尻尾を足先に絡めて懐く。



呼び出されて恋次は部屋から出て行ってしまった。

残ってしまったのは運の悪い事にと白哉。さてどうしたものかと思案をしつつ、は処理され終わっているのとされていない書類をまとめていった。

ユラユラと動く尻尾。それが無償に気になってしまった。

チラッとに視線をうつすと、明らかに大きすぎる死覇装が肩からすべり落ちそうになるのを必死で阻止しながら書類を分けていた。

一護は死覇装の上をきていなかった。兄のを借りたはいいが、やはり体格差がうまれ、今みたいになっているのだろう。

ここは執務室だからいいが、廊下になど出たら目の毒でしかない。





「・・・・

「・・・・・・・・・・・・・」


無言でなんだと聞いてくる。そこまで自分は嫌われているのかと思いながら、押入れを顎でさした。



「そこに着物が入っている。好きなものを着ろ」

「・・・・いや、後で四番隊からもらえる事になってるから遠慮する」


好意を踏みにじるようだが・・・と呟きながら、白哉に書類を渡してきた。そこには今日中に終わらせなければいけない物ばかり。後は恋次に任せればすぐに終わるような物なのだろう。それも自分に渡せばいいのにと思ったが、隊長と言う事と、やはり体の事を案じての事だろう。

嫌だと言ってくるかと思ったこの誘いも、は案外簡単に受託した。




こんなにたくさん仕事が溜まったのは自分達のせいでもあるし・・・・・。




そう苦笑をしながら。


「ならばその尻尾をなんとかしろ。そう動かれてはかえって気になる」

「・・・・・・・・・・え、揺れてるか?」


至って本人は気がついていなかった。自分の尻尾を目の前へと動かしながら、まるで世界の滅亡を見るような目でその尻尾を見つめる。


「・・・・・・・・十二番隊だけは近寄れねぇ」



まさにその通りだろう。

尻尾をいまだ見つめながら、こんどは徐にに白哉の方へと顔を向けた。既に書類に視線を向けていたので白哉は気にはしていなかったが、は恐る恐るという恐縮した気持ちで、僅かに距離を縮めた。




「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・なんのつもりだ?」


足先に絡まるような感触。それがの尻尾など、見なくても分かった。



「・・・・・・・・・・・・別に」



すぐに尻尾が離れ、また距離をとり、恋次が座っていた座布団の上へと座る。窓から外を見ながら、瞼がだんだんと下へと落ちて行く姿を眺めて見た。

ユラユラとまた揺れる尻尾は、此方を警戒している。いや、構って欲しいけどそれを我慢しているように見えた。

ルキアの事で自分と揉めた事を忘れると言うにはまだ日が浅い。、一護にとって白哉は倒さなければならない敵だった。

今はそうではないが、やはり居心地が悪いのだろう。たびたびルキアと共に見舞いに来た時も、今までの自分の所業を何度か口に出そうとしては謝ろうとしているのが見受けられた。

だが、結局はそれはなかった。ほぼ恋次と一護が邪魔をしたと言うのが原因と言えよう。



「・・・・・・・・・・・・・・・・」


ウトウトとし、ついには舟をこぎ始めた。そこの席は日当たりがいいので、たしかに眠くはなるだろう。

猫の本能が少し入っているらしいにとって、その席は絶好の穴場。



「・・・・・・・・・


声をかけても気付かない。本当に眠りに入ってしまったのか?





「ただいま戻りまし―――何寝てんだよお前?」

自分が座るはずの座布団にいるを一発で寝ていると見抜いた。頭を乱暴に掻きながら、どうしたらいいのだろうと廊下の所で固まる恋次に、白哉は視線を投げかけた。


「横にしてやれ」

「あ、はい」

自分の座布団から抱き上げ、隅の方へと寝かせてやった。隅といっても白哉の近くなので、へんな事をするなよと心の中で呟く。




「隊長、京楽隊長からの伝言で―――」



白哉へと向き直り、懐に入れておいた書類と京楽からの伝言を言おうとした。だが、の尻尾が白哉の足に絡まっているのを見て、頭を机に叩きつけ、逃げ出したくなった。

行き成りへんな事すんなよ。


「す、すんません!!」

「よい、それでなんだ?」

「え?あ、はい」



お咎めなしかよ。

なんかこう、無言の視線でせめて来ると思ったのに、何もしてこない白哉に不信感と言うか、この人本当に朽木白哉ですか?と、心の中で何度も何度もたずね

ながら、恋次はとりあえず報告を始めた。




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