言い知れぬ不安がデリアの頭の中を占めていた。
最後の闘いを前にしているからだろうか?その目的のために『あの男』を仲間にした事の後悔だろうか?それとも……?
その時部屋の扉がノックされた。
「デリア殿おられますかな?」
ライアンの声がした瞬間デリアの顔が少しほころんだ。
「町へ出かけませんか?」
期待していた言葉と違うと、また、もうひとつの不安が頭の中をめぐった。
今夜は最後の戦いを前にして久しぶりの一人部屋で、二人きりになれるというのに。
「どこへゆくの?ガジノ?酒場?わたし今夜はあまり人の多いところには…」
部屋の扉を開けたデリアは、背の高いライアンを見上げて少し拗ねてみせた。
「いや、あの、そのようなことろではなく、ついてきてくだされば……」
なんとなく言葉を濁す彼を不思議に思いながらも、とりあえず出かける支度をして宿屋の部屋を出た。
無言のままひたすら歩きつづけるライアンにデリアはまた不安になった。
ライアンの腕にしがみつきたい衝動にかられたが、夜とはいえまだ人通りの多い町中で、そうする勇気がなかった。
だんだんと人の通りがまばらになり、かなり町の外れまで歩いてゆくと、やがて入り口付近にやたらと樹が多い館が立っているのが見えた。
そして樹の陰にあるその館の入り口に立つとライアンはデリアの肩にその大きく無骨な手をかけて、おもむろに口を開いた。
「本当はあなたをこのようなところへお連れするのは、あの……不本意なのですが……」
あまり口がうまいほうではないライアンが言葉を詰まらせながら、顔を真っ赤にしている。
そして、ごほんと咳払いをして、デリアの耳元でそっと囁いた。
「今宵は誰にも邪魔はされずに二人きりになれますぞ」
囁かれたその言葉にデリアは思わずライアンに抱ついた。
「今日……して…くれるの?」
ライアンは微笑みデリアの額にそっと接吻をした。
デリアはこの妖しげな館には多少不安もあったが、身体のほうは期待感で火照り始めていた。
館の中はかなり薄暗かった。薄明かりの中ライアンが館の人間に黙って金を見せると館の人間も黙ってうなずき、鍵をひとつライアンに渡した。
「こちらですよ」
ライアンはデリアの肩を抱いて館の廊下を歩き、そして1つの部屋へと入った。
部屋の中は広く清潔で、真中にとても大きな寝台が置かれている。
「気に入りましたかな」
肩を抱いたままライアンが問い掛けてくる。そして部屋の中にあるもう一つの扉へと導かれた。
「あっ?えっ?こんなに大きなお風呂まである……」
デリアが驚きで目をぱちくりさせていると、ライアンが唇を重ねてきた。
「そうですよ。ですから今宵は何もかも遠慮なく……」
ライアンはデリアの耳元で囁きながらピアスを外すと、軽く噛んだ。そして首筋に接吻をし、無骨な手で衣服をずらしてゆく。乳房の先端を軽く舌で刺激したあと、腰、臍、背中へと息遣いを少し荒くしながら、体中に唇を這わしてゆく。
そしてデリアの身につけているものをすべて取り去り、陰毛に接吻をする。
「…あっ…ん」
デリアは小さく喘いだ。自らの秘部へライアンの頭を抱き寄せようとしたが、ライアンはすっと体を離した。
「先に湯につかられてはいかがかな」
いつもなら、望めばそのまま愛撫を続けてくれるのに今日はなぜか少し様子が違うライアンにデリアは少し戸惑い、名残惜しそうに見上げていると、ライアンは明るい声でデリアに微笑みかけた。
「あせることはありませんぞ。今宵は周りに気を使い声をひそめるとことも、宿屋の人間に体を拭く湯を何度も頼むことも、必要ありませぬ。夜もまだはやい。今宵は朝までじっくりと…デリア殿を……ぁあごほん」
館に入る前とはうって変わって、少し興奮ぎみで饒舌になっていたライアンを見て、思わず笑顔がこぼれる。
「どうしたの?今日何だか少し………。うん。お湯つかってくるわ」
デリアはライアンの言葉に従い浴場へと向かった。
いつもの宿屋とは違った、ゆったりとした大きな浴槽は心地よかった。だがデリアは湯の中に浮かんでいるのも気持の良さより、先ほど愛撫された余韻のほうで身体が熱い。思わず自らの秘部へと手が伸びていた。
「ご一緒してよろしいかな?」
ふいに扉が開き彼が覗いた。
「あっ…きゃっ」
「おっ?何をなさっております?そのような事は今から私がじっくりと……」
自慰行為を見られたことと、すでに衣服をぬいでやってきた彼にデリアは小さな悲鳴をあげ、思わず顔をそらしてしまった。
「失礼いたしますぞ」
彼は微笑みながらデリアを後ろから抱きしめるようにと浴槽へと入ってきた。
そして乳房を両手で包むようにそっと愛撫しながら、唇を首筋へと這わす。やがて片方の手をデリアの秘部へと伸ばし、まず小さな突起をそっと指で弄んだ。そしてさらに花弁の入り口に浅く指を入れ刺激をする。
「さて、つづきはどうされるおつもりでしたかな?もっと深く入れましょうか?それとももう一本指を……」
「…あっ…はっあん…そんな…いや…」
本当は愛撫を続けて欲しいのに恥ずかしさで思わず否定の言葉が出てしまう。
「おお?やめますか?それではお背中でも流しましょう。さぁこの浴場は体を外で洗うようになっていますので、こちらへ…」
またあっさりと愛撫を中断されると、後ろから抱きかかえられたまま身体を立たされ、浴槽の外へと導かれた。そして、洗い場で彼は手に石鹸をつけ泡立てると、立たせたままのデリアの身体に擦りつけ始めた。
よく滑る石鹸の泡で全身を愛撫されるのは、少しくすぐったい感じがした。デリアは自分の身体を真剣に愛撫を続けるライアンに見とれた。鍛えられ、全身に均整のとれた強靭な筋肉。戦士として歴史を思わせる所々に残る傷跡。そして何より自分との違いである男性の象徴に。デリアはそれを早く奮い立たせたい衝動にかられた。
「どうなされました?」
愛撫にあまり反応しなくなったデリアにライアンは少し心配そうに問い掛けた。
「ねぇ。わたしにもやらせて」
デリアは泡だらけにされた身体でライアンに抱きついた。そして、手で石鹸をつけ背伸びをしながら自分と同じようにライアンの身体に泡を擦りつけてゆくと、次第にその男性の象徴が力を持ち始めた。
デリアはそれをうっとりと眺めながら顔を近づけ、先端を舌で舐めた。
「…うっ」
ライアンが恍惚の表情で呻くのを確認すると、デリアはためらうことなく陰茎にむしゃぶりついた。口の中で先端を舌で弄り吸い上げると、だんだんと堅くなり膨れ上がっていくのが感じられる。
「んくっ…いけません…それ以上は……あなたの口の中を汚してしまいます」
ライアンは慌ててデリアの頭を自分ものから離した。
「手で…もう少し…緩く願います…」
デリアはそれでも愛撫を要求するライアンを愛しく感じ、もっと悦ばせたいと思った。そしてライアンの腰のあたり抱きつき、天に向かって奮い立っている陰茎に身体を擦りつると、それは、ふと乳房の谷間を滑った。
「はあっあぁ…」
また恍惚の表情で呻くライアンを見て、デリアは思い出したように乳房で陰茎を挟み滑らしてみた。
「あぁ…おやめください……デリア殿…あなたがそんな事をなさっては……」
「ほんとにやめて欲しい?ねぇ…これをされると、すごく気持ちいいんでしょ?」
「……ええ…気持ちよすぎます…うっ…もうそれ以上されますと…ああ……もう少し愉しませてくださらぬか……それにまだデリア殿を…」
ライアンは息を荒げながらデリアの肩に手をかけ身体を離させる。
「さぁ…身体を拭いて……寝台へ参りましょう」
身体を洗い流し湯から上がると、お互いを愛撫しつつ濡れた体を拭い合った。デリアはライアンの大きな身体を全部拭ききってはいなかったが、ライアンはいきなりデリアを抱きかかえ寝台ほうへと運んだ。そして寝台の上に寝かせると全身を舐めるように見つめた。やがてデリアの手を取り接吻をすると、吐息混じりにつぶやいた。
「あぁ…やはりあなたは『伝説の勇者』だ。こんな美しく艶かしい身体なのに、剣の腕は既に私を超えておられる……。奇跡としかいいようがない……私はもうあなたに…あなただけを……」
デリアは黙ったままライアンの手を取り秘部へと導き愛撫を要求した。
ライアンは茂みの中の花弁へと指を滑らす。そこはすでに愛蜜で溢れていた。顔を近づけ花弁を指で開き、舌で中を弄りながら溢れ続ける蜜を吸うように愛撫を続けた。
デリアはもう待ちきれなくなり、ライアンに懇願ような声で求めた。
「あぁ……お願い…早く来て……欲しい…」
ライアンは足を開きかけて待つデリアの足を上げさせ、奮い立つ陰茎を愛蜜溢れる花弁の中へと一気に突いた。
「あっああん…すごい……うれしい…」
ずっと待たされていたところに欲しかったものが来た充実感でデリアの目から歓喜の涙がこぼれた。さらに快感を得ようと膣内を締め、腰を振る。
「うっ…はっぁ…おやめください……あまりそのように動かれますと、もう……あなたの中でいってしまいます……デリア殿は今宵あたり…それは……いけません…」
ライアンは受胎することに気を使ってくれたようだったが、デリアはむしろそうなっても構わないと思った。それよりもより今はすべてが欲しかった。そのままで達するときのあの感じを。迸る瞬間を。
「いいの…今日は中でして……」
「ぁあ…よろしいのですか……本当に……」
デリアは黙ってうなずき、ライアンの腰を押さえ少し引き抜かれかけていた陰茎を再び自らの中へと吸い寄せた。
「んんっ…ああん…もっと……もっと」
デリアが悦びの声を大きく上げると、ライアンも腰を激しく動かしデリアを攻めてゆく。お互いに最高の快楽を得ようと繋がれた中のものを締めあげ、擦り付ける。
「はっああ…デリア……もう…あっ……」
デリアは自分の膣内が快感でうごめくのを感じた瞬間、ライアンの熱い迸りが自らの中に注がれた感触を得た。
「ああっ…あたしも……」
ライアンは荒く息をつぎなからデリアの上に倒れこみ、強く抱きしめた。自らのものが力を失っても離れることなくデリア額に接吻をし、髪をなで愛撫を続けた。
デリアの心はそのつかの間の幸福感で満たされていった。
長い夜の間幾度も交わった後、ライアンはデリアの髪を撫でながら、そっと囁いた。
「デリア殿…。この闘いの旅が終り、もしお互いに生き延びれば、私と……。いや……今はお話しするのはやめておきます。最後の敵は心してかからなければなりませぬ。今は闘い抜く事を考えなければ……」
闘いと旅が終わった後のことを考えると、デリアはまた少し不安になった。本当に最後の敵を滅ぼし生き延びることができるのだろうか?世界中の人を救うことは出来るのだろうか?そしてライアンは『勇者』ではないただの自分を愛し続けそばにいてくれるのだろうか?いつかバトランド城で見たあの女性は?ライアンに確かめたいとこは沢山あったが、ライアンの腕の中、心地良い疲れで浅い眠りへと落ちていった。
館を出ると外はすっかり明るく太陽が真上に昇りかけているところだった。
デリアは歩き始めたライアンの腕にしがみついた。
「不覚でした。夜明け前に出発でしたな……大事な時だというのに、皆になんと言い訳したらいいものか」
「大丈夫よ。遅れた言い訳なんて、その時考えればいいと思うわ」
そう。すべてはその時がくれば考えればいい。旅が終わったあとのライアンとの事、そして『あの男』の事も。
最後の闘いが近づいている。まず、『勇者』としてそれを成し遂げなければならない。世界中の人の幸せのために、そして『勇者』ではない自分を知り、生きてゆくためにも。
昼近い街中は既に多くの人が行き交っていた。デリアはかまわずライアンの腕に寄り添続け仲間の待つ宿屋へと向かった。
−fin−
あとがき
時系列としては「jealousy -嫉妬-」より後になっていますが、こちらの方を先に書いています。
これを書いたときはPS版DQ4が発売され「会話システム」のおかげで、某巨大掲示板の某スレでライアン×女勇者話が一部で盛り上がっていました。またその巨大掲示板関連板のDQの官能小説スレも当時字書きさんが沢山いて、盛り上がっていました。そのノリで私より先にライアン×勇者ちゃんの小説を書いた方いらっしゃて、私はそれに刺激されこれを書き上げたました。
私にとって小説らしい小説を書いたのが、実はこれが初めてだったりします。初めて書くのに小説の原則などよくわからず、少し皆の興味を引こうと、発表時はライアンさんの名前を書かずに「彼」と書いてみたりしました。(今だに小説の原則はよくわかっていませんが)これを書くときは二次エロ小説でありがちな、「キャラを差し替えても通じる話」だけはしたくなかったので、二人の関係性や女勇者ちゃんの「今後」を考え、こんな話になりました。もちろんカプ萌えから、えっちする二人を書きたかったのが一番ですが。
ちなみこれを書いているときのライアンのイメージの一部分は「グラティエーター」のラッセル・クロウ。(役名のほうではなく俳優さん)勇者ちゃんはドラマ「嫉妬の香」のミノリ(こっちは女優さんのほうではない)だったりします。どちらもこれを書いていた当時に放送されていました。
2005年10月22日修正追加
といっても初出時にほぼ戻しただけです。今回追加した、「本番」シーンはサイト立ち上げ時は知らない人にはちょっ過激でマヌケかなと思ってカットしたのですが、サイトを立ち上げて2ヶ月ウチに来てくれるお客様は、少ないながらもちゃんと大人な方がほとんどだと判断いたしましたので、追加しました。
ブラウザバックでお戻りください。
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