かりかりかりっと縋り付いてくる。 は尸魂界に残った。残るしかないという苦汁の選択なのだが、とりあえずは恋次の所に居候するという事で収まっている。 「んじゃ、俺は仕事行って来るからな」 「・・・・・・・・・・・・・」 一護達を送り出し、一旦を部屋へと連れて帰り、蛇尾丸を腰にさして恋次はに一言言った。 自分を無言で見上げてくるの姿に、なぜか無償に罪悪感が募るが背を向けた。 「・・・・・・・・・・・・恋次ぃ」 恋次が部屋から遠のいて行く足音を聞きながら、まるで戻ってきてと言うようには名前を呟いた。 一護達が自分をおいて帰ってしまったという寂しさ。恋次がいなくなってしまった孤独感。 他の死神たちは皆、仕事をしている。だが、自分はやることがない。 恋次が帰ってくるまで、この部屋で1人きり。 そう思うと、自分だけがこの世界で何もする事が無い疎外感に、気分が落ち込んでいくのが分かる。 「・・・・・・・・・・」 六番隊に無事出勤を果たし、いつも通りに病み上がりであるのに普段と変わりの無い姿で仕事をする白哉の横で、恋次は自分が担当する書類へと向き直った。 旅禍進入と言う事でかなり面倒な仕事が舞い込んできている。何もやることなくさっさと帰ってしまった一護が、このとき少しムカついた。 「・・・・・・・猫は、気まぐれだが寂しがり屋だと言う・・・・」 「・・・は?」 急に何気なく呟いた白哉に、間抜けな面と声で返してしまった。 「は、猫耳と尻尾をつけていたな」 「はぁ・・・・」 朽木白哉に見られたから死ぬぅぅーーーーーーーーーーーーー!!!と数刻前叫んでいたを思い出す。そこまで自分の隊長に見られたのが屈辱だったのかと、 首を傾げたくなったが恋次は白哉の続きを聞くべく言葉を飲み込んだ。 「今頃、はこの世界に取り残された"孤独”を味わっているだろうな」 「ッ」 今更気付くなんて何て馬鹿なのだろうか? いくらあのでも、一護達がいなくなったことや、この世界では右も左もまだよくわからないだろうに。 あの訴えるような目は気のせいではなかったのだ。はあの部屋で寂しがっているだろう。 「た、隊長!を・・・・・・」 「書類伝達うんぬんの役には立つだろう。連れてこい」 「は、はい!」 もうめずらしいとしかいい用のない白哉の親切心に、土下座をする勢いで頭をさげ、すぐさま執務室を後にした。 廊下を急いで走る恋次の姿に、すれ違い様に色々な死神たちが振り返るが気にはしなかった。今はただ、すぐにに会いたいだけだから。 「!」 バンッ!と襖をあければ、が猫のように丸まって此方を見ていた。僅かに唸っているところを見ると、寂しがっていたのを誤魔化しているように見える。 苦笑をしながらの前へと胡坐をかいて座りこむ。華奢な手を恋次へとかざすように見せながら、少し伸びている爪をみせつけてきた。 今すぐ引っ掻くぞ。 そう言ってる様だ。 「隊長が書類の手伝いしろって、お前に」 「・・・・・・・・・」 「ほら、行くぞ」 に手を伸ばすと、手の甲を爪で引っ掻かれた。なんだコイツは?本格的に猫になってきたんじゃねえのか? かりかりと引っ掻いてくるの手を掴んでやると、掴んでいる恋次の手を自分の顔へと近づかせ、縋り付いて来た。ごつごつしている自分の手などに縋りついて、痛くないのかと心配になったが、幸せそうに頬を緩めたので何も言わなかった。 「」 「・・・・・ん」 起き上がらせろと目で訴えてくる。 猫は気まぐれで寂しがり屋だ。 白哉の言う通りだと恋次は思った。だが、は気まぐれではない。 ただ単に見栄を張っているだけにすぎず、ちゃんと甘えてくるのだ。脇に腕を伸ばし、抱き上げてやると首筋に顔を埋めて擦り寄ってくる。 本物の猫だと思いつつ、これはこれでいいなと思った。 |