山田エロトピア
# 1.
モリサワ兄弟が、28個の稲荷寿司と、生ゴミ宜しく存在にビニール詰めされた精進揚げを持って訪ねて来たのは、小一時間程前の事であった。
『や、だからさ、法事が中止なんだよ。暑いじゃん。二人ばかし年寄り倒れてさ、どっちかってぇとソロソロ葬式かも知れねぇ』
モリサワ兄が、新聞紙にぶちまけた天婦羅を齧る。
『海老! 大当たりだね!』
御機嫌な兄。 二十歳過ぎても安い人生。
『葬式ったってよ、コレじゃ二件続けてじゃん。ヤダよ、暑いし、姉妹のよしみで纏めてどうよ』
モリサワ弟は掻揚げの葱を、
『イカじゃねぇのか? クソッ嵌められた!』
と、隅っこのチラシに吐き出した。
山田は稲荷の3つ目を手に、コイツラこのまま泊まるんかなぁ と 微妙な悩みを咀嚼した。
# 2.
『だ〜からよォ、稲荷は五目が王道、具無しの稲荷は俺認めねぇッ!』
モリサワ兄が、激しく主張。
『でも俺、椎茸、喰えないもの』
二十歳過ぎても偏食治らず、愚弟にスカサズ兄の鉄拳。 うめく弟に麦茶を勧め、勝ち誇る兄の勇姿を眺め、ふと思い出すのは中坊山田の14の夏。 その日は朝からザワメク向い、空家の前にトラック2台、門柱越しに眺める山田は突然現る少年にビビル。 小麦の肌に勝気な目、塩素焼けしたスポーツ狩りの同じ背丈の同じ顔が、立ちはだかって言い放つ。
『俺たち双子だ、トンキチ、カンタ!今日からお前がチンペイだ!!』
訳の分からぬ迫力に押され、うっかり肯く14の山田。
して、向こう4年中学・高校、シツコク仲良く三人一緒、
山田は『チンペイ』その名で通る。
# 3.
傲慢な兄、我が侭な弟、いずれにしても最強だった。
そして何が奴らの琴線に触れたか、二人は山田を気に入っていた。 少々歪んだ寵愛だった。 試練と称してパチりの特訓、駄菓子屋の前、未だに山田はヤナ汗をかく。 好きな婦女子は尽く批判、やれ不細工だヤリマンだのと、味見と称して喰われた事も、今となってもヤナ記憶。
そして最たるワーストメモリィ、夏の留守番15の8月、珍しくピンで訪れた兄、恋愛談義と女体のレクチャー、初心な山田はうろたえ捲くり、それ見て兄は言い放つ。
『てめぇ、抜くのもわかんねぇのか?』
そしておもむろ握られる息子、威張るだけある熟練テクで、リトル山田は敢え無く昇天。 天高く放つ、盛夏の茶の間。
暫しトリップ二十の山田。 弟の口に無理やり葱を捻じ込む兄、あの手で俺はイかされたのだと、天婦羅蓮根シャリリと噛んだ。
# 4.
『でよう、山田ぁ、あのブスどうした?』
失礼な事を弟が言う。美人ではない、其れは認める、しかしそれほどブスでもない。
『山田ぁ、お前、喰われちゃった?』
余計な事だ、良いからさっさと吸い物飲んどけ。 つと、身を乗り出して兄発言
『あの手の女は、やり手だからよ、出来ただの言ってもオロオロすんなよ、絶対やるぜ、あのテはな!』
何やら確信に満ち満ちてるいが、生憎山田はまだ童貞。 小ブスの彼女はやる気を出すが、どうにも山田は踏み出せない。 ソロソロなのか? やらねば駄目か? 悩む山田を圏外に置き、
『すっごいプレイ』 で兄弟激論。何をどうしてコレをアアして、よく分からないがそりゃ凄そうだ。 身振り手振りで弟ヒート、立て板に水で兄斯く語る。 傍観山田も本能所以か、詳細知らずも人体は不思議、リトル山田は出待ちの有り様、白熱している兄弟を背に、主の山田ははばかりへGO!
抜くは一時、洩らすは男の一生の恥じ。
# 5.
スッキリ山田を待ち受けたのは、企み笑いの不吉な兄弟。
『なぁなぁ、山田ぁ、抜いてきたんかぁ?』
口火を切るのは大抵弟。
『こいつの仕込みは、俺直伝よ!』
要らぬ事言う、大抵は兄。
『なんだよ兄ちゃん、ヤっちゃったのか?』
『やらねぇ、してねぇ、マス指導だけ。』
不穏な空気と不穏な会話。 山田はヤナ汗を額にジワリ。喰いかけのナスに伸ばした手だが、げんなり食欲は失せ、半端な箸先は宙に浮く。不毛な兄弟水掛は続き、当の山田は居たたまれない。ケリ付けるごとく、意気込む弟
『わかった!山田!俺にも任せろ!兄ちゃんなんかの百倍上手いぜ!』
わかっていなし、任せたくない。
『俺の右手は。マジカルハンド!』
右手をひらひら、キラキラお目目の弟笑う。 どうする山田? 第二のピンチ。咄嗟に口つく、山田の言い訳
『駄目!俺、今そこで抜いて来たばかり、もう今なんてナンニモ出そうに無いし!』
呆気にとられるモリサワ兄弟。
『じゃ、しょうがねぇな、またにしとくか』
やけにあっさりと引いた。
けども山田よ気を抜くな。 後でってのは、どのくらい先の事だろうな?
# 6.
♪〜チャチャチャチャッッちゃ〜ら〜ら〜ちゃぁらぁちゃっちゃッッ!!
『コノゴォロ可愛い女のコぉ!』
キューティーハニィの着メロが流れ、モリサワ兄がゴソゴソと捜す。
イイ気になって弟が大熱唱、すかさず受話器を抑えて兄の蹴りが決まる。
その身伏しても天婦羅離さず、天晴れ弟反撃トーク
『なんだよ、畜生!俺知ってるぜ!兄ちゃん、ズリネタ、シスター・ジルじゃん!』
腹筋割れてる女王が笑う、イタブラれているモリサワ兄を、チョト想像して、スッゴク後悔。 山田、さりげに会話を変えた。
『あ、あの俺、魔女っ子メグにドキドキしたな、スラッとしてたし胸とかあったし』
『バカヤロ、メグよりヤんならノンだろ?ノンは良いぜぇ、フェラとか多分絶品!』
スカサズ兄が口挟む。 やっぱり受話器は抑えているが、それ、絶対に聴こえてる。 モリサワ弟、何やら思案。 眉間に皺寄せ厳しい表情。そう、喋んなきゃぁ奴はかなりのイケメンだ。けどもソリャ無理、無理ってもんだ。 金魚にパクパクするなってな生理的な無理。その弟がようやく発言
『俺考えたら、一押しカルロス。1馬身差で、次点はハナガタ。』
-- カルロス、それって、ジョーの宿敵?
でもって、それってアンタのオナペ?
# 7.
『じゃァ、俺ちょろっと野暮用だから!』
モリサワ兄が席を立つ。 あぁホッとした、一人は減ったと安心するには早いぜ、山田。
『その海老、喰ったら殺すぞてめぇ!』
念を押して出掛ける兄。 それって戻るの? また来るって事?
やっぱりこの兄弟、今日も居座る気だと、哀しい山田はビールを啜る。
『ならば、俺らは二人っきりだな!』
そらキタ! カルロス・オナペの弟が宣言。
いやでも僕ってガッツが無いし、アニメで言ったらう〜ん、ノビタかな?
思わず動揺の手元が震え、ビールが零れる顎⇒首⇒胸⇒腹 -- うわッ、オイ、つめてぇ! -- 咄嗟にTシャツを捲くればイヤァン! ギラリと光る視線、欲望ハンター・モリサワ弟。
『さッすが童貞、ビーチクピンク! なぁコレ、チャンスだぜ、騙されてみろよ! 手とリ足取り、春日部のカーマス〜トラ・性の伝道師たるこの俺様が教えてやるから、なッ!!』
グググとニジリ寄って来る、やる気満々の弟。 あぁ逃げなけりゃと立ち上がろうにも -- やば、足痺れたッ!-- 行儀の良さが仇為す山田。
よろけて倒れて、弟ホールド。
嘘って言ってよ!いや嘘じゃねぇ。 我が侭言うけど勝手者だけど、嘘言わないのが取得の弟、
あぁじゃあ駄目じゃん、コレまでか?山田、
初抜きが兄で、筆おろし弟、兄弟揃ってシモ担当。
# 8.
『そんじゃ山田よ、イタダキマスだ!!』
ぞわっと首筋ペロリとされて、ひっくり返った声上げ抗議。
『チョト待て、待って! だって僕って好みじゃ無いでしょ?外人じゃないしパンチも弱いし、庶民の出だからスポーツカーも持ってないし、』
『心配ご無用!俺って遣る奴、好き嫌いとかねぇし!』
それは何だか失礼じゃないか? --いやソコじゃない、問題なのはテキパキ遣り手の弟が動き、不本意ながらも ああぁ〜〜ん! とあげた己の嬌声。
『ホイその調子! けど山田ァ、まぁだまだ序の口だぜ!』
いやもう、結構。コレで充分!払い除けたい山田だけれど、ヘニャッと脱力腰抜け状態、哀れ童貞は動けない。 既にTシャツなんてば頭上で丸まり、抜け切れない手が万歳で拘束されて、あぁァこりゃいつか見たAVみたいだ、そういやアレってモリサワ経由? 畜生、コレってこいつの趣味か?
てな事を暢気にしみじみする暇なんて無く、ビーチク摘まれ臍舐められて、悶えた拍子にグッバイ・パンツ。
『う〜む、カリ、竿、平均レベル。 いいぞッ!今後の努力で出世は決まる!』
厳しい表情批評家、弟。 どうでもイイから、ここらで止めて! 今となってはフィンガーテクで、抜くだけだったあの兄さえもが山田カテゴリでは善良に区分。 して衝撃は更に更に更に、その時あらぬトコロに湿った感触 -- ひゃァ! -- と山田、反射で弟にしがみ付いちゃったりしてもうもうもう、いよいよ絶体絶命のピンチ。
# 9.
『おサカリですかぁ!レレレのレ〜!! 畜生、抜け駆けすんじゃぁねぇぞ!!』
ヒーローもとい、兄登場。 助けに来るかと思いきや
『ひゃぁ暑かった!』
まずビール。
その間ケモノのの弟は持ち得る舌技を尽し、リトル山田を号泣させる。 そしてどうやら御疲れの兄は勝手に一風呂浴びる準備、この危機を余所に人ンちで汗流すらしいよ、ホラ、風呂場で水音が聞こえてる。
クソウッ!風呂入っている場合じゃねぇだろ?
オタクの弟さんってば、立派な犯罪者ですよッ!!
とは言うものの、昇天ニ回で朦朧の山田、
『ヨイショ』
と 弟に足を担がれ、何だかもうもう訳分からない。
その時乱入、風呂上りの兄。
『なぁコレ何だ? 風呂場で見つけた!』
なんか持ってて、イザ遣らんとする弟に聞く
『んだよ? アァ? ホチキスじゃねぇの? したらなんだよ今取り込み中、兄チャンどいて!』
などとかわす弟、遮る山田、ココで止めねばもう先は無い
『それ! ソレね、ピアス開けるやつ、こないだ彼女がうちンち来てやった!』
そう、ピアス開けたいコブスの彼女は「自分じゃ怖〜い」と山田に依頼。けども山田の震えが止まらず、結局自力で彼女はトライ。 結果OK。 サテもう片方と思った時に「無いじゃん」「も1個、ドコいった?」捜せど捜せど見つからなくッて。あぁなんだ、それ、風呂場にあったのか!
山田の疑問は解決したが、てめぇの危機は解決してねぇ。
# 10.
例えるなら白日の凶行、通り魔的犯行。
鼻歌まじりの御機嫌兄、疾風のようにおもむろに、もはや半ケツ臨戦GOの弟蹴飛ばし、ひらり山田の痩躯に跨る。
『キャァ〜〜〜〜〜ッ!!』
絶叫山田、瞳孔全開。 ねぇ、ナニ起こった?僕、ナニされた?
御機嫌兄は、遣るときゃ遣るぜ! 有言実行、俺様基準。
『やっぱよ、ピアスはビーチクに決まりなッ!!』
小さな山田の左ビーチクに、きらりと光る18金。 まじまじ眺める仕事人兄、仕上げにイタクご満足。 半ケツ弟もすっかり復活、怒りも忘れてただただ感嘆。
『すげぇよ兄ちゃん、センスが炸裂!! でかしたぞ山田ァッ! 今日からお前も俺のオナペ・コレクションに新規追加なッ!』
『ほぉ〜良かったなァ -- 山田、コンでもうお前、どッこに出しても恥ずかしくねぇぞッ! 野郎どもの股間は、セクシィなお前にもう釘付けッ!!』
感謝しろよと、兄貴が見下ろす。 既に釘付け、弟は視姦。
山田の視界で双子が笑う。
双子の前には、稲荷と天婦羅。
そして視界の最前列に、やたらとエロい己の身体。
・・・・・・ あぁ俺、きっと、俺見て抜ける
リトル山田も同意を示し、 マスター!ラジャー! と小さく揺れた。
そんな山田の夏は過ぎ行く、忌わしき日々と双子と共に。
コレにてドロン!!
** 山田エロトピア(完)
* 兄弟がイイらしい。そして双子は更にベタァらしい。幼馴染が加わればコレ最強らしい。
・・・・・・ と、えぬし様は言うが(言った気がするが)多分、それはコンナじゃないと思う。