いつでもきみを









「あれ?アルは?」

時刻は昼前。場所はリゼンブールのロックベル家。
今まで部屋でのんびり寝ていたエドは階下に降りるなりアルの姿が見えないことに気付き、居間で工具の手入れをしていたウィンリィに尋ねた。

「アルならおつかい。部品取りに行ってもらってる。」

工具をいじる手は休めずにウィンリィは答える。

「あぁ。こいつの?」

エドが自分の機械鎧を指差しながら訊く。
ウィンリィはエドの方を見ていないが「こいつ」が何を指しているのかは分かっているようで、そのまま顔を上げずに話し続ける。

「そう。十分くらい前に出たばっかりだから昼すぎになるわよ。」
「そうか・・・。アルのやつ、起こしてくれれば一緒に行ったのに・・・。まぁ、しょうがないからもう一眠りしてくっかな。」

あくびをしながらそう言ったエドにウィンリィは呆れた顔をする。

「もう一眠りって・・・もう昼前よ。寝すぎ。」
「しょうがねーじゃん。午後にならなきゃメンテナンスできねーって言うし。せっかくだから寝貯めしとくの。」

呆れた様子のウィンリィに悪びれもしない調子でエドはそう言い返した。




そう、エドとアルは機械鎧のメンテナンスのため前日の昼からリゼンブールに帰郷していたのだ。しかし、ウィンリィの方は他の客の仕事がたて続けに入っていたため時間がとれず、エドの機械鎧に必要な部品もきらしてしまったのだった。
そういうわけで、エドとアルはリゼンブールで1日足止めを食うことになってしまった。




「だっからメンテナンスに来る時は事前に電話ぐらいしろっていつも言ってるじゃない。そうと知ってれば時間も空けといたし、部品だってちゃんと確保しといたんだから。」

いつもだったらウィンリィはエドがいつメンテナンスに来てもいいように部品などをちゃんと準備している。
しかし今回に限っては、忙しくてたまたまその準備ができてなかった時にエドが来てしまったのだ。

「だー!悪かったって!今度はちゃんと電話すっから!」

うっかりウィンリィを怒らせそうになり、エドは慌てて謝る。
工具を手にしている今、ウィンリィを怒らせようものなら確実にスパナが飛んでくるからだ。

「分かればよろしい。」

満足そうにそう言ったウィンリィの様子にエドが「怒らせずに済んだ・・・」とほっと胸を撫で下ろしたところで、隣の作業場を掃除していたピナコが顔を出した。

「エド。起きたんだったらちょっとおつかいに行って来てくれないかい。」

起きるなりおつかいを頼むピナコに「人使いが荒いなぁ」と心の中で苦笑しつつも、エドは頷いた。
「わーった。着替えてくるからちょっと待ってて。」
エドはそう言うと、再び2階へと駆け上がっていった。












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「ただいまー、ってあれ?兄さんは?まさかまだ寝てるの?」

エドがお使いに出てから数十分後、部品の入った箱を両手に抱えたアルは帰ってくるなり兄の姿が見えないことに気付く。

「あ、おかえりー、アル。エドならばっちゃんにおつかい頼まれて出かけたよ。」

工具の手入れが終わったらしく、ウィンリィは居間でデンのブラッシングをしている。

「そうなんだ。あ、ウィンリィ。これ作業場に置いとけばいいかな?」

部品の入った箱を少し持ち上げながら首を傾げて訊くアルにウィンリィは笑顔で頷いた。

「うん、お願い。ありがとね、アル。」
「どういたしまして。メンテナンスしてもらうんだから、これぐらい手伝わなきゃね。」

そう言って軽い足取りでアルは作業場へと向かって行った。


「メンテナンスするのはエドの機械鎧なのに。出来の悪い兄を持つと弟はその分しっかり者になるのねー。」

ウィンリィが一人で苦笑しながらそう言っていると、外から聞きなれた足音とくしゃみをする音が聞こえてきた。

「噂をすれば何とやら、かな。」

そう一人語散るとバン、と勢い良くドアが開きウィンリィが予想していた通りの人物、エドが買い物袋いっぱいの荷物を抱えて入ってきた。


「ただいまー・・・っと、アルは?帰ってきてねぇの?」

エドは辺りを見回してウィンリィに訊ねる。

「おかえり、エド。アルなら・・・」

ウィンリィが言いかけたところで作業場に繋がっているドアが開いてアルがひょこっと顔を出した。

「兄さん、お帰りー。」

弟に声をかけられて、エドは満面の笑みで応える。

「おう!アル。部品取りに行って来てくれたんだろ?起こしてくれたら一緒に行ったのにさ。」
「ううん。兄さん気持ち良さそうに寝てたから。久しぶりでしょ?ゆっくり寝るの。」
「まあ、そうだけど・・・」




「あんたたちってさ、相変わらず本当に仲良いよねー。」
暫くの間2人が会話しているのを見ていたウィンリィが不意に笑いながらそう言って、エドとアルはきょとんとしながら顔を見合わせる。

「そ・・・そうか・・・?」「そ・・・そうかな・・・?」

二人の声が見事にハモったため、ますます可笑しそうに笑い始めるウィンリィ。

「あはは・・・だってね、あんたたちって小さい頃からお互いの姿が見えないとすぐに『アルは?』、『兄さんは?』ってあたしとかばっちゃんに聞いてきてたじゃない。今日もそうだったから、『2人とも相変わらずだなぁ』って思ったら可笑しくって。」
「「そうだったっけ・・・?」」

二人の声がまたもやハモる。しかしエドは照れくさそうに、アルは相変わらずきょとんとしながらだったが。
二人がまたハモったのがさらにツボに入ったのか、さっきからウィンリィはますます笑いが止まらない。

「ほ・・・ほら!早くメンテナンスしないと俺たち出発できないだろ!?昼飯食ったらさっさと始めるぞ!」

からかわれているようで居心地が悪いのか、エドは顔を赤くしながらわざと大きな声でそう言ってどかっと椅子に腰掛けた。

「なーによ、偉そうに。『お願いします。かわいいウィンリィさん』でしょ?」

エドが照れているのが分かっているからか、いつもの小生意気な口調だが口元には悪戯っぽい笑みを浮かべたままでウィンリィはそう返す。

「だーれがかわいいって?」

ぼそっと聞こえないようにエドは呟いたつもりだが、人間こういうときは地獄耳になることが多い。

「何か言った?」

案の定、しっかりと聞こえていたようで、スパナを握りながら冷たい微笑みを浮かべてるウィンリィ。

「うわわわわ!何も言ってません!お願いします。世界一かわいいウィンリィさん!」

ウィンリィを見たエドが顔を青くしながら慌ててそう言ったのを見て、「ふふっ」笑いを漏らすアル。
そのまま三人は顔を見合わると、可笑しそうに笑い始める。



昼下がりのリゼンブールに、幸せそうな笑い声が響いていた。
















いるはずの場所にきみがいないと、ぼくはいつでもさがしてしまう。


だって、ぼくがいちばん好きな居場所はきみのとなりだから。



















Fin.















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気付けばいつもお互いを探してる。そばに居ないと不安になる。みたいな関係を書きたかったのでした。
仲良し兄弟ばんざい!
あと、このお話はウィンリィとエドのやりとりも書いてて楽しかったでした。


作成日:04年5月22日  加筆修正:05年10月11日








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