目が覚めると、熱い雨が降ってきた。
「ふふ…これはこれは、どうした事か。梅雨でも無いのに季節外れの雨粒が降り止まぬ」
静かな室内に嗚咽が響く。
傍に在るのは、どんな事にも私情で心を揺るがさぬ堅物の乱れ切った顔。
それは、眩暈がする程、美しい。
「程々にしてくれまいか。私の顔が濡れてしまうよ、鷹通」
いつもならば不機嫌に言い返してくるはずの堅物が、天を仰ぎ横たわる私の上から容赦なく涙を落とす。
「そんなに泣かずとも…」
「泣かせているのは、誰ですか!」
それは、私だ。
不覚なことに、牛車に轢かれて意識を手放してしまった。
「三日も眠り続けていたのです。貴方の声が、もう聴けなくなるかと思うと……私は…」
取り繕う事無くぶつけて来る感情…
こんなにも激情家だっただろうか?
「不安なのです。不安で、辛くて、淋しくて……泣いて、何がいけないのですか。大切な人のために流す涙を、私のこの気持ちを咎めるなど、誰にも出来はしない!」
真っ赤な顔で振り乱しながら泣く姿は、とても、愛しい…
愛しくて…
「ふっ………」
「友雅殿!どこか痛むのですか?!」
「違うよ」
愛しくて、涙が出る。
「極楽浄土へ行くのは、まだ早いらしい」
私の為に泣き狂うこの愛しき人と離れるなど、どうして出来ようか。
「私の為に泣くと言うのならば、私の元から一生離れず、欲情で繋がれ啼いておくれ」
「友雅殿っ!!」
そう。
耳まで真っ赤になって、怒って、照れて、声を上げて乱れたらいい。
それが、生きているという事。
それが、愛しているという事。
「鷹通、ありがとう」
「友雅殿、ご無事で何よりです。そうでないと…」
笑ってみせると安心したのか、降り続いた涙の雨は止み
そして次は
「……出来ませんから…」
甘く切ない接吻の雨が降り落ちた。
私の居場所は、ここに在る。
何処へも行くまい。
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恥ずかしながら、木ノ葉に捧げた話。
友雅さんたら交通事故にあいました。生死に関わる話を書くのは少し躊躇いがあるのですが、愛を泣き叫ぶのを止める権利は誰にも無い、乞うのも求めるのも在りのままに…という気持ちを込めてみました。 そんなワケで、鷹通ってば積極的ですvv
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