SMテイストつよめ。ゾロが男娼です(サンジ以外の直接表現はなし)。尿道に異物挿入あり。
だめそうなひとは避けてください。
大丈夫!というかたのみ、スクロール。








SEAT







ドアを開け、店に入る。
カウンターの一番端、壁側のその席は、ゾロのためにいつも空けてある。
薄暗い店内には、客が他に一人いる。カクテルを出していたサンジが、ゾロに気づき顔を上げた。視線を、軽く交わしてから、黙ってスツールに腰掛けて、ゾロは、サンジを待つ。
ゾロが自分から何かを注文することは、まずない。酒の名など、聞いてもすぐ忘れてしまうし、その時々で、サンジが選んでくれるからだ。
ゾロの欲しいものが何であるか、サンジはとても、よく知っている。
おかえり、とサンジが言うので、ただいま、とゾロが返し、羽のようなキスを一つ。
グラスに注がれた今日の酒は、サンジの髪と似た色を、している。







店を開ける前に、そこで煙草を吸うのが、サンジの習慣だったらしい。ビルとビルのあいだの、薄暗く湿った、色んな匂いが立ち込める狭い通路で。男のものをしゃぶっているのを見られた、それが出会いだ。
口の中のねばつきををぺっと吐き出して、貰った金を確認していたら、ふいに声をかけられ驚いた。壁に寄りかかって、男が一人。気配が薄い。
「いくらもらったの?」
そのままの体勢で、気安く話しかけてくる。金の髪色だけは、はっきりとわかった。
「一万」
「それって、高いの、安いの?」
「かなり高い」
ゾロは、金を眺めながら答えた。千円札が十枚。万札でないあたりが、少し可笑しい。慌てて押しつけて行ったさっきの男は、こういうのははじめてなんだ、と言い訳のように言っていた。おそらく、相場がわからなかったのだろう。
「あっという間だったね。よっぽど、うまいのかな」
煙草を吸う、赤い光が、大きくなったり、小さくなったりしている。鼻に届く特有の香りが、まだ残る精液の生臭さをやわらげる気がした。
「さあな。あいつが早いだけじゃねえの」
ためしてみるか。ゾロは何気なく言ってみた。
「ありがてえけど、いまから店開けるしなあ」
のんびりと言いながら、吸いさしをポケットから出した灰皿に押しつける。裏口のドアを開けると、耳障りな音が響いた。光が、狭い路地に差し込み、男の姿が照らされる。
白いシャツ、細身の黒のベストと蝶ネクタイ、黒のボトム、それに革靴。すらりとした体によく似合っていた。
「バーテン?」
「うん、そう。この中でバーやってる」
サンジが名乗り、問われたので、ゾロ、と答えた。
ゾロ。サンジが繰り返す。いい名前だね。声は、低く、甘い。
「口ん中、アルコール消毒して行きな、ゾロ」
サンジは笑った。



カウンター席が8つ、ゾロは、一番奥の席に座った。
客はそう多くなかったが、途切れることはあまりない。立ち働くサンジを眺めつつ、勧められた強い酒を飲む。
褐色の液体の中に、サンジが削ったらしい、どこから見ても丸い氷が浮かんでいた。グラスに触れると、指の下で水滴が潰れて、筋になり流れる。
落とした照明、耳触りのいい音楽が、適度な音量で。こじんまりとして、品のいい店だ。これまでゾロが、縁のなかったたぐいの。
「おかわりは?」
いつのまにか目の前に来ていたサンジに、下から顔を覗き込まれる。ちょうど、客が途切れていた。やはり、気配が読めない。
サンジは人懐っこそうな笑みを浮かべ、テーブルに頬づえをついている。瞳が青いことに、ゾロは気がついた。触れたら氷よりも、冷たそうな、青。
「もらう」
「りょーかい。ところでお前、美人だね」
「そりゃどうも」
「ぐちゃぐちゃに泣かしてあげたい顔だよ」
言われたことない?
サンジが、にこにこと笑いながら訊く。
「ねえな」
「みんな見る目ないね」
はあ、と大げさにため息をつきながら、サンジが頭を振った。長めの前髪を残して、撫でつけられた髪が、わずかに乱れた。
「お前、変態なのか」
ゾロが言うと、ひでえなあ、と顔をしかめる。表情が豊かだ、接客業には向いているだろう。ただ眸だけが、冷えている。
「俺は愛情深いだけだよ」
サンジが言う。相手が望むことは、何でも叶えたくなるんだ。
「別に望んでねえ」
「そう?」
言いながら、グラスを下げる。氷はだいぶ溶けて、それでも丸い形状を保ったままでいる。わずかに残った、酒の色は薄くなり、コースターは濡れて、染みができている。視界に入る白い指が、独立した別の生き物のように、きれいだった。
カウンター越し、サンジが顔を近づけてくる。目は閉じなかった。
唇が触れ、濡れた舌が歯列を割り、ゾロの舌を誘い出す。少しずつ、口づけを深めながら、サンジの細い指先が、手の甲を這った。
指の間に指を差し入れ、ゆるゆると、こするように動かされる。息づかいが乱れてくる。絡め、吸い、夢中になった。
ふいに、サンジの唇と手が離れた。
唾液がつう、と糸を引く。
「いらっしゃいませ」
何事もなかったような笑顔を作って、サンジが入ってきた客に声をかけた。
いつのまにか下着が濡れていた。



だいたいは男に金をもらった後、サンジの店に行く。アルコール消毒、だ。
ゾロの席は、いつも同じ場所だった。ときには中に男の残骸を残したまま、何杯か、その日の金が尽きるまで飲む。合間にカウンター越し、会話と、キスを。
サンジが作ったという、ちょっとした食べ物をつまむこともある。手は込んでいないようなのに、外で食べるどんなものよりも美味い、と感じる。
ものを食べるゾロを、サンジは、頬をゆるめて眺める。
「ケガして、腹空かせてる動物みたいだよな、お前」
ゾロに水を出してやりながら、サンジが言う。サンジの出すものは水だっておいしい。なにか入っているのか、カルキとは違う、柑橘系の香りがする。
「どういう意味だ」
「警戒心が強いのに、どっか無防備でさ」
食べ物で汚れた、ゾロの口元をサンジがおしぼりで拭いた。そのままにさせておく。サンジはこうして、ゾロの世話を焼きたがる。
キス以上は、まだない。危険を察知する能力には長けていた。頭の中で、警報が鳴っている。なのに、どうしてここに来てしまうのか、ゾロにもよくわからなかった。
まるで餌付けされた動物のようだ、と、自分でも思う。
「お前見てると、ぎゅって抱きしめた後、ひでえこと、してやりたくなるよ」
あ、逆でもいいけどね。
口元を笑みの形に整え、汚れを検分しながら、サンジは穏やかな口調で言った。



その日は、相手が金を出し渋った。
口論になって、逆上した男が首を絞めようとしたから、馬乗りになり顔面を殴りつけた。ゾロよりも一回り体格のいい男は、自分の鼻血に驚き気を失った。
財布から適当に金を抜き取り、服を着る。財布には、ペニスと同じように萎れた金が、数枚入っているだけだった。面倒だから、男はそのままにしておくことにして、血液のついたこぶしをごしごしとふとももに擦りつけ、街へ出た。
とっくに深夜を過ぎた通りには、何かの群れのように、たくさんの人間がいる。特に意識もせず、足は、サンジの店に向かっていた。
店はもうすぐ閉まる時間で、客はいなかった。サンジはグラスを磨いていて、ゾロを認め、うれしそうに目を細めた。いつもの席に座る。
「今日も仕事?」
ゾロが頷き、サンジがコースターをテーブルに置いた。サンジの、指先を眺める。作り物のように、形の整った爪がついている。短く切り揃えられたそれを、口に含んでみたいと思った。
じっと見ていると、指が動いて、消えた。頬が、しっとりと冷たい。
「血、ついてるぜ」
拭うように撫でられ、それがサンジの指であると気づいた。
「俺のじゃねえ」
「そうだろうね」
「サンジ」
呼んでから、けれど何を言いたいのかわからず、ゾロは黙った。サンジは指を、頬から顎まで滑らせたあと、テーブルに戻した。
人差し指の先端に、血がついている。サンジが知らない男の血液。さきほどまでゾロを抱いていた男の。暗めの照明の下では、墨で汚れたみたいに見える。
目線を上げると、サンジの眸がすぐ近くにあった。薄い青のなか、虹彩ばかりがくっきりと黒い。
「ゾロ」
ゾロの無骨な指に、汚れても美しい指が重なった。やはり、冷たい。冷たいのに、熱くなる。
ちゅ、ちゅ、と上唇と下唇を、軽く吸われる。それが合図のように、ゾロは舌を伸ばして、自分から絡めた。舌先を、互いにすりつけるように舐める。椅子から尻を浮かせ、体を伸ばして、口づけをねだった。
サンジは、ゾロの髪を触っている。その手を取って、指を口に入れ、しゃぶる。つるりとした感触の爪を舐め、煙草と血液の苦味を、のどを鳴らして味わった。
性器が窮屈な下着を押しあげる。警報は、激しくなるばかりだったが、あえて無視することにした。たぶんこれは、避けられない種類の危険だろう。逃げ回るのは、趣味じゃない。
「こっち、来る?」
指を、ゾロの好きにさせたまま、子供にするように、サンジが首を傾げて尋ねる。
カウンターの向こう側は、サンジの領域だ。



据え付けの小さなシンク、そこに寄りかかる様に立っている、サンジの前にしゃがみこんだ。ボトムの上から、その形を確かめるように撫で、布越しに一度軽く食んでから、ジッパーを下ろした。兆しかけたものを口に含む。
男のペニスを銜えるのが、ゾロの仕事だ。口での奉仕を、気持ちいいと思ったことなどない。けれどいま、ゾロのものは硬く張り詰め、服を湿らせ続けていた。
開放しようと、そこに手を伸ばす。
「ゾロ。手は後ろで組んで」
サンジがゾロの耳の後ろを、優しく撫でながら言う。動物をかわいがるような仕草、口調は柔らかい。だが、これが命令であることが、ゾロにはわかる。不思議と逆らえなかった。体も、頭も、甘く痺れている。
言われたとおりに、膝立ちで、腕を後ろに回し、組む。ゾロの頭を両手で固定し、口腔を犯すように、サンジが腰を使いだした。
敏感な粘膜を、サンジがペニスを使って、愛撫する。上顎のくぼみを、膨れた先端がこする。唾液が口の端から溢れ、床に零れた。
ゾロの鼻から、くぐもった声が、ひっきりなしに漏れる。奥の方まで衝かれ、えづきそうになり、涙と鼻水が流れた。
「いい顔」
硬い革靴のつま先で、サンジがゾロの、いまにも漏らしそうなジッパーの上を、ゆっくりとなぞった。腰が揺れる。夢中で、舌を使う。
「足でいじられるの、気持ちいい?」
急激に羞恥が湧きあがり、ゾロは、首をわずかに横に振った。
ほんと?囁くように訊くと、サンジが踵で、股間を強く踏みにじった。
「ん、んんーっ!」
衝撃に全身が緊張し、けれど、ゾロのものは、服の中で何度も弾けた。体ががくがくとぶれ、それに構わず、サンジが動きを早める。
口内に出されたものを、ゾロはぜんぶ飲み込んだ。粘度のある液体がのどを這い、ゾロを満たす。は、と小さく、サンジが息を吐く。
ゾロの口元の汚れを指で拭い、サンジは、襟元にしていた蝶ネクタイをはずした。黒い布の両端を、右手と左手に、それぞれ握らせる。
「下に落とせば、やめるよ。それがルール」
言うと、ゾロを立たせ、ぐちゃぐちゃになったボトムを、下着ごと脱がせた。べたつく粘液が、糸を引くのがわかり、それをサンジがあのきれいな冷えた目で、観察するように見ているのがわかり、顔が熱くなる。達したばかりのものが、サンジの目の前で、また頭をもたげる。
店に来る前の行為ですでに綻んでいる、穴の周りを探るように撫でながら、サンジが乳首をいじる。指先が、器用に動いて、固くなった尖りを、弾くように、つまむように、執拗に愛撫する。
ときどき、きゅっと抓るようにされ、そのたびにゾロは、手の中のネクタイを握りしめた。唇と舌で、後ろから耳を舐め、吸われる。絡みつくような唾液の水音と、意外なほどのサンジの息の熱さに、体にぞくりと震えが走って、頭がぼうっとしてくる。
サンジは入り口ばかりに、戯れのように、ゆるゆるとした刺激を送った。ときどき、襞を広げるようにし、すぐに離す。
「は、やく、」
欲しくて、たまらなかった。アナルがひくついているのが、自分でもわかる。熱いもので、サンジで、満たして欲しい。
ふいにサンジが、そこに指を二本入れ、大きく広げる。それだけで、ゾロはまた果てた。精液がシンクに散り、とろりと流れていく。
「中には、出されてないみてえだな」
「ゴム、つ、かう、っ」
ああ、そうだよね。言いながら、深くいれたままの指で、音を立てて掻き回し始めた。ゾロの声は、すでに嗚咽のようになっている。
「俺のこと考えて、イッたりすんの?」
からかうような口調で、サンジが尋ねる。その通りだった。ここしばらくは毎回、氷色の瞳と、完璧な形の指と、響きのある甘い声を、想いながら、他の男に抱かれていた。
見透かされていたことがひどく恥かしい。答えることができずにいると、サンジが指をさらに増やし、じらしてくる。勝手に、尻が揺れた。ねだる動きだ、と、ぼんやり思った。
「あっ、ああ、も、イく、いれ、」
「さっき、出したばっかりだろ」
突き放すような言葉に、無意識に内壁を締めてしまい、涙が滲んだ。サンジが、目尻を優しく、ちゅう、と吸う。
「ここ、使ったことある?」
先走りをだらだらと流している、小さな穴を、指の腹で撫でた。ア、とゾロは叫んだ。ぴくりと震えたペニスは、根本を片手で握り込まれた。
「うあ、や、あ、あるわけ、ね」
「俺ね、けっこう嫉妬深いんだ。一つくらい、ゾロのはじめてをもらいてえな」
マドラーをそこに押し当て、ぬめりを広げるように、くるりと動かす。金属の冷たい感触が、敏感な部分を、刺激した。
サンジが指を添え、その穴を開く。濁りの混じった液体が、盛りあがって流れた。
丸い先端が、くぷり、と食い込む。
「い、いや、いやだ!やめ、ろ、」
「ルールを覚えてるか?言葉は、ときどき嘘をつくから」
 口で言ってもだめだよ、ゾロ。
そう言って、少しずつ、それを埋めていく。狭い管を無理に拡げられる、経験したことのない凶暴な感覚に、ゾロはのけぞり大きな声を上げた。
全身が、小刻みに痙攣する。中ほどまでゆっくりと進め、サンジが、動きを止めた。
「ほら、見てみな」
サンジの声に、いつのまにかきつく瞼を閉じていたゾロは、目を開けた。
異物を銜え込んだペニスは、固く、反り返ったままだった。全体が、じんじんと熱い。パニックが過ぎれば、そのあとに来るものは、痛みだけではなかった。それが、自分でも信じられない。
「ほんとはここにも、俺を挿れたいくらいなんだけどね」
サンジがごく小さく、マドラーを律動させはじめる。先端が、中から前立腺を刺激する。痛みを打ち消してしまうほどの、強い快感が、ひっきりなしに襲ってくる。出口を塞がれたそこが、呼吸するように、開閉を繰り返している。
自分の体の反応と、目に入る光景に、頭がおかしくなりそうだった。
手の中のネクタイは、汗で皺だらけになっている。それでも、離すことはできなかった。目隠しをされたほうが、手首でも拘束されたほうが、よほどましだった。頭では拒絶していても、体が悦んでいることを、まざまざと思い知らされる。
前を犯されたまま、後ろにサンジが入ってくる。待ち焦がれたそれを、ゾロは腰を突き出して迎え入れた。
サンジが突きあげるのに、合わせるように、体をくねらせる。ぐじゅぐじゅと、耳を塞ぎたくなるような、音がしている。すごいな、と、感心したような声がした。
「そんなに、イイ?」
「い、いいっ、あ、もっ、とッ」
「素直でかわいいね」
欲しいなら、いくらでもあげるよ。
射精が止められているのに、何度も達していた。波のように、寄せては返し、けして止むことがない。ときおり、高い波が唐突に襲う、体が、どろどろに溶けてしまいそうだ。
さらわれて、しまう。
「そのかわり、お前をぜんぶ俺にちょうだい?」
勢いよく、マドラーが引き抜かれる。涙と、唾液が溢れた。舌の根が震え、ペニスが痙攣する。
どこまでも深く沈むような、高く昇るような、不思議な感覚に、黒い布を握り締めたまま、ゾロは身をゆだねた。



性的嗜好に、分析や意味づけは無意味だし、無粋だろう。
本当に欲しいものを与えあい、すべてを晒して、愛しあえればそれでいい。
他になにがある? 

あの夜以来、ゾロが姿を見せない。
きゅっと音をさせて、白い布で、グラスを磨く。灯りにかざし、汚れが残っていないかどうかを調べる。一つずつ、時間をかけて、丁寧に。そこまで気にする客は少ないかもしれないけれど、これはサンジの性分だ。それに、何かを磨く行為は、考えごとを逸らすのに向いている。
サディストの自覚はあったが、強制や暴力は嫌いだった。相手が望まないなら、普通のセックスしかしない。包み込むような、穏やかなもの。だが、渇きはごまかしようがなかった。
ゾロに出会えたのは、奇跡に近い。本気で誰かを欲しいと思ったのはひさしぶりだ。ゾロの席は、ずっと空けている。
酒の残量をチェックし、掃除を始める。やはり、床を熱心に磨いていると、ドアの開く音がした。顔だけでそちらを向く。
ゾロが、なに食わぬ顔で入ってきて、いつもの席にすとんと座った。モップを手にしているサンジを見て、もう終いか、と言って、壁の時計を確認する。いつもの、ゾロだ。
「……ひさしぶり」
ようやく声を出すと、おう、と普通に答える。
「もう、来ないかと思った」
「なんでだ」
「なんでって」
ゾロは、不思議そうな顔をして、サンジをじっと見ている。
「ずっと来なかったじゃねえか」
あれから、一ヶ月近く経っている。悲観的になるには十分な長さだろう。
「あー、仕事やめんのに、ちょっと手間取ってな」
「やめたの?」
「だってお前、俺のぜんぶが欲しいんだろ?」
こともなげにゾロは言った。サンジは、モップをとりあえず壁に立てかけ、カウンターの向こうへ回る。
何か飲むか、と訊くと、水でいい、とゾロが答えた。冷たい水に、ライムを軽く搾って出す。その間、ゾロは黙って、サンジの手つきを眺めていた。一口飲んで、やっぱうめえ、と笑う。
くしゃくしゃと若草色の、意外に柔らかな髪を掻き回してやると、いつも眉間に刻まれている皺が、少し緩んだ。ゾロは体温が高いから、手から伝わる温みが、気持ちいい。
あんなことをしたから、怯んでしまったのかと思っていた。そろそろこちらから探しにいこうか、とも。それくらい、欲しかったのだ。
「あんがい、古風なんだな」
「古風なのはだめか」
ゾロが、サンジの手を取って、指を絡め、ぎゅっと強く握った。まっすぐに見あげてくる。
ああそんな、無防備な目をするものじゃない。
「そそられるね」
本心だ。


見つめあったまま、優しいキスをする。
このまま今日は穏やかに抱くのもいい。
もし望むのならば、どんなひどいことも。








                                        (09.12.14)





08年冬コミで発行されたエロアンソロ、「19歳未満おことわり!」に載せていただいたものの再録です。しばらくのあいだ、お知り合いのかたがたに、お酒つくるときにマドラー見ると思い出してしまう…とご迷惑をおかけした代物。
このサンジはうちで一番のサディストかもしれないな、と読み返して思いました。

追記:これを読んでなぜか感銘を受けたらしい渦炎氏がマドラー漫画を描いてピクシブに載せてます。