吐く息は白く、君の頬は赤く、





 本を買いに、シゲルは外に出た。
目当ての本は、難なく見つかり、帰り道をゆっくりと歩いていて、
不意に、吐く息が白いことに気が付いた。
そういえば、だいぶ寒くなってきたな、とシゲルは思った。
ちょっとの間だけだからと、
上にジャケットを羽織っただけの服装で外に出てきたので、
段々と寒さが身にしみてきた。
まあ、仕方がない。
家まではもう少しの距離だ。
帰ってすぐに身体を温めれば、風邪を引くまではいかないだろう、
と思い、シゲルは少し足を速めた。
 通りかかった広場で、子どもたちが遊び回っていた。
元気だな、と横目で見ながら思った。
その子どもたちの年の頃は、シゲルとさして変わらないことはわかっていたが、
シゲル自身、自分が年相応だとは思っていないので、気にしなかった。
 通り過ぎたところで、広場から聞こえる遊び声が途切れたのに気が付いた。
おそらく、子どもたちが今日はもう解散するのだろう。
そう考えて、別に振り向かなかった。
「シゲル!」
後ろから、突然名前を呼ばれた。
知っている声だ。きっとこいつも広場で遊んでいたんだろう。
シゲルはゆっくりと振り向いた。
「やあ、誰かと思えば、サトシ君じゃないか」
誰かは知っていたけれど、いつもの調子で話しかけた。
サトシもシゲルのこんな口調はいつものことなので、気にしない。
「よ、シゲル。何してんだ?」
「別に。ただ本を買いに行っていただけだよ」
右手に下げた袋を少し動かして、シゲルはそう答えた。
サトシは本にはさして興味を示さなかった。
「ふーん、もうちょっと早く来てたら、お前も一緒に遊べたのにな」
楽しかったんだぜ、とサトシは嬉しそうに話すが、
シゲルはサトシが興味を示さなかった本の方が、
大人数で遊ぶより、よっぽど関心があったので、何も言わなかった。
「……」
サトシの顔に初めて注意を向けて、
シゲルはどれだけ長い間、こいつは遊んでいたのだろうか、と呆れた。
この寒空の中、走り回ったのだろう、頬が赤くなっている。
吐く息はシゲルよりもはるかに白かった。
走り回ったから、体の中は、暖まっているが、
北風にさらされた体の表面は、おそらく冷えているはずだ。
「君……」
シゲルはサトシの頬に左手を伸ばし、そっと触れてみた。
やはり、かなり冷えている。
「お前の手、あったかいなぁ」
サトシは嬉しそうに、わずかにシゲルの手に顔を傾けた。
「君が冷えすぎてるんだよ」
呆れつつ、すかさずそう言って、
シゲルは羽織っていたジャケットを脱いで、サトシの肩にかけた。
サトシは目を丸くした。
「風邪引くよ」
「シゲル……」
驚いていたサトシが微笑んだ。
「今日は優しいな、シゲル」
自分の行為とサトシの笑顔と言葉が照れくさくて、
シゲルは顔をそらした。
「……早く帰れよ」
そう言い捨て、シゲルはその場を走って去っていった。
サトシはシゲルの行動を唖然と見送っていたが、また、笑顔になった。
「あったけー」
シゲルのかけてくれたジャケットに赤い頬をすり寄せた後、
サトシは家路を急いだ。

























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まだマサラを旅立つ前の話。
オチがない……