過去など捨ててくれ。 受身で居るのは『卑怯』なのだろうか? 囚われたまま動けないでいる自身に疑問は無かった。 紙上にも載らない関係で、光を浴びる事無く闇に葬られようとも。 与えられた環境で与えたれた事だけをするという事も。 全てを裡に閉ざし、このまま…消えて行こうとも…。 苦しむ事も、悲しむ事も、寂しさも。 ぶつけ方を他に知らなくて。 ソコしか知らなくて。 ソコしか無くて。 真っ白な場所を、塗り潰す。 何度も…何度も…何度も…何度も。 時を忘れて『心』を吐き出した。 『俺』は必要とされていない。 必要なのは、俺の『才能』。 『俺』を誰も見ない。 『俺』は誰も見ない―――…。 その時、光が、見えた。 暖かな光だった。 柔らかな光だった。 艶やかな光だった―――…。 君が言ってくれるなら、もう一度、この人生やり直してみようか。 君が言ってくれるなら、もう一度、この心開いてみようか。 ―――…だから、あんな男の事なんて早く忘れて…。 君には言って欲しい言葉がある。 ―――…そんな過去など捨ててくれ…と。 ただ一言…。 たった一言…。 ―――…お願いだから…啓太。 君の口から…その言葉、を…。 |