俺のすべてをお前にあげるよ。 だから、もっと、欲しがって。 Why do I love you 「なあ、ゾロ、勘弁して?」 「……ふざけんな」 眉間の皴を、常より深め、呻るように、ゾロは言う。 俺の控えめなお願いなんて、ゾロはばさりと斬り捨てる。尊大で傲慢。いかにも、ゾロらしい。背骨がぴりりと痺れてしまう。 「今日はまだやること残ってんだ」 「昨日もそう言ったよな?」 「そうだっけ」 にこりと笑ってとぼければ、今にも歯を剥きだし咬み付きそうな顔。ざけんな、ともう一度、ゾロは吐き捨てた。 ひどく剣呑なその表情さえいちいち愛しくてたまらない。そんな俺は、麗しのナミさんに言わせれば、まさに末期状態、だそうだ。 「床、硬くて痛えしさ」 「俺は気にしねえ」 ゾロがぴしゃりと言い放つ。反論などはなから聞く気はまるでない。 カンテラの灯り一つついた、深夜の埃っぽい格納庫は、俺とゾロだけの愛の城だ。 板張りの硬い床は、上にのっかった男の重みもあって、ほんとにけっこう痛いのだけど。 鼻歌を歌いながら野菜を洗っていたら、ぐい、とまさしく首根っこをつかまれた。 濡れた人参を手に持ったまま、あっという間に肩に担がれ、荷物みたいに放り込まれた。 どすん、と盛大な音がして、俺はしたたか腰を打った。 そこにふいうちでボディに重い一発。 思わずうずくまって呻いた俺を、さらに容赦なくゾロは引き倒し、馬乗りに跨って現在にいたる。あいかわらず粗暴きわまりない。 ぐるる、とのどを鳴らす音が聞こえそうなほど、ゾロはぎらぎら殺気立っている。 それでも俺の頬は今にも緩みそうなのだから、なるほど、これは末期なんだろう。 俺はこの凶暴なけだものに、すいぶん前からめろめろ、なのだ。 病は日に日に深まるばかり。 罪のないトナカイや無機物の刀にまで、ごうごうと嫉妬の炎をたぎらす始末。 「いやあ、お前がよくてもさ」 「てめえもう黙れ」 なだめるために開いた唇を、がぶり、と唇で塞がれた。厚みのある、やわらかい舌が、我が物顔で入ってくる。ゾロの唾液が流れ込んで、久しぶりのその味を、俺はしみじみと堪能した。 荒い息遣いを隠そうともせず、高く上げた腰を揺らがせ、ゾロが熱心に、俺の口を犯す。消化器であり、性器にもなるそこを、まんべんなく、念入りに。 発情しきったゾロからは熟れて腐りかけた果実みたいな匂いがしている。脳まで犯されてしまいそうな、野蛮で、たまらない匂い。俺はそれを深く吸い込んで、体中をゾロでいっぱいにする。 ゾロは俺の首筋に鼻先をくっつけて、匂いをくんくん嗅いだりがじがじ噛んだりしはじめた。まさに、野獣だ。 「なあ、何でそんなサカってんの」 声をかけたら、邪魔すんな、とばかり睨みつけられた。 気の弱い奴だったら射殺されそうな視線の強さだ。 「何日、経ったと思ってる」 濃く苛立ちが滲ませて、ゾロが言う。 「えーと、6日?」 「7日だ!」 ほんとは知ってるよ、忘れるわけがない。声には出さずに俺は思う。 あんときのゾロはほんとにやばいくらいえろかった。5日ぶりのセックスで、あられもなく乱れまくって、ぎゅうぎゅうと俺を締め付けて、最後は泣きながら失神したのだ。 思い出しておもわず顔がにやけた俺をみて何を思ったか、ゾロはさらに顔つきを険しくした。 「自分でしたのか」 「え?」 「てめえが7日もださねえで持つわけねえだろが」 「あー、まあ、ねえ」 もちろん、それはそうだ。ゾロを見ただけでくっと熱くなる正直者な俺のムスコだ。とうぜん毎日、ゾロをおかずに抜いていた。 その答えがひどくお気に召さなかったらしい。ゾロはおもむろに俺の髪をわしづかみにし、ぐい、と引っ張った。ごん、と音を立てて、頭突きをかます。ゾロは石頭だ。目の前に星が飛んだ。いてえ、と思わず叫ぶ。 「だすな」 「は?」 「俺の中以外に、だすんじゃねえ」 「……?」 「てめえはぜんぶ俺んだろうが。精液だって、俺んだ。尻じゃなきゃ口でもいい、俺の中だけに出せ」 ゾロは凶悪犯みたいな顔つきで、とんでもなく甘い言葉を吐いた。 なんということを言うのだろうこの男は。 俺はぼうぜんと、たぶん無自覚であろう、ゾロのその言葉を反芻する。 俺がぜんぶ、お前のものだって?精液さえも、お前のだって?ちくしょうちくしょう、この天然め!ああもう、そうだよ、めろめろだ。俺なんかぜんぶ、お前のなんだ。 感激のあまり、今にも泣きそうな自分を、それでも俺は懸命に抑える。 ゾロにあれを、あの言葉を言わせたいがためだけに、俺は懸命に、余裕のあるふりをする。 「そんなに、俺が欲しい?」 「……てめえは欲しくねえのか」 欲しいにきまってるじゃねえかこのばかばかばか。 喉元までせりあがったその言葉を、俺はぐっ、と飲み込んだ。 「質問に質問がえしはずりいぞ」 ずるい、という言葉に、俺の腹に腕をついたゾロは憮然とした顔だ。いたずらをしかられた子供みたいな、その無防備な表情に、やっぱり俺の胸はきゅんきゅんと痛んだ。 張り付いた薄いシャツに、尖った二つの突起が透けている。両手を伸ばし、てのひらでつぶす様にやさしく撫でれば、ゾロは腰にくる声をだしてのけぞった。 「なあ、俺が欲しい?」 「ハッ、ア、くそッ」 片手をシャツの中に滑り込ませ、なめらかでキメの細かい肌の感触を楽しむ。サカッているときのゾロの皮膚は、しっとりと水分を含んでいて、それはそれは手触りがいいのだった。もう片っぽの手を後ろからボトムにつっこむと、思ったとおりそこはもうほぐれている。 「自分で慣らしてきたんだ」 「るせッ、だ、まれ」 「すぐ、つっこんでもらえるように?」 柔らかく温かなそこに指を入れる。そのまま、動かさずにいると、焦れたゾロが腰を揺らしはじめた。 「今度、慣らすとこ見せてよ」 「も、はや、く」 「欲しいって、言って?ゾロ」 膜を張ってきらきらと光る、いつも遠くばかりを見つめる瞳には、いまだけは確かに俺が映っている。縋るように肩を掴む、いつも強さばかりを欲しがるごつい手は、確かに俺を激しく求めている。 なあゾロ、お前は知んねえだろう。たったそれだけのことで、俺は天にも昇るほど、幸せな気持ちになるんだぜ。 何百回すきだと言ったって、何千回あいしてると言ったって、単細胞なお前は、いつかきっと忘れてしまうだろ? だけどその身体に俺を刻んで、何度も何度も求めさせたら、野生の本能だけで生きてるお前は、きっと、俺を忘れないだろ? 余裕のあるふりなんかして、そんなことばっかりなんだよ、俺なんて。ほんともうお前のことばっかり、お前がどうしたらずっと俺のそばにいてくれるかなって、そんなことばっかり、俺は、考えているんだ。 前をくつろげ、ゆっくりと擦り付ければ、ゾロは箍が外れたみたいに、欲しい欲しい早くよこせと何度も口にした。 よこせも何も、俺はもうとっくの昔にぜんぶ、お前のもんなんだぜ。なあゾロだからさ、もっともっと、俺を、俺だけを、欲しがってくんないかなあ。 そんなことを考えつつ、天にも昇るほど幸せな気持ちで、俺は俺を求めるゾロの、とろけるような甘い声を聞いているのだ。 (08.09.25) 襲い受け、のっかり受けばんざい。そしてゾロがすきですきでたまらないサンジばんざい。 サンジの世界はゾロを中心に回っている。ゾロの世界は自分を中心に回っている。 そんなサンゾロ萌えでした。 |