どこにいる?





 雲がない。空には青い色がどこまでも続いていた。
マサラタウンの裏山で、サトシは仰向けになって、特に意味もなく空を見つめていた。
見つめるのは空でも、考えるのは別のことだ。
 いつも自信満々で、人のことバカにしてばっかりの幼なじみ、そしてライバル。
それでも時々見せてくれる優しさが嬉しくて、一緒にいるのはやっぱり楽しかった。
 だけど、それは本当の彼ではなかった。
あんな目も声も知らなかった。
暇つぶしと言われたアレも、
その時の彼も自分も、
知らないことばかりだった。
痛かった。
怖かった。
そして哀しかった。
辛かった。
「……」
信じていたものは崩れ去った。
知っていたと思っていた彼は、あの冷たい声や瞳のように、まだ知らない部分ばかりだった。
オレは、シゲルのことなんか分かっちゃいなかった。




どうしたいと思った?
知らない彼を見てから、自分はどうしたいと思ったか。
母の言葉を思い出しながら、見舞いの時を思い出しながら、サトシは考えた。
思い出したくはなかったが、初めてされたあの時のことも考えた。


何で、どうして。
こんな奴知らない。
こんなシゲルは、知らない。


ズキ、と胸が痛くなり、サトシは顔を顰めたが、あの時の感情を思い出した。
初めて見たシゲル。
今まで知っていたシゲルとは違うシゲル。
オレの知らない、シゲル。
それは怖くて、だけどそれよりも悔しくて、哀しかった。
シゲルのことを知らない自分が悔しくて、
誰にも分かってもらえないシゲルが哀しかった。




ああ、そうか。そうなんだ。
たまに、ほんの一瞬だけ見せるシゲルの表情を見て、何を思った?
布団にくるまり一人で眠るシゲルを見て、どう思った?
その手を握って呟いたのは、何の為だ?


シゲルのことを何も知らなかったから、もっと知りたいと思うんだ。








答えは出た。しかし幾らかスッキリした頭とは裏腹に、サトシはため息をついた。
「……だけどオレ、嫌われてるしな……」
二度目の時を思い出し、サトシは仰向けになっていた自分の身体を横に転がし俯せた。
地面の草花に顔を埋めれば、土と草の匂いがした。意味もなく唸る。




嫌いだと、もう近付いてくるなと、そう言ったくせに、その時のシゲルの顔はすごく寂しそうで、辛そうだった。
それなのに、何も話さないで、一人で背負い込んでしまっている、
サトシにはそう見えて仕方がない。
じゃあ、誰にも、自分にも何も言わないのは何故だろう。
「…オレじゃ、頼りないからかな、やっぱ……」
自分で言った言葉に自分でちょっとだけ傷付いたが、すぐに首を振って気を取り直す。
じゃあ、もっと頼れるようになれば、
もっとシゲルに追いつけば、
シゲルはオレのこと、認めてくれるかな。
そしたら、オレにも話してくれるようになるのかな。
オレもあいつのこと、もっと分かるようになれるかな。




「ううん、そうじゃない」
ハナコの言っていた意味が少しだけ分かった気がした。


オレは、そうしたいんだ。








 サトシはもう一度、身体を動かして、仰向けになった。
空を見つめる。今度はただ見ているわけではなかった。
決意の瞳で、空を見る。
右の拳を握りしめて、その腕を伸ばす。

空と自分に誓おう。




本当のお前を、
オレはいつかきっと、見つけてみせる。

























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サトシサイドはこんな感じ。
サトシは前向きで、シゲルは後ろ向きです。
シゲルサイドを書き上げた後からが、ホントの馴れ初め話、かな…