「あなたはいつも哀しい顔をしてるんだね」

「そんなことはないさ。現実は楽しくて楽しくて仕方ない。哀しい顔なんてできるわけがないじゃないか」

「嘘だね」

「嘘じゃない」

「嘘だよ」

「嘘だけどさ」

「誰も自分を助けてくれないって心の中で割り切ってる。他人なんて信用する価値もないって信じてる」

「だってそうじゃないか。結局は自分一人で全部しないといけない。自分がすべきことを他人になすりつける奴だっているんだ。そんな奴らを信じろっていうのが無理な話さ」

「でもそうじゃない人もいるでしょう?」

「俺は知らない」

「そう。それじゃ、あなたは現実が見えてないんだ」

「現実を見なくたって、生きていける」

「嘘だよ」

「嘘じゃない」

「嘘だね」

「嘘じゃない」

「嘘吐きは地獄の果てまで堕ちるべきだよ。更に言うなら、人殺しは生き地獄を全て味わってから死ぬべき。わたしはそう考えてる」

「お前の意見を通されても困る。お前だって嘘吐きじゃないか」

「違うよ」

「違わない」

「違うって」

「違わない」

「もしわたしがそうだとしたら、わたしはどうなるの?」

「地獄の果てまで堕ちて、生き地獄を味わいつくすべきだ」

「現実なんか見えてないあなたが言うの?」

「現実でさえも見えてないお前が言うんだからな」

「そうだね。わたしたちは似た者同士かな? だからこんなに嫌気がするんだね」

「同族嫌悪さ」

「きみは現実を見ていたい?」

「お前は現実を見たいのか?」

「そんなの、同じでしょう?」

「同感だな」



現実など見たくない




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