メイリンの代わりに新しいオペレーターの女性がミネルバに配属され艦長の命令で彼女の教育係みたいなものに任命された それは『大破したMSの代わりが来るまでの間少し休みなさい』という艦長の指示だけどにとっては今は逆にそれが嬉しかったりする 顔が見えるようにこっちを見て 「今日からミネルバに配属されたアビー・ウィンザーです」 「・エスカ・フローネです…そんなに畏まらないでくださいね」 明らかにアビーの方がより年上なのにきちんと敬礼をしようとするので即座に押しとどめ簡単な説明と艦内の案内をする為に二人でロビーを歩き始めた 肩先で切り揃えたクリーム色の髪とメイリンが着ていたのと同じ軍服をきっちりと着こなしている姿を見上げる形で二人は話を続けた 「…そういえばさんはシン・アスカとレイ・ザ・バレルとは同期ですよね」 「…でも、二人ともフェイスに任命されているから私より上の立場だよ」 最初ちょっと遠慮がちに質問を投げかける彼女に笑顔で答えると彼女は配属された当初から2人の事が気になっていたみたいでどんどん話を進めていく 「私ね、年下の男の子って大好きなんですよ! …シンも可愛いけどレイのクールな所も素敵だけど…う〜ん。どっちも捨てがたいな」 両手を祈るように組んで顔を綻ばせるアビーを見るとも何となく嬉しくて微笑む 何時しか話が弾み和気藹々の雰囲気で廊下を歩く達の目の前にレイの姿が見えた 一昨日の出来事を思い出すと一瞬だけ身体が震える 「―後で話がある…命令だ」 「―承知…しました」 手の平には汗が滲み心臓の音が嫌に木霊するが傍にいるアビーには聞こえていない 「やっぱり。彼って素敵ね!」 「…ええ…まぁ…」 はどう答えて良いのか判らずにただ曖昧に返事をする 「呼ばれているなら今すぐいきなさい。私はさんのおかげで大体判ったから」 アビーはに気を利かせて早く行ってあげなさいと笑顔で肩を叩いた そんな気遣いがには谷底に突き落とされるライオンの子供の様に感じているけれど達の様子に気づくものはまだ存在しない とぼとぼと廊下を歩き格納庫に居るレイに会いに向かう足は少し速度を落とし無駄だとは知りつつも下手な時間を稼ぐの視界が揺らぎ いきなり腕を捕まれ声を上げる暇もなく引き寄せられた 「“あれ”を返して欲しくないのか?」 レイの声が怖くて顔を見れずに下を向くの顎を無理矢理上げ自分の方に顔を向けさせるがの視線は震え続ける 「顔が見えるようにこっちを見ろ」 そういった瞬間、唇を塞がれ即座に抱きすくめられる は抵抗するのが怖くてなされるがまま舌を絡め合わす けれどその場所は普段人の出入りが少ないとはいえ誰かに見つからないとは限らない ましては関係者にこんな場面を見られたくない 気持ち良さより一刻も早く離れたい気持ちと焦りから微かに声が漏れる ― お願いっ…早く終わって!!…― 「…あれ…?」 ヴィーノが物影に気づき思わず足を止める 「どうしたヴィーノ――え!…」 格納庫に向かうヴィーノとヨウランは思わず隠れて覗き込む 「…レイとが…」 「―――キスしてる!?」 二人は只ならぬ雰囲気に気圧され思わず固まり呆然とその光景を見つめて互いに顔を見合わせ思わず顔を赤らめる ―あの二人って同期で知人同士じゃなかったんだ― 微かに聞こえる小声に意識がはっきりして目を開けると其処には立ち尽くしているヨウランとヴィーノが気まずそうにしていたのが見え即座に唇を離した 「…や…やぁ…その…」 「…い、今マッドに呼ばれちゃって…なぁ…ヴィーノ」 下手な言い訳を言い合う二人の顔を真っ青な顔で見つめると無表情で肩を抱き二人を見つめるレイ ―見られたくない相手にこんな所を見られるなんて!!― 逃げ出したくなるに追い討ちをかけるようにレイはうろたえる二人に聞こえないように更に突き落とす言葉を投げかける 「あの二人に見れられてばれないとは思ったか」 ショックで言葉を失うはレイによる計画的な策略より自分が陥れられたことに気づいた |