一緒に居てあげる。




ザァーーー



降り注ぐ雨の中・・


水溜りに朱が拡がる・・


倒れる母であった身体は冷たい地面に投げ出されていた・・




「ひっぐ・・・ひっぐ・・・」




すすり泣く小さな弟・・


それを慰めてあげることなんて、俺には出来なくて・・


ただ、一緒に居てあげることしか出来なかった・・





「ごめん・・なさ・・い・・・・ごめ・・ん・・な・・さい・・」




何度も何度もそればかりを繰り返す弟・・


俺はそんな小さな弟に何もしてやれない・・


突然、母を失ってショックだったのは事実だ・・


でも、その現場にいて母の死を目の当たりにした弟はもっとショックだったと思う・・




「お兄ちゃん・・・兄・・ちゃん・・」




小さく今にも消えてしまいそうな声で俺の名を呼ぶ一護・・


俺は黙ってその小さな手を握り締め、俺の存在を一護に示した・・




「大丈夫・・一護・・・俺はここにいるから・・」

「兄・・ちゃ・・」




ギュッと抱きしめ、俺は自分の腕の中に小さな一護の身体を閉じ込める・・




「だれも・・・一護を責めてない・・一護は・・わるくないんだ・・」




そう優しく囁けば、一護は俺の胸に顔を埋め・・

火がついたように泣き声をあげる・・




「っ・・・うあぁぁあぁん・・・・ひぐっ・・うあぁぁああぁん・・」

「一護・・」




あの時何があったのか・・


俺は知らないけれど・・


一護は母さんを死んだのは自分のせいだと・・


何度も何度も泣きながら言っていた・・


その度に俺は一護を抱きしめ、声を殺して泣いた・・




「一護・・・俺は・・俺は絶対に一護を置いていったりしないから・・」




ずっと・・


ずっと・・


一護が大人になるその日まで・・


俺が一緒に居てあげるから・・


だから・・


泣かないで・・


一護・・






END




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