不愉快な電子音





 二人の間に流れていた空気は最悪だった。
別に夫婦では無いけれど犬も食べない何とやらの延長で、ともすれば決裂に繋がりそうな程に緊迫した状況だった。
 まあ原因は犬に最早見向きもされない程の些細なことだった。気がする。
頭に血が上った状態の二人は、発端となった出来事など既に忘却の彼方だ。
互いに睨み合ったまま両者一歩も引かない。
「つまりは、お前は絶対退く気は無いんだな」
「当たり前だ。何でオレが退かなきゃならねーんだ。
 お前こそ今の内に折れた方が身のためだぜ?」
犬が食べずに興味も示さないのならば、百害あって一利無しなのは明白だ。
それを悟って彼らの大切な仲間・友人たちはとうにその場から立ち去っている。
賢明だ。
「なら仕方ない」
青筋を立て、グリーンはレッドに一歩近付いた。
ただでさえ目つきが悪いその目が更に鋭くなる。
完全に据わっている。
「身体に訴える」
真顔でとんでもないことを言い出すグリーンだが、
何言っちゃってるのコイツ!
いっぺん庭の池にはまって全身冷やして来い、おバカ!
とか言ってツッコんでくれそうな図鑑所有者は前述通り立ち去っている。
ついでにそのおバカたちのパートナーたちもさり気なく避難させてくれた。
「やれるもんならやってみろ。戦う者・マサラタウンのレッドを甘く見るなよ」
その戦う者レッドのパートナーは既に避難済みなのを知ってか知らずか、モンスターボール(空)を取り出して凄む。
「お前こそ、先代の大地の書を受け継いだジムリーダーをなめるなよ」
グリーンも負けじとモンスターボール(やっぱり空)を取り出した。
正にリーグ決勝戦再び!な壮大な真剣勝負(ポケモンいないけど)という名の(夫婦)喧嘩が始まりかけたその時だった。


ポンピリポンピンポンポンピリポンペンポン


 突如、どことなく哀しい旋律だというのに、何となく間の抜けた電子音が鳴り響いた。
「何で昭和枯れすすきなんだよ!!」
「……お前、よく分かったな……」
両者共にそれなりに的確なツッコミを入れた。
音の正体はグリーンの携帯の着信音だ。
「何だよお前何で昭和枯れすすきなんだよ(二回目)!
 どういうチョイスなんだよ。意味わかんねーよ!
 ていうか何で昭和枯れすすき!?(三回目)」
話と闘志とバトルその他諸々の腰を折られたレッドは、怒りのままに八つ当たり的一喝をして、その場に脱力した。
「何回も言うな。一回でいい。趣味だ。ちなみにお前からの着信音は関白宣言だ」
レッドのよく分からない問い&ツッコミに簡潔に答え、
ついでにどうでもいい情報までくれたグリーンをレッドは呆れて見遣ったが、
魂が抜けそうな程盛大なため息をついて、ポツリと零した。
「大事な話をしている時は、電源を切るかマナーモード設定の上、通話はご遠慮下さい」

























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シゲサトよく分からないシリアス、シュウハルラブコメを経て、
最終的にただの痴話喧嘩になりました…

昭和枯れすすきと関白宣言、いい歌です。