一目で恋をする。



男の癖に、やけに色白やなぁとか。
こいつ、関西弁かよとか。

そんな感情、瞬間忘れるくらいに。

一目。
たった一目で。


恋をした。




「なぁ、景ちゃんー。買ってあった卵知らへん?」
「昨日落として割れたから捨てた。」
「ぜ、全部割ったん!?」
「つーか、早く飯作れよ。スクランブルエッグな。」
「・・・正直、それイジメちゃう?」


「忍足。」
「なん?」
「行くぞ。」
「はいはい。」


「おい、早くコート入れ。」
「そない連れへん事言わんといてや。」
「てめぇはごちゃごちゃうるせぇんだよ。」
「それもこれも、景ちゃんが好きっちゅー・・・。」
「おい、長太郎。コート入れ。」
「ちょ・・、入るっちゅーねんっ!」


「遅ぇ。」
「景ちゃんが早すぎるんやって。」


「けーちゃーん、お風呂沸いたで。」
「ん、レポート終わってから。」
「そない真剣にやらんでもえぇやん、な?」
「ちょっ・・・どこ触って、っ・・・。」


「てめぇはどうしていっつもそうなんだよっ!」
「ちょ、ちょお話してただけやん・・・。」
「あーん?どうせ、道聞かれたとかだせぇ言い訳すんだろ!」
「ちゃうって!・・・Genius.の勧誘、とか?」
「・・・死ね。」


「景吾、もうえぇ?」
「てめ・・・、耳元でしゃべんじゃ、ねぇっ・・。」




”好きだ。””愛してる。”
なんて、まともに言った事など一度もないのに。


それを感じてしょうがない。


初めから、わかってた。
瞬間、感じたんだ。

恋だなんてそんな淡くて、綺麗で、純粋な感情なんかじゃないけれど。
それだけが恋じゃないと言えるのであれば。



4月、氷帝学園中等部入学、初めての部活見学。

一目。
たった一目で。


恋をした。




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