部屋に行くとやはりが居て、無視して行こうとすると服の裾をつかまれる。「なんだよ」と言って振り向くと下を向いたままあいつは動かない。これ以上関わりたくないと心で思いつつもこのまま引きずっていく訳にも行かないので暫くそのままで居る。すると突然口を開いた。 「嫌、だ・・・」 何が、と聞くほど俺も落ちぶれちゃいない。だが此処で、はいそうですかと返せるわけも無く、かといって、を抱きしめてやる訳にもいかない。そんなことできる立場でない事はよく判っている。・・・・・・つもりだったが、何時の間にやら俺はコイツを腕の中に収めていた。 「・・・・っ」 それを引き金にか、涙を流し始める。それ拭ってやりたいがそんなことをすれば俺のストッパーが効かなくなる。唯でさえこの状況で緩んでいるのだから。暫くして、山崎の呼ぶ声が聞こえてきた。たくっ普段はミントンばっかしてるくせにこういう時だけ、まじめな奴だ。このままでいる訳に行かないのでゆっくりコイツから離れると、今度は手を握ってきた。 「さーん。あ、副長も居たんですね。お偉いさんが呼んでますよさん」 「・・・・・分かりました」 「じゃ、俺はこれで」 に握られた手は、山崎の方向から見えなかったらしく、ばれる事は無かった。(ばれてたらこんなのんきな会話は、しない)山崎が去った方向に暫く目を向けると、の方へ向く。 「じゃあ、な」 自分で驚くほど震えた声でそう呟くように言うと、無理やり手を解いて、外のほうへ向かった。 「っ――――」 何か言おうとしているようだったが、今の俺には聞きたくない言葉の様な気がしたのでわざと無視をする。外に出て、新鮮な空気をめいっぱい吸うと空を仰ぐ。今の状況には、似つかわしいほどの晴天で、普段ならすがすがしい気持ちになれるが、今は到底無理だった。 空の色 (願わくは、君の幸せを) |