「ナニソレ?」 「好きだろ?」 「キモ、」 「イモウトのだよ」 

アァ卒業ねと相槌を打てば、立てた膝の、その奥の、

    馬鹿じゃねぇの? 穿いてねぇの? 

心許無い空気の流れに薄気味悪い内股のオマエ。 
つまりそれが体育座り、そう、体育座りと云うカタチなのだと十数年振りに想い出すのだが、
だからなんだ、まるで使い道の無い記憶。 

   「どうするよ?」

    どうもこうもねぇよ。 

生ッ白い脛はさすがインドアを極めただけあって、そッから続く膝の皿も腿もケツも骨と筋と、
ささやかな括約筋と。 
しかしあれだ、「つまんねぇな」と煙草を吹かす上向き加減の晒した首、ビクリと上下する咽喉仏は
なかなかどうして見所あり。

ヒョイと立ち上がり様、肌蹴たカッターシャツの臍付近、突き出た腰骨に短めのソレは、
ファスナー全開の斜めに引っ掛かる。

見慣れた脛、見慣れた腹、見慣れた指は裾を摘み

   「お招きアリガトウ!」

    馬鹿野郎。

お嬢様の会釈とやらを披露。

――― と同時に弾け、腹を捩る腹立たしいイカレ笑い男が、逆光の窓枠に薄っぺらな背を預ける。
パカリと開いた膝、安っぽいチェック、微妙なギリギリで暗闇を作る罠。

   「なぁ、」

緩い笑顔が実に嵌るが、細めた目はこの場合「作為的」かつ「悪質」。
そしてコレも業なのか?

   「なぁ」 

風を孕む臍下30センチ、ヒダが重なるその向う、オレはフラフラ誘われた。




潜り込まれる前に捲り上げろ。
その息苦しい暗闇に、何があろうとオレは欲情するだろう。






      :: おわり ::



         百のお題  037 スカート