引っ越し屋さんが思うこと
引っ越し自体はいつものことなので、それが他人のか自分のかというぐらいしか、違いはない。
荷造りだって、運ぶのだって慣れている。
だけど、やっぱり一人で黙々とやるのは寂しいので、政宗を誘ってみた。
「…引っ越し屋が素人に手伝わせんじゃねぇよ」
慣れてるだろうが。一人でやれ。
と最初は冷たく言い捨てられた。
しかし俺は知っている、
政宗は単に心底面倒なだけなのだ。
だけどやっぱし一人は寂しい。
だから引き下がらずに何度かお願いしてみたら、渋々ながら手伝いに来てくれた。
ありがとう、政宗。
恋人との引っ越し作業は思った以上に心を弾ませた。
初めて会ったのも引っ越しだったことだし、
懐かしい思いにも捕らわれた。
今思い返せば、ひたすらにあれは正に運命だった。
政宗が引っ越しをすることにして、
引っ越しをうちに頼んで、
俺が担当になって。
そういういくつかの分岐点があり、
それら全てが俺と政宗との出会いへと繋がっていった。
これを運命と言わずに何と呼ぶ?
もしいるとするなら、俺は心の底から思うよ。
ありがとう、神様!
荷物を引っ越し先へと運び込むと、
何もなかった新しい我が家は、あっという間に段ボールで埋まった。
「……引っ越す前より、後の方が面倒だよな」
「…うん、俺もそう思うよ」
最初は面倒そうだった政宗だが、
一度集中しだしたら、とことんやってくれるB型なので、
もう今はバッチシ引っ越しモードだ。
俺よりやる気あるかもしれない。
「よし、今日中に片付けんぞ!」
気合いを入れて、早速段ボールを開け始める。
てきぱきと片付けていく政宗の姿を見ながら、俺は幸せにひたっていた。
片付け一日でほぼ終わっちゃったよ。
すごいな、政宗。
あんた、引っ越し屋の才能あるかもねぇ。
「よし、大方片付いたな」
「ありがとう、政宗!助かった!!」
何だかんだと言いつつ、しっかり手伝ってくれて、それも俺のためで、
嬉しすぎて満面の笑みで政宗を抱きしめた。
「こら、離せ!お前は幸村か!!」
政宗の真田に対する認識って如何なものなのか、と内心思いつつ、
こんな風に真田も政宗に抱き付いているとしたら、それは妬ける。
俺だって、もっと甘えたい。
だって恋人同士なんだ、仕方ないよな。
「…あ〜、忘れてた……」
ぽつりと呟くと、政宗は眉を寄せる。
「はぁ?まさか詰め忘れでもしやがったのか?」
呆れつつ半分馬鹿にしつつ、政宗がそう聞いてくる。
駄目だ、何言っても、どんな言い方でも可愛い。
「うん、大事なもん忘れてた」
そう言うと、打って変わって、本気で心配そうに聞いてくれる。
「マジかよ、もう鍵返したんだろ?
どうすんだ?」
あんたって人は、どうしてそう、俺をドキドキさせてくれるんだ。
「慶次、どうすんだよ?」
見上げてくる政宗に笑顔を返し、
彼の腰と腿の裏に手を回して、政宗を抱え上げた。
「うわあっ!?」
存外に可愛らしい悲鳴を上げるもんだから、ますます愛しい。
「大事な、大切なもんだよ、ね、政宗」
このまま、家に置いておけたらいいのに。
俺は物か、
と怒り出すのは楽に想像できるので、それは言わないでおいた。
代わりに、いきなりの俺の行動に固まっている政宗に満面の笑みで笑いかけた。
だけど、
いつかは絶対に一緒に家に住んでもらおう、
と固く心に誓った。