(4)
「……俺もう、お前に触れてはいけないと思った。でも、あの貴族の野郎とかバダットが、お前に触る所を見た時、なんか妙にムカついてよ」 部屋の扉を閉めると、立ったままクレオがミシェルを抱きしめながら熱く囁く。 「私もそうだった」と、ミシェルは言いかけたがその言葉は飲み込んだ。自分もかつて、兄に触れる女を憎いと思ったことさえある。 クレオが同じような感情を持っていることをミシェルは妙に嬉しく思った。だが今はそんな事は告げずにいようと思い、自分の寝間着の襟を開けているクレオを艶然と見つめていた。 「今は、面倒くせぇものがなくて、いいな……」 襟を肌蹴け、肩をそっと落とされた寝間着が、ミシェルの体を伝って、するりと床に落ちた。 生まれたままの姿になったミシェルの桜色をした乳輪と唇にクレオは軽く接吻をする。 「あっ……」 小さく呻いたミシェルをクレオは抱きかかえた。 いとも簡単に軽々と抱き上げられた。とミシェルが途惑う間に、クレオはミシェルの身体をベッドへと運び、そっと横たえる。 クレオはそのままミシェルのその豊かな乳房の片方にむしゃぶりつき、片方を掌で包んだ。 「……あっ……ん」 クレオの掌は熱く心地よく、同時に舌で転がされている乳首が敏感になる。下半身も熱くなってゆくのを感じたミシェルは身体を捩った。 「嬉しいぜ」 「……え?」 「ちゃんと感じていてくれているようでよ」 ミシェルから一旦身体を離したクレオは、自分の着ているものを手早く脱ぎ捨てると、覆い被さりながらミシェルの花弁の中の蜜壷に指を入れた。 「すげぇ。もうこんなになってんのか」 僅かに愛撫したつもりだったのに、もう蜜が溢れ返っているミシェルの花弁に触れたクレオは思わず昂ぶる。 「クレオ……」 ミシェルが掠れた声で懇願するようにクレオの瞳を覗き込む。 「……俺もガマンできねぇ。いくぞ」 クレオの肉茎がゆっくりとミシェルの花弁の中を探る。それはやがて吸い込まれるように、蜜壷の中に収まった。 クレオがごくりと生唾を飲み込む。 「ああっ!やっぱりスゲェ。……もう痛くねぇよな?」 「……ああ」 「だろうな。こんなに入りやすくなっている」 「それは、あのときお前が何度も……」 あの日の夜。クレオはミシェルを何度も求めてきた。ミシェルは身体に苦痛を感じながらも、クレオから求められることが嬉しくて受け入れた。これが男の肉欲なのだろうと、思いながら。 「お前を抱けるのは、あの時だけだと思ったからさ……」 クレオの肉茎がゆっくりとミシェルの蜜壷の中を突く。突かれると同時に敏感な花芯も擦れる。 「あ……ぁん」 その刺激を受けて、ミシェルが小さく声を漏らすと、クレオが息を荒くしなから、蜜壷を突き上げる。刺激で益々溢れ出す蜜。 クレオが動くたびに二人の繋がった部分から淫靡な水音が聞こえる。 「なんでこんなに、濡れやすくなってんだよ……」 「……最近、お前のこと……考えると……こうなる。だから…自分で……」 ミシェルは自らの秘め事を思わず口走る。 「嬉しいぜ……そんなに俺に……」 ミシェルの告白にクレオが昂ぶり、激しく突き上げ始めた。 「ああっ!すげぇ。お前の…………が俺に絡みついてくるぜ。ミシェル」 ミシェルもクレオに突かれる度に敏感な部分を刺激されると、同時に蜜壷の中が熱くなるのを感じた。最初の夜には得られなかった感覚に、ミシェルは途惑う。 「……クレオ。この間とは……違う」 クレオは何も言わず、ただ息を荒くしながら、ミシェルの蜜壷を突き続ける。その刺激は今まで以上に心地よく、突かれる度に声が出てしまう。 「あっ……んっ…ああ」 ミシェルは頭のなかが夢でも観ているように、ぼぉとなり、クレオと繋がっている部分から全身が溶けてしまいそうな感覚に襲われる。 「クレオ……クレオ……」 その感覚に酔いながらミシェルが掠れた高めの声で、クレオの名を繰り返し呼ぶ。 やがて、クレオは激しい動きを止め、荒く呼吸をしながらミシェルの腰を引き寄せ強く掻き抱いた。 その刹那、ミシェルは頭の中が真っ白になり何も考えられなくなった。 「おいミシェル……大丈夫か?」 ほんの一瞬だったのだろうか?それとも、ずいぶんと長い時間が過ぎたのだろうか?水の中をふわふわと浮いているような、夢のような感覚の中、ミシェルは自分を呼ぶクレオの声で、ふと我に返った。 「すまねぇ。こんなに早くイッちまって」 並んで横たわっていたクレオが、ミシェルを後ろから抱きすくめ、手を握り、耳元で囁く。 「お前もイッちまったようだな。気持ちよかったか?」 「あ……ああ 」 その言葉に答えるミシェルの声は上擦る。 クレオはそんなミシェルの様子を見て僅かに微笑むと、ミシェルの背中の刻印に接吻をする。 「そうやって、開放すればいい。……後は俺が必ず……」 「……え?」 「いや……要するによ。お前がヤリたかったら、もう一回……」 「そ……そんなこと、いちいち言えるか!」 ミシェルは思わず上半身を起こし耳まで真っ赤になりながら、クレオの顔を目掛けて枕をぶつけた。が、クレオはいとも簡単に手で遮り、枕を除けると微笑みながらミシェルを見つめる。そんなクレオを見てミシェルも思わず微笑み返し、仰向けで自分を見つめるクレオに接吻をした。 何かを言いかけたクレオの言葉の意味を、ミシェルは確かめようとしたが、何時の間にかはぐらかされてしまっていた。 だが、今はそんなことは気にならなかった。このじゃれ合っている時がとても大切に思えたから。 「ミシェル様、お早うございます。起きていらっしゃいますか」 シルアの声とノックの音にクレオは目を醒ました。 横で寝ているミシェルを揺すったが、ミシェルは一向に目を醒まそうとしない。 クレオは仕方がないと言わんばかりに、ため息つき、夕べ脱ぎ捨てた服の中から、ズボンを探し出し、慌てて足を突っ込んだ。 「あっ。クレオさん。お早うございます。ミシェル様、まだお目覚めになりませんか?」 「あっ……ああ」 上半身裸の姿のままで、ミシェルの部屋の扉を開けた自分に驚かないシルアに、クレオは面食らった。 「仕方ありませんわ……クレオさん、私の替わりにミシェル様にお茶を入れて下さいませんか」 「なんだって?」 シルアが運んできたワゴンの上にはお茶のポットと砂時計とティーカップに、バルドー特産ぶどうジャムとクロテッドクリームが添えられた、焼きたてのスコーン。ワゴンの下段にはお湯の入ったピッチャーと洗面器。カップとスコーン、洗面器。全てふたり分。 「お茶はミントとレモンバームです。すっきりとお目覚め出来ると思いますよ。この砂時計の砂が全部落ちたときが、飲み頃ですから」 そうながら砂時計をひっくり返すシルアをクレオは「何をいってんだ」と言わんばかりに、イラつきながら、ぼさぼさの頭を掻き上げる。 「それと……あの時計の針が重なる頃に、おじい様がミシェル様を迎えに参ります。それまでに、身支度も手伝って差し上げてくださいね」 シルアはそう言い切ると、満面の笑みでクレオを見上げた。 なんて、食えねぇ女だ。と、クレオが思う間もなく、シルアは「私はまだ仕事がありますから」とワゴンを部屋の中に押し込むと、一礼して立ち去った。 ミントとレモンバームそして、焼きたてのスコーンの香で、いや、その前のシルアの声でミシェルは目覚めていた。 だが、まだ寝たふりを続けていた。砂時計の砂が落ちた時、クレオは必ず自分を起こしてくれるはずだと信じていたから。 『自信持っていいと思うぜ……』 バダットの言葉がミシェルの耳にこだました。 ─fin─ あとがき 第二 夜。フェロモン全開、周り「何か」あったなと、気づかれている二人。 ※ブラウザバックでお戻りください |