傍から見れば五十歩百歩




「はあ〜」


ほんっとため息が出るよ
君がいきなり言うからさ

「ライバルになろう」

だなんて


無理なんだよ。僕は、君のはるか下


「たいそうな悩みを抱えているね?」


そういいながら僕の心に入ろうとする
僕の心に入れるのは君だけ
それ以外の何者も僕の心に入れはしない


「からかってるんじゃないから」


あなたはそういうけど、僕にはそう見える


「来月のテスト気にしてるんでしょ?」


君といい
あなたといい
なぜ僕の心を読んでしまうんだ?


「みんな、そうだろ!」


僕の声じゃないみたいな大きな声
でも、よく考えればわかる
みんな来月のテストでピリピリしている

僕も、君も
一応、ライバルなんだから相手を抜かそうと思ってるのかもしれない

君とだけは張り合いたくなかった
自分がどんなに何もできないかがわかってしまうから


「レディーに八つ当たりしないでくれない?」


あなたはテストのことなど、どうでもいいかもしれない
あなたは授業中どんなに寝てもしゃべっても気にも留めないし
教師に怒られると笑顔で

「バカだね。あんた達」

って言える人だから


「ごめん」


僕はとりあえず謝るよ。あなたの目が怖いから


「ジュンのことが気になるんでしょ?」


君の名前が出てドキッとしてる僕は放っておいて
あなたは話を続ける


「強すぎて勝てないと思ってるでしょ。月とスッポンだと」


何も話してないのに
あなたにそのことを知られたのにも悔しかった


「ポイッてすべてを投げ捨てて、ジュンのことなんか考えたくないんでしょ」


あなたの攻撃をまともにくらって、泣き出さないやつはいないって噂があったよね
なんで僕なんかに手加減するのさ
まだ言葉に優しさが残ってた


「百戦錬磨のあんたがジュンに負ける訳ないでしょ!」


意外な言葉だ
あなたから、こんなにも優しい言葉が出るとは
そして、言葉とは意外だ
こんなにも、下を向いていた僕をたった一文で上を向かせてしまうとは


「強さは互角。がんばんなさいよ」


「ありがとう」


といいたかったけど、のどの奥が熱くて言葉を発すると、涙がこぼれそうだった


「ポキッと折れてないでシャキッとしなさい!」














本当にありがとう





−END−




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