ど田舎では無いけど、絶対都市じゃあ無いよね、
と評されるこの町ではあるが、分野こそ違うものの研究所が複数存在する。
研究所の人間曰く、何事も中途半端だからこそ大いに研究意欲を掻き立てられる、
ということらしいのだが、微妙に失礼な話だ。
 とは言え余所者を毛嫌いする程閉鎖的な町でも無いので、研究所に対しての風当たりも特にない。
そのせいか、白衣を着た人間が商店街を歩いていたり、昼休みに公園にたむろっていたりと、
何となく違和感のある風景が実はこの町の密かな名物だったりする。
勿論、そう言っているのは住人だけなのだが。
 それはともかく、とある公園のベンチに、例に漏れず白衣姿の人物が腰を下ろしていた。
整った顔立ちは、さぞ人の目を引くであろうことは想像に難くないが、
それでなくとも、この人物は人の注目を浴びるのが日常茶飯事だった。
というのも、この少年は、そう、正に少年と形容するのに相応しい程に、
つまりはまだ未成年なのだ。
 オーキド・シゲル。13歳。
生態学の分野で世界的な権威と謳われた、かのオーキド・ユキナリ、彼はその孫にあたる。
祖父の血を色濃く受け継いだのか、はたまた研究一筋の祖父の影響が大きかったのか、
彼もまた幼い頃から生物に関する知識が豊富で、また関心も深かった。
そして案の定、留学先の某国で才能を開花させた彼が再び自国に戻ってきた時には、
学年も経過もすっ飛ばして人も羨む立派な研究者となっていた。
そういうわけで、文学上ではよくあるけど実際そんな奴いねーよ的な経歴を持つ彼は、
事実は小説より奇なりを地でいきながらも、
しかし巧妙にマスコミ対策をやってのけ、この町にさり気なく落ち着いたわけである。
ちなみに蛇足ながら専門は古生物学という地質学の一分野である。
関わりは深いが素直に生物学で無い辺りが彼の捻くれ具合を表している、かもしれない。
 ただし、外見相応の年齢であり、年齢相応の容姿であることだけは詐称できない事実であるので、
この点に関してだけ、この点であるからこそ、特に見知らぬ人の目を引いてしまうのである。
 閑話休題。話を元に戻すとして、
シゲル研究員の座るベンチは、背後にある木が丁度良い日陰を作っていて、
初夏の空気が感じられてきた晩春の頃には、非常に心地よい。
人気のある場所なので、今日は運が良かった、などと本日の気候に倣ったような平和な感想を抱くシゲルは、
その穏やかな気持ちのまま公園に目を遣った。
シゲルと同じく昼休みに公園で寛ぐ白衣の人々が数人ずつ辺りにちらほら。
井戸端会議に精を出す奥様方。
昨今には珍しく公園を走り回るお子様たち。
とそれに童心が甦ったのか、シゲルと同年代の少年がそれに混ざって駆け回っている。
おい、学校はどうした、と心の中だけでツッコミを入れた。
それでも何となく物珍しいので、暫くぼんやりと眺めていたところ、
お子様達が飛行機雲を見つけたと空を指差しながらはしゃぎだした。
指差す方向にその少年も顔を向け、ついでにか辺りをざっと見渡したところで、
はたとシゲルのところで目を留めた。
大方、こんな若い者が白衣を着ているのが珍しいせいだろうと解釈し、
少年がこちらの方を見つめながら足を一歩踏み出したのでシゲルは立ち上がった。
興味本位で近寄られるのは百害あって一利無し。
シゲルは早々に公園を後にした。









 両手にたくさんの草花を抱え、一人の少年が道を歩いていた。
抱えているその植物は見る人には分かるというか、専門家にしか分からないのだが、全て摂食可能だ。
勿論今晩のおかずにしようと、公園や空き地や土手で摘んできたのだ。
「あー、今日も大漁大漁」
夕日の光を背に受けながら、少年は上機嫌で家路を急ぐ。
せっかくだから管理人夫妻にもお裾分けしよう。と、少年はいつものようにそう思った。
管理人夫妻は彼らの一人息子を除けばなかなか話が通じる人たちなので、
少年も一家に対してかなり好意的であり、よく収穫物をお裾分けしているのだ。
いい人っているところにはいるんだなぁ、などと考えながら歩いていると、現在の居住地が見えてきた。
思わず小走りになりながら、町の名物――白衣の集団と擦れ違った。
その中に何故か同い年くらいの少年もいた気がしたが、
少年の興味は今日の夕飯とお裾分けに傾いていたので特に気にすることもなく、アパートの門をくぐった。
と、住人の一人が庭の方にいるのが見えたので、そちらに向かう。
「タケシ!」
大声で呼びかけ、振り返ったその青年に、今日の収穫を誇らしげに見せた。
「いいだろー、ヨモギにオオバコ、あ、今日はツユクサもあったんだぜー」
青年――タケシはそんな少年の姿を微笑ましそうに見ながら答える。
「おお、これは大漁だな。ノギクもあるか?」
「うん?確かあったと思うけど?」
「なら少し分けてくれないか?中華サラダに加えようかと」
「サラダ分けてくれるならいいぜー」
「よし、じゃあついでに炊き込みご飯もつけてやろう」
「やった!さっすがタケシ!」
更に機嫌を良くする少年に家族愛的な視線を向けるタケシ青年は、
落ち着き払った外見とは裏腹に実はかなりの子ども好きだ。
兄弟たちが多く、両親に代わって世話をしてきたせいもあるのだが、彼は根本的に生物の世話をするのが好きな性格で、
特にある意味野生児的なこの少年は放っておけないというか世話心をくすぐるというか、
とにかくも少年が越してきた一月前から、ついつい世話を焼いてしまうのだった。
「だが、サトシはもう少しタンパク質も摂った方がいいと思うぞ。
健康的な食事には違いないが、まだまだ育ち盛りなんだから」
「んー、そうだなー、サワラとかまだいるかな」
こっから海までってどれぐらいかかるっけ?と尋ねてくるサトシ少年にタケシは苦笑する。
「や、海まで捕りにいかなくてもいいんじゃないか?」
生まれのせいか育ちのせいか、詳しいことはよく知らないが、
この少年はどうも自給自足?の精神が叩き込まれているようで、
食材を自分で狩猟採集してくることが割とある。
「でもそうだな、なるべく今の内に豆腐は食べておきたいな。大豆ってこの辺に生えてる?」
「うーん、そこからだとにがりをどうやって調達してくるかが問題だが……」
延々と続きそうな、端から聞けば明らかに彼らの年代とそぐわぬ会話を、
実際に耳にしてしまった管理人夫妻の一人息子は人知れず頭を抱えた。
「……誰かツッコんでやってくれ……」

























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このサトシはおそらく白ウサギよりもサバイバル力ありますね。
イメージは天才ファ○リーカ○パニーの田中春くんです。