっかり舐めな』

ぴちゃぴちゃ可愛い音がして、そいつは懸命に唾液を絡ませる。
こりゃ、ホントに犬だ。 オイ、犬! ワンって言って見るか? 
ハハハ、無理だろ、悪いな。 しゃぶってるんじゃァ、無理ってものだ。

黒光りするやけに立派な個室のドアに、豚が鼻面を押し付けて呻いている。
しまりの悪いブヨブヨした真っ白いケツを俺は抉じ開けて、豚が必死で己の指三本を、捲れかけた粘膜に必死で抜き差しするのを眺めていた。

ガラ空き正午、愚鈍な東横各駅で、コイツはデカイ身体を縮こまらせて座ってた。
茹だる暑さと衝動に吐き気を催した俺は、吊革に半ば縋り頭の芯がチリチリするのを感じる。
辟易する俺の前、生臭い熱い息を吐く愚鈍の王たるソイツ。 
卑屈でいて熱気を孕んだ、俺を視姦するそいつの視線。
豚野郎、欲情したか。 突っ込んだら豚らしく鳴くか? 

俺はソイツに瞬視線を合わせ、うっとりと目を伏せると、ゆっくり汗を拭うかのように首筋から胸元、シャツ越しの乳首を指先で辿り、喰い射るようなソレを意識しつつ、スラックスの上からも充分存在を誇示する股間を愛撫して見せた。 

豚は最早逆らえず、ふらふらと俺に続きホームへ降り立つ。

期待でケツの穴が震えんだろ? 豚! 
待ってろよ、鳴かせてやるよ、
今日の俺は、気前が良いんだよ。



     #  3.

膝まで下がったズボンと下着、見知らぬ男にケツを突き出し己の指で喘ぐ豚。 はは、そうはいねぇよ、コンナ馬鹿。 慣れた仕草はてめぇのイイ場所をしっかり抑え、時折、白い肉塊が跳ねる。

俺のペニスはぬらぬらと光り、半勃ちのまま、ずり下げた豚の尻山を叩く。
ちょっと前までソレを豚は、がっつき貪りうっとりとしゃぶった。 手軽な豚だな。 てめぇ一人で、イッちまえよ、ソラ。

俺は豚の腕を掴み、まどろこしさから激しく動かし抜き刺し掻き混ぜ、堪らずアヒィッと漏らした豚らしい声に、そうこなくちゃなと満足をする。
ぽたぽたと、豚のペニスが欲望を滴らす。
個室の黒い扉に、淫乱な豚の吐息が白く、水滴になる。

よろける豚を膝で押し付け、俺は煙草を取り出し咥えた。
頭の奥で、羽虫が騒ぐ。
目玉の点滅が極彩色で俺を煽る。 屠れ!屠れ!ソイツを貪り尽くせ!

豚が目尻を光らせ振り向き哀願するのに、反吐が出そうだ。 俺は優しく笑ってやった。 たるんだケツを鷲掴み、やけに綺麗なピンクのマラをキツク扱いて尿道を抉る。 豚の口から嘶きが洩れ、緩んだ口からは唾液が溢れる。 俺の手なぞを借りずも一層激しく抜き刺し、ぽかんと口を開く間抜ヅラをして、半眼上向き、ガクガク膝を震わせる。

達した瞬間、気の利く俺は、豚に褒美をくれて遣った。

豚が、声無き悲鳴を上げる。

無様なケツに煙草が押される。 豚には印しが良く似合う。
便所のドアに凭れて崩れて、それでも男は二度目を放つ。
無性に腹が立ち、うんざりしながらドアを開けると、同時に豚が便所の外に呻いて転がる。

だから、何? 

羽虫が、煩せぇ。 --- 煩せぇんだよ。



     #  4.

陰気で暗いアンティーク、その応接室で男は俺に、切子硝子のグラスに注いだ冷たい液体を無言で勧めた。 水滴の浮く濃い珈琲を一口含む。

  ・・・ き、君は、紅茶は苦手だと聞いて、だ、だから ・・・ 

口の中に心地好いほろ苦さと冷たさが広がり、俺は深く息を吐く。
俺はこの男の自宅を月数回訪れ、胡散臭い儲け話を棒読みに伝える。
男は一つも聞いちゃいないが、最期はそれにサインを記す。
ソレが俺の生計をたて、甘っちょろい世の中で息をし易くしてくれている。

コンスタントに契約を取る俺。
カマキリみたいな上司が言うね -- 君らも彼を見習いたまえ -- 。
あぁ見習いな、身体張っとけよ、尤も張れる価値ある持ちモンがありゃァな。

  ・・・ あ、暑かったかい? そ、外は、あ、あの ・・・

どもる男はもの欲しそうに、俺を眺める。 俺は唇を舐め、シャツのボタンを一つ二つと外し、暑がる振りで襟を緩め風をはらませる。 ゆっくり飲み干して見せる珈琲。 その度ごくりと動く喉元に、男は目が離せない。 だから俺はそうするのだ。 テーブル越しに男の髪を掴み、引き寄せ、噛み付くように舌を絡ませて、そら好きにしろと身体を渡す。 

テーブルの上、高価なグラスが転げて砕けた。

男と俺は柔らかな革のソファーで縺れ、急いた汗ばむ両手が執着をもって這いずり廻り、間も無く俺の身体は隈無く男の唾液で濡れた。
多分、俺は笑ってたろう。
淫蕩な顔で男を見下ろし、男に跨り、擦れて蕩ける粘膜に従順に従い喘ぐ。 カリ高、長竿、若干細い、そして中では広がるデカ傘。 男のマラは俺には馴染んだ、なによりソンナなのは楽だったしな。 

嘘っ八臭せぇ喘ぎ声を上げ、うっとり半目のサービスはどうよ? 
男もアレで下手ではないし、まぁ、ソコソコに愉しい戯れ。

けどよ、男が愛してるだのと戯けた事を言い、あぁこの畜生、すっかり醒めだよ。 調子付く男の間抜け面を眺め、締め上げ、追い上げ、しかし自ら精を放つ事は無く、犬のように震え果てる男の上から俺はやれやれと退いた。

まだ気だるげな男は放って、さっさと身支度を済ませる。
さて、書類は貰った。

「また、10日後に、」

これ、即ち営業。 甘く囁き、内心俺は呆けた男に殺意すら抱く。

 愛? ふざけんな

俺はね、脳髄が溶ける快楽が、欲しい。



     #  5.

饐えた臭いと点滅電飾、いつの間にやら通り雨か?

濡れた路上に灯りが映る。 この町で、俺はこれ見よがしに回遊し、時に誘って捕まる振りをし腹一杯の捕食をする。  

ホラよ、喰い付け、むしゃぶりたいだろ? 突っ込みたいのか? 突っ込まれたいか?
どっちだってかまやしねぇよ、只し存分愉しませてくれ、餓えてるんだよ、喰いつかせてくれ。

バーの裏口、襤褸切れみたいに転がるソレを俺は拾った。 
軽く蹴ったら小さく唸り、近づけた顔はまだまだ餓鬼だ。

『・・・何でも・・・・・・するから、』

懇願する声、口元からは胸糞悪い甘ったるい、その匂いに俺は苛つく。
何でもするのか? 言ったな? ラリ餓鬼。 じゃぁ遠慮無く。
ソイツを抱えて、タクシーを停めた。  餓鬼のケツから財布を抜き取り、意外な札に、訳有りと知る。   はは、こりゃ益々好都合。 

そして、餓鬼が、ぶらぶら揺れる。 

バスルームのドア、僅かに着く程爪先立ちで、両手を括られぶら下がる餓鬼。 散々嗅がせたラッシュが効いたか、マラはビン勃ち汁流し喘ぐ。 ニ連コックがキツク締め上げ、

 『--- イカセテくれよう、ナンでも、ナンデモするから・・・・・・』

甘えんな餓鬼。 
何でもするか? 何でも好きか? 言える程には何でも出来るか? バックモロ感、乳首もイケるか? オイルまみれのケツ穴見てみろ、極太バイブを軽々飲んだぜ。 俺は、迷わずMAXにする。

餓鬼が無様に悲鳴を上げるが、正直なマラは汁まみれで泣く。
おらよ、愉しめ! わざわざ途中で、買ってやったろ? 大方碌でもねぇ金なんだろうが、よぉ、感謝しろよ、爛れた頭で。

餓鬼はすっかり白目剥いてて、涙と涎で酷でぇツラ。
俺は長くて細いソレを、摘まんで、餓鬼の尿道に刺す。 緩い電気が流れるらしい。 餓鬼が一瞬素面のツラして、廻らぬ舌で一言洩らす。

 『--- ユルシテ、オネガイ、 』

馬鹿か? ラリ餓鬼、
誘った遊びは、終いまで遣れ。 



     #  6.

いつもと変わらぬ午前7時、俺はソファーで身体を起こす。

オイルまみれでラッシュの匂い、シャワー浴びるか?
これじゃぁ不味い。
そこでふと、昨夜の餓鬼を想い出す。 
あぁ、あのマンマだ。 けど、まァ、死ぬこたねぇだろ。

ノンビリ眺めに行けばバスタブの中、手足を結ばれデロデロの餓鬼が伸びている。
ケツから覗いたバイブはそのままに、モーター音を唸らせて、呆けた半目で涎垂らして、アハハ酷ぇ浮腫だ、勃起しどおしションベン我慢か? 暗紫色に鬱血したマラ。 

なんだ、吊るしてたの下ろしてやったか? 優しい自分にうんざりだ。

餓鬼のケツからバイブを抜けばポンと間抜けな音がして、急に抜かれたその空白に、もの欲しそうなケツ穴が、生簀の鯉みたいにパクパクしやがるから。  何だよ、抜いちゃあ寂しいのかよ? 尿道棒もさっさと抜いて、コックを外した途端にビクンビクンと震わせ吐き出す血液混じりの汁だかなんだか。

しかし恩知らずめ、餓鬼が声を上げてメソメソしやがった。

うるせぇ餓鬼はそのまま転がし、構わず俺はゆっくりシャワーを浴びた。 
身支度を済ませ、餓鬼を眺める。 メソメソしながら、まだ半立ちだ。 
なんだ? 充分、愉しんでるのか?
コイツはてめぇの玩具だ、てめぇで持っとけ。 
もう一度ラッシュを餓鬼に嗅がせて、ケツの穴にも垂らしてやった。
 『・・・ッ・・・・!?』
粘膜に沁みる痛みに呻くが、まぁ直にえらく良くなんだろうよ。 

手足縛ったマッパのマンマ、疼いてるケツに再びバイブを。 そのままそこらのシーツで包んで、俺は餓鬼を担いで出かける。 幸い地下の駐車場まで人っ子一人遭わずに済んだ。 そして俺は、ソコに着いたら蓑虫みたいな餓鬼を捨てた。 拾った所に戻すのが筋。 

あばよ、ラリ餓鬼、ドラッグキメんのホドホドにしな! 世話代含めて半分貰うぜ。

餓鬼に財布を放って返す。 俺はとっとと車を走らせ、どうなる事やら知ったこっちゃない。
大方気のイイ変態オヤジが、ホクホク顔で拾うだろうよ。



     
#  7.

爽やかな俺は、仕事もこなし、受付女に笑顔も返す。
爽やかな俺は、皮膚の下這う、淫欲の虫にゾクリと震える。

やがて繋がる内線。 
受け取る俺の爽やかな笑顔に、せいぜい誑かされてろ、受付女。
奴は社用のですます調で、俺を個室に呼びつける。 
涼しい顔で秘書に挨拶をすれば  『お待ちですよ』  と、ソコに通される。

毛足の長い臙脂の絨毯、シックな部屋に不似合いな棒立ち男。
男はオドオド駄犬の目をして、俺の足元に上等の生地で誂えたズボンの膝を着く。 男は手馴れた仕草で小さな完具を咥えて下ろす。 チチチと響く、場違いで可愛らしいファスナーの音。 取り出すソレをうっとり半眼で頬張りしゃぶる、コイツの取り得ときたらたった一つ、コレの巧さだ。 ならば飼い主たる俺は後ろ頭を掴んで押し付け、オラ怠けんなと駄犬を叱る。

犬は、大喜びだ。

吐き出す精を美味そうに啜り、見ろよ、期待に潤んで命令を待つ。
それならばと顎で勺ってデスクを示せば、男は嬉々としベルトを外し、苦心のジム通いで引き締まったケツをおずおずと突き出すのだ。 

ソラ、有り難く喰らえ!

俺は御期待に添い、しゃぶられた後のてかったマラを、慣らしもせずに一気に突っ込む。 犬は僅かに声を上げ穴を窄めたが、さすが淫売、すぐさまがップリと根元まで喰い付く。 逃がさまいぞと蠢く粘膜、その快感にクラッとした。 俺は男の竿を扱きつつ、激しく腰を叩きつける。 男は間抜けな悲鳴を上げて、もっともっとと尻を振る。 

わき腹を擦り上げ探り当てた男の乳首、冷やりと触れる金属。 それはこないだ遊びで刺した、そこらにあった安全ピン。 あぁと意外に思う一瞬、しかし即座に合点が行く。 

何だ? まだつけたマンマか? 余程気に入ったのか? この、好きモノ野郎が。

こりゃつまりコイツの、この淫売駄犬のリード。 成る程、ソイツを引っ張りゃコイツは益々乱れる。 

ならばコッチも寂しいだろうと堅くちっぽけなもう片方に、とっておきのワンポイントを付けてやるまでだ。 俺はキュウキュウ締め上げるに夢中なソイツの襟元から、羽根に木の実をあしらった小洒落た小さなバッチを外す。 気取ったデザインの社章。 縁が18金のコレは特別な地位の特別な証だが、アハハ、確かにアンタは特別だ。 
そして、躊躇わずに刺した。
男は急な痛みに悲鳴を上げたが、マゾかよ、おっ勃てデスクに頭を伸ばすソレはメソメソと汁を出して咽ぶ。 さて、ところで今、もう何回イッたのか? 引き抜き眺めれば、デスクに縋って崩れる男の、開いたケツから流れる残滓。 俺は男のケツに、催淫仕込の座薬を入れる。 

まぁ愉しみな、もうすぐ会議だ。 疼いたケツで、せいぜい犬人生でも語れよ。
ザマァねぇよなァ、会長さん。



     
#  8.

たかだかハシタ金だが、俺はそこでリスクと快楽を買う。 

薄暗い部屋、澱みは空気を濁りみたいにぶよぶよ固めて、湿った床は醜悪な欲望の象徴。 あらゆる体液が入り混じり咽返るそこで、本来の目的など果しゃしねぇ、果たそう馬鹿も居ねぇだろう生温いサウナ。 

俺は此処では見せモンであり、売られる性奴であり、快楽を牛耳るキングでもある。
視線はあからさま。 そして何処からともなく、握り、触れ、撫で擦る浅ましい手。 

あぁ、どうだい? 気にいったかい? こう云うのは、好みかい? 

ちゃちなジャグジーからサウナを抜け、見せびらかしを終えれば、行く先は歓楽御殿のヤリ部屋だろう? 仮眠室とも言うらしいがな、寝てるのか? 馬鹿が。 居るか? そんな間抜けは。 ブラインドを落とした部屋はラッシュの匂いが鼻をつき、徐々に眼が慣れれば、ほら見ろよ、そこらかしこでうめき、肉を叩き、擦る、最低最悪な肉塊が転々と汁に塗れ蠢く。 

入室時の差し込む灯りに塊は動きを一斉に止め、暗がりから湿った目で俺を値踏みしている。 俺はきっと、薄ら笑いを浮べていただろう。 倣岸なソレは、最早此処が俺の支配下であると悟ったからだが。 俺は塊をぬって、ゆっくりと奥へと進む。 奥へ行くほど、奈落のような其れは広がる。 快楽も然り、リスクも然り。

半ば程進んだ所で俺は数本の腕に拘束され、蛭みたいに吸い付く生暖かい感触をそこかしこに甘受する。 倒れ込む不潔極まりない布団。 一体何人のそれこれを吸い込んだか、湿って不快では在ったが、その薄汚れた極みにおいて醜悪な快楽に身を任せる己の醜悪さこそ、俺が最も餓えていたものだった。 

あぁ、溺れさせてくれよ、爛れちまう前に、
もう、幾らも残っちゃ居ない、まともな俺を、食い尽くしてくれ。



     
#  9.

最早、塊の一つ。 
最も大きな羨望と渇望の肉塊の王たる俺は、
一体何人にしゃぶられ、弄られ、咥えられてるんだか。

圧し掛かられ、耳元で聞こえる荒い息遣いの筋張った指の男と、股座に頭を突っ込んで咥えるに忙しい短髪と、背後から強引に羽交い絞め首筋に歯を立て乳首を執拗に弄る痩せ型の男と、後はもう数える気もしない。 

そして俺自身、好い加減何人のでヌラッてるんだかわかりゃしねぇ。 オッ勃ってるのを引切り無しに上に下に突っ込まれ握られ、ねじ込まれ、喘ぐにも息するにも容易じゃぁ無い有り様だ。  コリャ、とんだ人気モンだ。 俺は、これだからこの快楽を求める。

人格を持たず、思惑、それは飢えた欲望のみ。 それだけの快楽を、俺は何時だって味わい貪りたい。  俺は、淫猥な快楽マシンだ。 そのように設定され、忠実にその目的の為、稼動する。 

誰とも知れない短髪を抱え込み、咥えさせ、首筋に廻る硬い二の腕に噛み付き、腰骨を鷲掴むやたらカリの太い野郎に突き上げられ、込み上げた俺の声はどっかの野郎の竿をしゃぶるのに忙しいんで、ついに発せられはしなかった。 
頭の芯が真っ白になり、半眼の俺は点滅し続く残像を見る。
極彩色の最果て。 いつか這いずりそこへ向かおう、最果ての虚無。

ーー ふと、開放された事に気付いた。 

潮が引く様に俺は取り残され、そして一本の腕が俺を引き起こし、腰の立たない俺を寝袋みたいに抱えて歩く。

そうして俺は、個室へ放り込まれる。 

ハァンなるほど・・・・・ アンタが此処の主な訳ね。 数個しかない休憩室を独占できる、ココの主人たるアンタはこの俺を御所望なさったと? 幾分まともな布団が一つ、暗さに慣れればソイツが見える。 転がされた侭の俺を見下ろす、どえらく金をかけ創りこんだ分厚い筋肉の束。 ガタイもでかいが持ちモンもでかい、しかしコイツはそう若くない。 歳不相応の、造った身体。

つまり、コイツは、哀れだ。
なァ、アンタ確めたいのか? 
まだ全盛期と変らずイカセル、ヤレる、まだ自分はココの王なのだと、そうだと思うか?信じたいのか? 

末期の雄犬、瀕死の遠吠え、ま、せいぜいヤんな。  

俺が最後の、雌犬になるさ。



    
 #  10.

絡み合う獣、ソレ即ち欲望の亡者。 
貪り、餓える、タダ快楽により生を繋げる腐りかけの肉。

さすがに主は破格のテクで、俺もソコソコ互角に御相手。 なにしろ、恐ろしいほどに身体が馴染む。 久方振りに経験する、忘我と恐怖の狭間に位置する余裕の無い快楽。 ---が、しかし溺れているのは俺だけじゃない。俺たち二人に余裕などない。何故だか酷く胸騒ぎする本能の警告と、理性をチリチリ焦がす焦燥。 あぁ、なんだろな ・・・どこかで確かに覚えがある、馴染みだったかも知れないこの息苦しさは。 

担ぎ上げられ揺すられ突かれ、崩れ落ちかけ、無理矢理立たされ、思わず縋ったその右鎖骨、窪みに見る歪なケロイド--- 爛れた魚のカタチをしたコレは、

・・・・・・そうかい、アンタか。
あぁ、成る程ね。 道理で身体が、馴染み捲くりだ。 

覚えているよ。
アンタはどうだろうね?

--- 十五の八月。 町外れの廃屋の庭、シャツの袖口を朽ちかけた壁にアイスピックで縫い付けられ、俺は荒っぽく忌まわしい男の味を存分に叩き込まれた。 それは巧みに幾度も幾度も、快楽の後に激しい苦痛、苦痛の後には丹念な愛撫。 呼びつけられれば逆らう術など無く、幾度も幾度も、歓喜と恐怖と愉悦の叫びを、幾度も幾度も、声無き声を。 屠られる俺は唾液で湿ったボロ布の中、ありとあらゆる嘆願と哀願をない交ぜにして吐き出した。 無駄だと知りつつ。

そして、男は突然、消える。 俺に残ったのは、淫らな身体。 

あぁ、アンタだよ、あぁ、感謝するよ、
アンタに仕込まれ色々在ったが、今更恨みも何にもねぇよ。 
寧ろ、概ね、愉しんでるよ。 

恐らくアンタは覚えちゃ居ない。 ちょっと手ぇ出して、仕込んだ玩具。
その程度だろう? まぁ、そんなだろう。 

けどもアンタ、今はこうして俺を選んで、てめぇが仕込んだ身体を味わう。
因果なもんだ。 世間は狭いね。 
焦燥感は劣情になり、それは獰猛な破壊衝動の連鎖を産む。
幾度かイカされ、まだヤリ足りないのか、男が隅からラッシュとオイルを取り出す。 アハハ、なんだい、やり狂う様が見たいか、アンタ? ハハ、でもそりゃぁ、ちょっと無理だな。

俺はするりと体勢を反転させ、男に腕を絡ませ微笑み、頚動脈を数秒抑える。
見開く男に足払いを掛け、倒れこむ胴中に乗り上げる。

浴衣の紐での拘束は、早い。なんてったって、アンタ仕込みだ。

再会オメデト、さぁ同窓会が始まるぜ。



     
#  11.

可笑しなモンだが、身体は知ってる。 身体は教えてくれる。
だから俺は、コイツのイイ場所を尽く攻める。

なぁ、イイんだろ? へぇアンタ、やられんのは初めてか? 
-- なに、幾らもねぇよ、直に病みつく。 この俺が言うんだ、こりゃ、確実だ。

相当腹を立て、男は俺を怒鳴りつけたいんだろうが、こんな風にタオル噛まされりゃソリャァ、アンタ無理だろうよ。 その証拠に、面白いように男はのたうつ。 憎悪の視線もいつしか快楽に潤む。 てめぇの手口でてめぇが喘ぐ --- 所謂自慰だ。 裏スジを吸い上げ滑らしてゆくのも、カリの端っこ少し爪立てるのも、腸骨の上擦り上げるのも。 そうそうアンタ、意外と乳首弱いだろ? 吸われて噛まれんの、結構イケたろ? 

俺は男の脇腹に触れ指先で焦らし、二番目の骨に噛み付いた。 男が跳ねる。 噛ませた口から、呻き声が高く低く漏れる。 アハハ! ココだココ、アンタの一番。 男は布団に頭を擦り付け、最早、逆らう気力すらなく、寧ろ溺れて快楽に沈む。 

さぁココからだ、アンタ仕込みの真骨頂は。
快楽の後に何が来るのか、アンタは俺に仕込んでくれたろ? 

俺は、オイルとラッシュにまみれた男をゆっくりバックで攻める。 御優しい俺はノンケを喰うようにゆっくり丁寧に優しく、ひたすら紳士的に遅咲きの処女を犯す。 意外なソレに力を抜いて、男も徐々に悦楽を追う。

・・・・・・だからさ、たかだか指の二本、寧ろ嬉しい期待をしたろ? 
それがゆっくり三本になり、四本目あたり、チョット不安になったろ? 

慣らされ解され、アンタのそこは、まだキツイんだが意外とイケそう。 前を扱きつ、緩まりゃ慣らしつ、一際喘いで緩まるソコに半回転して窄めた指は、ミシリと肉を裂き、ぬかるむ熱い滴りを潤滑剤として、決して細くない手首までどっぷりと捻じ込まれて嵌る。 弓形の背に、どえらい締め付けがキタ。

オイオイ、俺の手、ケツで折る気かよ? 

前をしごいて、ちっとは緩ませ、丁度手首の骨の辺りをジワジワ奴のイイ場所に進め、見つけたら其処でユルユルと擦る。 安心しろよ、滑りは抜群。 

なぁ、イイモンだろ? 言っちゃナンだが、スジ、イイんじゃねぇ? 
バックも初めて、フィストも初めて、しかも相手はてめぇの仕込みで、
なぁアンタ、ホント、ツイてるな。



     
#  12.

男の中は狭くて、熱くて、それでも受け取る快楽の欠片は在り、
拾い上げれば肉の悦びが軽々苦痛を凌駕する。 

所詮コイツは好きモノだ。 
この手のモンには、慣れんのも早い。

既に抜き刺し、吸い付く粘膜。 呻いてんのは苦痛だけじゃねぇだろ? もっと欲しいか? 忘我の歓喜に溺れ墜ちるのは、アンタだったか俺だったのか。 いよいよ仕上げだ、イカせてやろう。 在りし日の熱血御指導・鞭撻忘れやしねぇよ、感謝の気持ちだ、フィストでアンタをイカせてやるよ。

刺激をし続け蕩けそうなソコに、指の出っ張りを順繰りに合わせ、俺はゆっくり拳を作る。 そしてギュッと握りキュッと捻りグイと粘膜を広げた。 

どうだい、イイだろ?

白目の男に囁いてやるが、聞いちゃいねぇし、アッチの世界だ。 締め付けた指をコックから抜けば、男は放ってそのまま崩れる。収縮するケツ、タイミングを見て間抜けな音を立て右手を抜いた。 アハハ、凄いぜ、この腕は!

転がる男。 まだ息は荒い。 身支度をしたら、挨拶とするか。
俺は虚ろな男の耳朶に、甘ったるい声を吹き付け落とす。

・・・・・・ ソノセツハ、ドウモ --- コンナニリッパニシテクレテ! 

俺は笑いを堪えきれず、吹き出しながら部屋を後にする。
奇妙な浮遊感と、足元が崩れ落ちるような世界没落感。
変わりはしない。結局変わりはしない。異界を出れば、何時もの世界が在る。 羽虫が唸る、頭蓋を抱える。何時しか笑いは絶望となり、己の所在の無さに底の無い恐慌を来たす。 

アレは、俺だ、最後にあぁして、薄汚いまま、快楽に溺れ、腐るのは俺だ。 

--- あぁアレもそうだ、初めて便所で咥えさせられ、てめぇでイカされ、マッパで捨てられ、そんでも懲りない阿呆は俺だ。 そしてロクデナシの溜まり場、キチガイ野郎に拾われ、弄られ、監禁の薬漬けの散々にヤられて客まで取らされ、挙句売られて時に飼われて、 

---あぁ、そうだろうよ、そりゃァ間違いなく俺の、この俺の話だ。 

だからそうする他に無い。 俺はこうして、轍を踏み直す。

今度は違う、屠るのは俺だ、そう思いたい、そうでなくては 
--- でないと俺は腐ってしまう! 
炎天の直下、蕩けた匂い、アスファルトの黒、イカレた脳髄、もう泡吹きそうだ。

ウンザリだ、ウンザリ、ウンザリ、ウンザリ、ウンザリ、ウンザリ、やめろ、やめろ、もう、止めてくれ、止めてくれ、俺を、俺を、止めてくれ、俺を、誰か、誰か、止めてくれ、俺を、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、、誰か、誰か、誰か、誰か、誰か、




「・・・ 大丈夫ですか? ・・・」

頭上での声が耳鳴りを消し、路肩にしゃがみ込み脂汗を流していた自分に気付く。 
清潔そうなスッキリした手、差し出されて、後ろめたさの無い眼が俺を、心配そうに覗き込む。
濃紺のスーツ、白いシャツの糊の効いた袖口、脇に抱えたブリーフケース、産毛が光る耳朶とそこより列なるガッシリした項。 刈り込まれた短髪の、地肌に光る汗、

--- あぁ、スミマセン。 ちょっと眩んで ・・・・・・えぇ、この暑さでね、情けないけど、


まぁ、手始めに、
こいつをヤんのは、どんなだろうな。






      August 26, 2002





      * 確か、メールでぼやいたのです。
       バリバリのエロ『リアルゲイモード』フィストもあるぜ! をBBSで流してやりたいって。

       したら、ウチでやってイイヨって、えぇ、桜井様が御自身で仰ったのです。
        思いましたね、あぁ、この人を師と仰いでホモエロを精進しようって。 
        でも、恥ずかしいから偽名にしようって (=マラカス三郎。)