男物 〜白哉
新月の夜、はいつもの様に月の光に邪魔されず瞬く星々を見上げていた。
その肩には、着古した羽織が包む様に羽織られている。
「今夜も、星が綺麗 ・・・・」
ポツリと零れた時、言葉と共に戸を叩く風の音が静寂を揺らす。
愛してはいけない人を愛した。
男にしては美しすぎるその人は、本当なら会うことさえも叶わぬ人。
四大貴族正一位にして、第二十八代目当主、そして、六番隊隊長 朽木白哉。
それほどの男に愛されたのだ。
決して後悔はしていない。
新月の夜初めて結ばれた。
「・・・・ 私は、この世で一番の幸せ者です」
腕の中で呟くをしっかりと抱きしめた。
「私もだ。 お前と出会えて、生まれてきた意味を知った」
「白哉さま・・・・・ 」
「愛しているよ、。 決して離しはしない」
触れ合う素肌が、互いの想いを教え合う。
再び重ねられた唇は、言葉よりも饒舌に愛を伝えた。
銀の糸がすっと流れ落ちた時には、潤んだ瞳の想い人を組み敷き夢の中へと誘う。
普段の冷静さと表裏をなす情熱は、を壊してしまわないかと心配で。
それでも、求めずにはいられない。
「愛している・・・・ ・・・・ 」
何回呟やいたのか解らない言葉を、やはり繰り返してしまう。
どれだけ華を散らしても翳むことのない肌は、ほんのりと紅を射して白哉を誘う。
胸に埋もれた黒髪を指に絡め、官能の波に身を任せる。
左右交互に丁寧に愛撫されるたびしなう体が、もっと、とせがんでいるようで。
「あっ?! ・・・・ だっ、だめ ・・・そんなこと ・・・・・ぁぁ ・・・・」
「もっと、私に乱れるお前が見たい ・・・・・ 聞かせてくれ ・・・ 」
掴んだ両足をゆっくり開くと、そのつけ根へと顔を沈めた。
全てを見られた恥ずかしさを感じる暇さえ与えず、
緩やかに動き出した舌は蜜をすくい取り、白哉の口内へと運ぶ。
ジュルっと唇が吸いついてさらに中の蜜を求める。
かき出す様に舌が差し込まれた時、大きくしなった体から甘い啼き声が零れた。
「ぁぁ ・・・・ もう ・・・・ ゆるし ・・ て ・・・ 」
恥ずかしさと快感に真っ赤に染まった頬と潤んだ瞳。
征服欲という名の劣情がゆらりと燃える。
「嫌では ・・・ ないだろう? ・・・・・」
指を差し込む水音とともに囁くような言葉。
慈しむよな瞳で包みふっと笑顔を浮かべる。
「あん ・・・・ びゃく やさま ・・・・」
決して確信犯ではないのだろうが、抗いをすべてふさがれ小さく頷く。
少し深めのくちづけに、舌をゆるりと絡められ名残りの糸を伸ばした後、唇は再び華芯へと。
指の刺激が加わっての中はますます熱い。
寸前の処で舌へと刺激を移されて、焦がれる華芯はまた一からの愛撫を受ける。
もっともっととねだる様に溢れる蜜を、ピチャピチャと音を響かせ舐めとり始める。
もどかしい刺激に堪えかね、涙ながらに懇願すれば。
「おっ ・・・・ おねがい ・・・・ もう ・・?! ひゃっ ・・・・」
紅く熟れた芽を摘み取るように含まれて、揺れ始めた腰がもう止らない。
「 何を望む? ・・・・・・」
とても意地悪な言葉なのに、その瞳は少しだけ不安げで。
こんなにも欲しているのだと、伝えずにはいられない。
「あ ・・・ 熱いの ・・・ どうにかなりそうで ・・・」
「私もだ ・・・・・」
頬を撫でる指が、とても優しい。
潤む瞳に白哉を映し、頬を染めた。
「 どうか ・・・・ お鎮め下さい ・・・・ 白哉さまのお力で ・・・・」
「ああ ・・・ 鎮めてはやれぬが ・・・・・・ ともに溶けてしまおう ・・・・」
「 はい ・・・・・・・・・・・・ はぅ ぁぁ びゃく ・・・・ や さま ・・・・」
「 愛している ・・・・・ 愛しているよ 。 私の妻は、お前だけだ ・・・・・・・」
熱い猛りをその細身で受けながら縋りついた白哉の躯も、別人の様に熱く火照っていた。
緩やかな律動は、次第に規則的に速度を増し、滴る汗がの白い肌へと落ち始める。
やがて、白哉の言葉通り、熱く熱く溶け合っていった。
情事の余韻が白哉の動きを緩慢にさせる。
戸口で見送るに、名残惜しそうに再度問うた。
「本当に、そんな物でよいのか?」
しっかりとの胸に抱きしめられているのは、着てきた羽織。
今夜の記念にと、の初めての我侭だった。
「はい。 すみません、でも・・・・・・」
「いや、責めているのではない。 もっと他にと思っただけだ」
ふっと自嘲気味な笑みを浮かべ、をしっかりと抱きしめた。
「私は、何を焦っているのだろう ・・・・・・。 もうすぐ、全て私のモノになるというのに」
「白哉様 ・・・・。愛しています ・・・・ 世界の何よりも ・・・・・・」
「ああ、私もだ。 ・・・・・ 決して離しはしない」
今までで一番の笑顔を浮かべ、想い人を見送った。
最後は、滲んだ涙で見えなくなった。
身分違いの妻を迎える事が、正一位の貴族にとってどれだけ大変な事なのか。
世間や、周りの者達がイヤと言うほど教えていた。
愛しているだけで良いと、ずっと言い聞かせてきた。
白哉も自分を愛してくれている。
たとえ日のあたる場所へ出られずとも、それだけで十分だと。
しかし、愛とは我侭で。
他の女性を抱く白哉の傍に居ることなど到底無理で....
妻と望まれ白哉に迷惑をかける事も、
妾となって堪える事も、
どちらも選べない位、愛し過ぎてしまったから
苦しむ姿を見たくなくて
苦しむ姿を見られたくなくて
でも
愛し合った事は決して偽りではなかったと
風の音に微かに混じる叩音に、気がついたのは少し後。
夜更けまでには間があるから、きっと隣のおばあさんが、
いつもの様に夕飯のおすそ分けでも持ってきてくれたのだろう。
気がつかなくてごめんなさいと、半分空けられ扉はそこで止り。
見上げた視線が重なった時、肩から羽織がゆっくりと滑り落ちた。
まるで、時間が緩やかに動きはじめたかのように。
2006/5/2
リク夢 大変お待たせしました。
回想シーンは裏でも良いと言って頂けたので、
少しぬるめに(笑。
なので、一応、裏なんです。
様、ありがとうございました。
どうかお受け取り下さいませ。
題提供 灯屋様