花びら  〜朽木白哉



「桜、好きでしょう?」

 背中に凭れて本を読んでいるから、唐突な言葉。
いつもの事だが、それだけでは思考が読めない。

「なぜそう思う?」
「大切な斬魄刀の名前にも使ってるし、それに・・・・うわっ」

 凭れていた背が崩れ、すっぽりと腕の中。
間近には、整いすぎた顔。
 一気に頬が熱くなる。

「嫌いではない」
「一番好きなのは、桔梗でしょ?」
「そう思うか?」
「うん。知ってるわよ、それくらい」
 
 じゃあ、桜は何番目?と、じっと大きな瞳が見つめる。

「三番目・・・というところか」

 う〜んと考え込む
ふっと浮かんだ笑顔に思考を止められる。

「解からぬか?」
「うん・・・・」

 考えられないから、答えは出ない。
曖昧な返事に、腕に力が篭った。

「?!! んふっ・・・・・」

 急に重ねられた唇に、目を閉じることさえ忘れてしまった。
視界に白哉の端整な顔。

 うっすらと伏せられた瞳に揺れる、男にしては長い睫毛。
その色香に、どきりとする。

 優しく唇をなぞると、ゆっくりと入り込んでくる。
その舌使いにうっとりと酔ううちに、割られた裾から太腿へと這わされる指。

 机へとを凭せ掛けると、ゆっくりと余韻を伸ばして唇を離す。

「はぁ・・・・ん・・・・」

 大きくつく吐息も、白哉に煽られ熱い。

「あん・・・・だめ・・・・・・」

 内腿へと廻った手に、力なく白哉を押す。

「いやか?」
「だって・・・・」

 見つめられ恥ずかしそうに目を伏せる。


 冷静で、繊細で、華麗な白哉。
それは、皆が知っている彼。

 大胆で、情熱的で、激しい彼。
それは、だけが知る白哉。

・・・・・」

 耳元で甘く響く声は、抵抗を容易く奪っていく。

 這わされた手に応えるように力が抜けた。
花弁にそっと触れた時。

「あはっ・・・嫌・・・・・やっぱり・・・・だめ・・・」
「この花は嘘つきだな」

 潤んだ其処は、クチュリと一本難なく飲み込む。

「それとも、こちらか?」

 ちゅっとわざと音を立てる。

・・・・・お前は、愛しい私の花だ」

 
 二人だけが知る、長く激しい夜が始まった。
白い肌に、いくつもの花びらを散らしながら。






2008/3/27