日に一回、研究員による実験適合生体のメンテナンスが行われる。 実験適合生体――ジェレミアはこの時間が大嫌いだった。 理由は単純で、たくさんの研究員の前で身体をいじられることへの生理的不快感のためだ。 ジェレミア・ゴットバルトの記憶も自我ももう残ってはいないが、かつて彼の持っていた誇り高きプライドが脳のどこかに残っていて、それゆえに不快感を覚えるのかもしれない。 しかし、背中のチューブで繋がれているためこの研究室の外へ出ることもままならぬジェレミアが、不快だからという理由でメンテナンスから逃れられるはずもなく――そもそも言葉による意思疎通が困難なので、「不快」という意思すら伝えることは難しい――、今日もその時間がやって来てしまった。 オワリヲネガウ 自分の前に立つその男の、見下すような笑いが鼻についた。 ジェレミアの前にずらりと並ぶ白衣を着た男たち。ジェレミアは、彼らの自分を見る目つきがひたすら嫌だった。 人として見られてなどいない。実験体だからといって大切に扱われるわけでもない。 彼ら研究員にとって、自分はただの玩具のようなものなのだ。 それを知っているからこそ、ジェレミアはこの嫌悪すべき時間が早く終わってしまうことを切に願っていた。 「さて、始めようか」 彼のその声は部屋中によく響く。 他の研究員たちが無言で頷いた。 彼らも口の端を吊り上げるようにして気味の悪い笑みを浮かべていた。 日々行われるメンテナンスは、基本的には、実験体に取り付けられている機械の取り外し点検と、筋肉などに麻痺がないか確認する作業の繰り返しだ。 しかし最近では、それはあくまで建前と化している。それらの作業が全くないというわけではないが、最近のメンテンナンス作業は、メンテナンスと称しただけの、実験体への性的ないたずらが大半だった。 むろん、バトレーやシュナイゼルにこのことがバレれば大変なことになる。研究員たちも馬鹿ではない。痕跡を残さないようにうまくやるのだ。研究室が、研究員とジェレミアのみが存在するだけの密室であるがゆえに、そしてジェレミアが言葉でその被害を訴えることができないがゆえに、日を重ねるごとにその行為はエスカレートしていく。 男はまず、むき出しになったジェレミアの右腕を乱暴に掴んだ。 ジェレミアが痛みに顔をしかめるのを見て満足げに笑い、彼はその腕の先にある骨ばった手に狙いを定めた。 「ひっ……」 唐突に与えられた刺激にジェレミアは思わず声を漏らす。 男がジェレミアの指を口内に含んだのだ。 男は指の一本一本をゆっくりと焦らすように舐めて蹂躙していく。 下唇を噛み眉間に皺を寄せ、ジェレミアは他人の舌の不快な感触に耐えていたが、その顔が徐々に上気していくのを男は見逃さなかった。 「指を舐められただけで感じているのか? 淫らだな、実験適合生体」 男が何を言っているのかはよくわからなかった。頭がぼーっとして、思考能力が低下していくのが自分でも手に取るようにわかる。 「い……あっ」 その言葉が精一杯の抵抗だった。 「嫌だ」 そう言ったつもりだったのに、相手はそうは受け取らなかったらしい。 ますます嗜虐的な笑みを浮かべて、彼はターゲットを手から胸の突起に移した。 右手から唇を離すときに、糸を引く唾液がいやらしかった。 次々と与えられる刺激に、いっそ意識を手放してしまいたいと思った。 しかしそんな気持ちにはお構いなしに、男は舌や手で、大胆に愛撫を加えていく。 思わずぎゅっと目を閉じると、頬に平手が飛んできた。 「目を閉じるなよ」 冷たい声だった。命令に逆らったら殺す――暗にそんな風に言われている気がした。 怖い――すべてが。 研究員たちの遠慮のない視線。容赦なく襲ってくる暴力。 そして、意識を侵食してゆく快楽。それに溺れていく自分。 切実に、心の底から、ジェレミアは「終わり」を願った。 自分が望むのが、研究員たちの行為の終わりなのか、それとも彼らの、あるいは自分の生の終わりなのか、自分でもはっきりとわからなかった。 もしかしたら、それはこの世界の終わりなのかもしれない―― そんな思考すら、意識の底に埋もれて見えなくなった。 もう、何も、考えられない……。 男の愛撫が自分のこわばった陰部に及んだ瞬間、ジェレミアは思考することを手放した。 そうすることで、少しでも楽になれたら……どんなに幸せだっただろう。 070710 微エロといいつつ前戯(にも及んでない)だけかよ!とがっかりした方がいると思います。すいません。 どうやら好きなキャラになるほどエロを書けない傾向があるらしいと気づきました… でも研究員×ジェレミアはすごくおいしいと思うので、また書くと思います。 ジェレミアを思いっきり鬼畜にいたぶってくれるのは、研究員もしくは純血派の中の過激派だけだと思ったり。 キューエルもシュナ様も愛ある鬼畜攻めだと思うので…。ディートハルトは鬼畜というより変態だし(笑) とりあえず、愛のない鬼畜も萌えるよねという話。です。 何かの漫画で読んで以来、手の指舐めに異様に萌えるようになってしまったので衝動的に入れてみました。完全に趣味に走ってます。 |