「何故俺達はテストと言う戦場で戦わなければいけないのだっ」




「何故俺達はテストと言う戦場で戦わなければいけないのだっ」
「学生だからだろ?」
「うっ」
 ぷるぷると震えて…ぺしゃっと突っ伏す。
「うう、悲惨……」
「嫌なら勉強しろよ」
 呆れたように返されても。
「勉強が嫌なんだ。いや、勉強が仮に好きだとして!」
 がばっと起き上がって放った叫びに、
「好きだとして?」
 と、鸚鵡返しで尋ねられる。
 恨めしそうに答案用紙を睨みつけて。
「なんでテストなんかするんだ!」
「事実を突きつけるためじゃないか?」
 それぞれのレベルのさ。
 再び、撃沈。
「うー、テストなんかなくなれ…」
 しくしくと泣きながら呟かれた言葉に、鬱憤晴らしに仕方なく付き合っていた少年は肩を竦めた。
「だったら、なくなるように頑張れよ」
「…どうやって?」
 そろ、と上げられた情けない顔を見て、提案者は溜息をついた。
 なんて情けないんだろう、こいつは。
「さて、この国の法を定めているのは、誰でしょう?」
「……政治家?」
「ま、そんなトコか。政治家になれば、テストをなくすっていう事はできるかもなぁ?」
「……………」
「ま、お前が政治家になる頃には、当然ながら俺達は学校という場所を離れているけど」
「……………」
「それ以外の法律に手出しは出来る、かも、なー?」
 ニヤリと笑って告げられる言葉。
「……それってつまりは、勉強しろって事なんじゃ……?」
 面白そうに眺めていた少年の顔が、更に愉しそうなものになる。
「誰が、馬鹿だって『最初からわかりきってる』奴についてくよ?俺達には政治のあれこれなんか関係ないからなー」
 やっぱそれなりのもんがないとな?
「つまり、勉強しろって事なんじゃないかよお」
「違うぞ?」
 不思議そうに見返してくる友人に、悲嘆にくれていた少年は目を瞬かせた。
「へ?」
「勉強しろってんじゃなくて、俺は諦めろって言ったんだよ」
 まあ、政治家になりたきゃなればいいさ。それでもテストからは逃げられないから、諦めろ?
 爽やかな笑顔とともに再度告げられた言葉に、三度目の、撃沈。
「変えたきゃ戦え。戦いたきゃ勉強しな」
「……ちーくーしょーっ!」
 微塵も揺らがない爽やかな笑顔が小憎らしい。
 とん、と机に乗せられた、手。
 友人のその手には、答案がもう一枚。
「それよりほれ、間違ったトコ直して再提出なんだろ?貸してやるからさっさと写せ」
 爽やかに笑う友人の答案は、憎らしい事に満点だった。
 こんちくしょう。

 いつか絶対、俺が貸してやる側になってやる。




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