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片翼の天使 ガタン、ゴトン。 セントラル・シティからラッシュバレーへと向かう列車の中、エド、アル、ウィンリィの3人は、久々にゆっくりと話をしていた。 自分たちの故郷のこと。 軍部の人たちのこと。 旅のこと。 その他にも、たくさんの他愛もない話…。 「あ〜あ、兄さん寝ちゃったね。」 話し込んでいて疲れたのか、ヒューズ中佐の奥さんが作ったアップルパイで満腹になっていたエドは心地よい睡魔の誘惑に負け、話の途中で眠りこんでしまっていた。 「ふふふ…。退院してからすぐに慌しく旅立ったから、疲れちゃったのかもね。」 「はは、そうだね。寝かせといてあげよう。」 そう言ってからアルとウィンリィは顔を見合わせてクスッと笑い、2人で話を再開させた。 「…でね、その時の兄さんの顔がもう可笑しくってさ。」 「あははははは…ウケる〜。」 「でしょでしょ?」 「あはははは。」 ウィンリィはアルの話にひとしきりお腹を抱えて笑う。 しかし、笑いが収まると不意に寂しげな表情になり、ため息を吐いた。 「はぁ‥‥‥。やっぱりあんたたちとこうやっているのが一番楽しいな‥‥。」 「そうだね‥‥。」 「うん。‥‥‥だから‥‥やっぱり、早く帰ってきて欲しい‥。」 そう言って寂しげな表情のまま、ウィンリィが微笑う。 「うん。僕たちも、早く元の姿に戻ってリゼンブールに帰りたいよ。でもね‥‥なかなか‥‥‥。」 ふぅ、とアルも深く溜め息を吐き、言葉を続ける。 「手がかりは幾つか見つかったけど、やっぱり辿り着けなくって‥‥‥。兄さんもね‥‥前に『俺たちずっとこのままなのかな』って言ってたことがあった。僕も‥‥‥時々、すごく不安になる‥‥。」 そういってアルは肩を落とした。 鎧のため表情は分からないがその声は悲痛さに満ちていた。 「‥‥‥‥‥‥‥‥。」 下を向いて押し黙ってしまったアルを見て、余計なことを言ってしまったと思ったのか、ウィンリィもアルと同じように俯いてしまった。 しばらくの間、2人の間に沈黙が流れた。 「‥‥‥あのね。ずっと西の方にある、とある国の宗教の話なんだけどね。」 しばしの沈黙の後、俯いていた顔をふっと上げて不意にウィンリィが話しだす。 「うん‥‥?」 ふいにさっきまでの話題とは全く違う話を切り出され、戸惑いながらもアルは顔を上げて頷いた。 「その宗教では、二人の天使がシンボルマークになってるんだけど、その天使たちには翼が片方づつしかないんだって。」 「‥‥‥‥‥?」 「片方の羽しかないから1人では飛ぶことができないんだけどね、だから飛ぶ時はいつも2人で一緒に飛ぶんだって。」 足りないお互いの翼を補い合って。 2人で寄り添いながら。 「素敵な話だね。」 「うん。これは小さい頃に父さんから聞いた話なんだけどね、あんたたちを見てるとよくこの話を思い出すの。」 「‥え‥‥‥?」 「あんたとエド、いつも一緒に寄り添って、お互いのこと助け合ってるから。」 急に自分たちの話になって、アルは照れたように頭を掻く仕草をした。 「そ‥‥そうかな‥‥‥?」 「そうだよ。だから、ね、あんたたちなら、絶対に大丈夫だよ。」 そう言ってウィンリィはアルに笑いかけた。 そう、2人一緒なら、きっと大丈夫。 嬉しいことも、辛いことも、いつも分かち合ってきたのだから。 「あ…ありがとう。ウィンリィ。」 照れくさそうにそう言ったアルに、ウィンリィは「どういたしまして」と言う代わりに優しく微笑みかける。 そんなウィンリィを見て、さらに照れくさそうに「えへへ」と笑いながら、アルは正面の席で心地よさそうに寝息を立てている兄の姿に目をやった。 2人一緒なら、いつかは空を飛ぶことだってできる。 たとえ、翼をもがれて地に墜とされても。 だから、いつまでも、寄り添って生きていこう。 Fin. *********** 携帯サイト初のSSでした。(本当に一番最初の作品は詩なのですが、もう目も当てられないのでここでは割愛。) 1年半以上も前の文章なので読んでて恥ずかしさに悶えます。(滝汗) でも割と好評で嬉しかった思い出もある作品なので、ちょこっと修正してまた載せてみました。 片翼の天使のお話は某ゲームから拝借したネタです。 ちなみに筏、「飛べない天使」は未プレイです。画面酔いしてできん。 作成日:04年2月25日 加筆修正:05年10月11日 戻る |