ある日、アビスが話してくれた。
「夢の中にね、君がいたんだよ?」
困ったような笑いを浮かべて
病気で苦しいのに
頑張って精一杯の声で。
「夢の中にね、ドゥームがいたの。僕に笑顔で・・・。ね」
「・・・アビス?」
「・・・・はぁ、ぁ。ドゥーム?ずっと、いてくれるよね?」
苦しそうな声で言ったアビスが痛々しくって
ぎゅっと手を握った。
冷たい手は俺の体温を奪って行くけど、
それでも放さない。
「いる!・・・いるからぁああ!!!ずっと、ずっといるから・・・!」
「あはは、泣き虫。嬉しいよ。僕・・・・ね?ドゥー・・・ム・・・・」
ふと、アビスが軽くなった。
見え上げれば気持ちよさそうな顔だった。
そして、握っていたアビスの手が・・・落ちた・・・。
そして、分かった。
アビスが何処かへ行ってしまった。
俺を残して。でも、アビスが生きた証は俺が持ってる。
アビスのピアノの音も覚えてる。哀しげな旋律・・・。楽しそうな旋律。
全部覚えてるから。ずっと、胸にしまって置くから・・・。
「・・・アビスは・・・幸せだった?」
「夢の中にね、君がいたんだよ?」
その言葉もずっと覚えてるから・・・。
もう、届かない言葉も、伝えられない気持ちも・・・
全部、しまって置く。
そして、また。会うときまで、しまって置くから・・・
END
攻略お題:「離れそうな心に10のお題」の「夢の中で君がいたんだよ」
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