タカシはまだ、知らない。


「せんせ、ココ何ですか?」
「ダ、ダメ! モリ君そこはダメ!!」


『コ、コバッ!! お、オレはオレはそのォ、』
『ヤ、ヤメロよ、ンだよ、ヤンのかよ、え? エェッ? ヤルってヤルってオマエそれって、よしてッ! 助けてッッ!! だ〜れ〜か〜〜〜ッッ!!』


タカシはまだ、気付いていない。


「ま、イイかって事でせんせ、じゃ、わたしコッチ繋ぎますから、」
「も、モリ君ストップ!!ストップ!それじゃないッ、違う、それはッ、」


『んッ……ふ……ぁッ……やめッ、タ、タカシ……クッ……オレ、オレもう、』
『コバッ……いいか?オレも、お、オレも、 ?! 』
『え?』
『そぉ〜れッ! イクわよぉん! ヒィヒィ泣くがイイわッ、ホォ〜ッホホホホホッ!! どうよ? イイざまねッ! ホレッ!どうッ!! オホホホホホホ!!』
『いやあ〜〜〜ッ!!』


タカシは己の異変に全く、気付いてはいなかったのだ。


「モリ君ッ!!」
「ごめんなさぁい。」
「大切なサンプルなんだから慎重に、慎重にね?」
「はぁい。 あ、ね、このスウィッチ何ですか?」
「あぁあっ!!」


『ゴメン、コバごめん、俺どうしたんだろ、』
『うるせぇッ!』
『ゴメン、俺……俺、ホントにナンカどうして、』
『謝ンならスンなッ!』
『コバぁ〜……?!?』
『ぅ!?』
『あぁ、怒らないで、その瞳を怒りに染めないで、出来るなら瞼にくちづけをさせて欲しい、愛しいひなげしのキミ。 ほら、わたしを見て、わたしのこの両腕は怒れる野葡萄の蔦の如く、美しいキミを束縛したいと願って止まない。 あぁ、美しいキミ! 麗しいキミッ! 瞳は雄弁にキミへの愛と誓いを叫び、例えその思いの丈が強すぎて血の涙を流そうとも、その切望をわたしは決して諦めはしないだろうッ!!』
『諦めろッ!!』
『強がる唇は塞いでしまえッ!!』
『ンッ・・!!』


タカシはこうして人生を踏み外す。
まさか己の情動を第三者が操っているとも知らず、それが概ね出来の悪い助手のミスによるアクシデントだとは知らず。
タカシは自らに不信を抱きつつ人生を踏み外して行ったのだった。

ニューロンの馬鹿。






      :: おわり ::




    ニューロンはそんな働きしないとか、どうぞ言わないでください。 わかっております。
    わかっておりますので、詳しいレクチュアーメール(資料添付つき)とかは、あの、送って
    くださらなくて結構なんです、ハイ。



         百のお題  015 ニューロン (精神機能を営む構造体)