嵐は突然やってきた。
「何してんだ、バカネコ?」
若々しい緑色の草が爽やかに風に揺れ、見上げれば一面の青い空。景色を遮断するものは何もなく、 自然が静かに己の雄大さを曝け出している。
まさかこんなに辺鄙で平和な場所で、こんなに怪しい 男に出会うことになるとは、思ってもみなかった。
「バ、バーダック!?お前、な、何してるんだ!」
疚しいことなど何一つしていなかったのに、何故かベジータは言葉をどもらせた。
「何焦ってんだ、お前。・・あ、そろそろケツが疼いてきたか?」
「黙れゲス」
「俺がゲスなら、ネコもゲスだろ。毎回アンアン鳴いてるの、忘れたのか?」
初夏の太陽はまぶしく、草原は相変わらず健やかだ。こんなに綺麗な場所で、俺はなんてくだらない会話を、 なんてくだらない相手としてるんだろう。自己反省に取りつかれたベジータは、もっとも簡単な解決策に出た。 招かれざる客は無視するのみ、だ。






ベジータは再び四つん這いになり、探索を続けた。まだ幼いとは言えベジータだって一介の王子。修行とか 修行とか部下の教育とか、とにかく暇なんてありはしない。彼はけして昼寝やピクニックなんかのために、 こんな草原にまで足を伸ばしたわけではないのだ。
「何してんだよ」
「・・・・・・・・」
ああ、それなのに。ぴったりと背中に貼りつく男、伝わる体温が鬱陶しい。尻に当たっている硬い物の正体なんて、 考えてみるだけでもおぞましい。
「探し物だ、どけ」
「何を?」
「種、サイバイマンの」
「見つかんのか、こんなとこで」
「多分」
交わされる会話のレベルすら下がってきた。なんだか泣いてしまいそうだ。
「・・・・ネコ」
「ひゃっ、・・やめ、バーダック!」
「ご主人様だろ」
耳朶にぬめった舌の柔らかさを感じて、ベジータは否応なしにサイバイマンの種探しを諦めなければならなかった。