犬の居ぬ間に
 

           #1. 大山源太郎の災難 〃 苦難 〃 受難


大山源太郎は現在父親のやっている犬の学校を手伝って、犬の訓練士をしている。単調ではあるが充実した日々を送っていた。そんなある日、 ひょんな事から小学校時代の同級生、小柳忠介と再会する。その日を境に源太郎の災難は始まったのである。

忠介は小柄で女の様に優しげな風貌をしているが、案外と気が強く粘着質なため、同級生からは嫌煙されがちだった。そんな忠介をつい放っておけなくて、何かと手助けしてしうのが源太郎だった。

しかし、懐かしくはあるが再会するまで思い出しもしなかったのに、会ったとたんに半ば無理やり忠介に事件に首を突っ込まれされ、危ない目にもあい、あげく女にも振られた。散々である。

源太郎はそんな今までの出来事を走馬灯のように思い出して、だんだんと腹が立ってきた。源太郎の家の台所で楽しそうに昼食の用意をしている忠介を見て、一言文句を言ってやろうと口を開いた。

「おい、小柳」

「なぁに。もうすぐお昼出来るから待ってて。今日のメニューはクラブサンドとシーザーサラダだよ。このお皿そっちのテーブルに運んでくれる?」


源太郎の不穏な呼び掛けにも、どこ吹く風と受け流してさっさと支度をつづける忠介の方がうわてである。小さく舌打ちしながらも、お腹は減っているので仕方なく言われた事をする。

男二人、黙々と食事をしていると源太郎の母梅が出先から帰って来た。

二人を見るなり

「あら、忠介さんいらっしゃい。
           そうしているとあなた達まるで夫婦みたいね」


爆弾発言である。

忠介は嬉しそうにニコニコし、源太郎は苦虫を噛み潰したように嫌〜な顔をしている。 そんな日々が日常化しつつある。 源太郎は、だんだんと自分の周りに張り巡らされた包囲網がじわじわと狭まっていく危機感を恐怖をもって実感したのだった。





ー   第一話 了    ー





      *元ネタ本は、知る人ぞ・・・の佳作。 是非、勧めたい。 やるな、平岩さんよ。