六代目拍手(2009.6.14〜2012.8.8)
声について本気出して考えてみた
意外に可愛いよね (サナダテ)
何てったってまだ十代。
若さと勢いに任せて思う存分やり合った幸村と政宗が、取り留めもなく睦言を交わしている時だった。
「某常々思っておりました」
情事後の気怠げな雰囲気の中で言うには、恍惚としてはいるものの存外に真面目な様子で幸村が不意に呟いた。
「……Ah-…何を?」
何を言うつもりだ、どうせまたロクなことじゃねぇだろうな、
とほとんど期待もせずに、しかし話をぶった切るのも面倒だったので、政宗はそう返した。
ぶった切られなかったので、幸村は嬉しそうに答える。
「普段の政宗殿の御声は、流石は奥州筆頭、独眼竜と称されるに相応しい勇猛さや威厳に溢れ、
それでいて奥方殿や奥州の民に掛けられる際には優しさに充ち満ちたものにござりますが――」
「……そりゃどーも」
わざわざ閨で交わすような内容では無かったが、そう手放しで称賛されると、
この濁声を褒められたことも無かっただけに、何やらこそばゆいような気恥ずかしいような。
政宗は微妙な表情を作るが、構わず幸村は続けた。
「我が腕に抱いた際に上げられる御声は存外お可愛らしい」
「……」
え、ここ喜ぶとこ?
咄嗟に何と返せばいいかに窮する政宗を余所に、
幸村は更に彼曰く可愛らしい声の特徴や状況を事細かに説明し始めた。
「政宗殿は、普段は低く凄味のある御声でおられまするが、
お乱れになった際は少々調子が高くなられます。
そして少し掠れた御声で某をお呼びになる時の艶やかさはまた格別で、
我が身で以て貫いた時などは――」
「ちょおま、バカ!そういうことをこういう時にいちいち言うんじゃねぇ!てか、それ以上言うな!」
幸村の絶賛が彼の口から紡がれていくにつれ、
次第に頬を紅潮させ、最後には耳まで真っ赤になってしまった政宗だが、
結局堪えきれずに慌てて幸村の口を塞いでしまった。
塞がれて尚、もごもごと、くぐもった声で何事かを訴える幸村を無視したまま、
何でコイツはいつも唐突にこういうことを言い出すんだ。
ていうか、俺そんな感じだったの!?恥ずっ!
などと褒められ(?)慣れしていないせいか、照れよりも羞恥が先に立って、
むしろそういうことはこういう時でないと言わないだろう、
という極々一般的な意見にも気付くことなく、
政宗はぐるぐると思考を混迷させていたのだが、
その間に、幸村は自身の口を塞いでいた手を簡単に解いてしまった。
その手をしっかりと握り締め、幸村は更に言う。
「政宗殿、照れることはありませぬぞ。某、真実を口にしているだけでござる」
動揺している政宗を物珍しげに、しかし微笑ましいといった様子で見つめる幸村からは、
普段とどことはなしに立場を逆に出来たことに対する喜びがそこはかとなく滲み出ている。
「……」
むかつく。真田のくせに。こんな奴をCoolとか思った俺に!
普段の他虐といつもの自虐を同時に行う器用な政宗だが、
その器用さを咄嗟に行動で示すことはできずに、
不覚を取った悔しさと羞恥で唇を噛み締め、
幸村ばりに真っ赤になってしまった顔を隠すためか彼の胸に顔を埋めた。
「政宗殿…!あぁ、そんなところもまた何とお可愛らしいことか!」
それを己の愛に応えてくれたのだと都合良く解釈した幸村は、
感極まって再度政宗をしかと抱き締め、締まりの無い蕩けた笑顔を見せる。
毒気も幾らか抜けそうな程の笑顔であったが、
幸か不幸か俯いたままの政宗にはそれが見えなかった。
だから、今度ぜってぇ仕返ししてやる、
と悔しさと負けず嫌いを前面に押し出し、政宗は心に固く誓うのであった。
やっぱ良いよね (チカダテ)
「というわけだ、政宗。今回はお前の声について語るぞ」
「……それは真田ん時にやったから、もーいい」
嬉々としてそう声をかけた元親に、ものすごくやる気なさそうに政宗が答えたというか切り捨てた。
それにびきっと青筋を立て、元親は面倒そうに煙草の煙を吐き出していた政宗から煙管を取り上げ、次に押し倒した。
何と言っても体格差は明らかだ。覆せない。
「てめぇよぉ、そりゃねぇだろう、まだ六行目だぞ?ありえねぇだろ」
元親の文句に政宗は不満そうに口を尖らせたが、
どうやら機嫌を損ねたのは、元親の主張よりも煙草を取り上げられたことに対してのようだ。
「じゃ何か?また俺の声について語んのか?
普段と愛たち構ってる時とヤってる時全部真田に言われたのに、まだ言い残したことあんの?
お前それ程知能あったの。へー、そりゃすげぇな、Ha-ha!」
え、何コレ。何で俺こんなに八つ当たり(?)されてんの。
いきなりの理不尽な扱いに怒るより呆気に取られた元親だが、取り上げた煙管を取り返されすぐに我に返る。
ここまで言われて引き下がっては男が廃るというものだ。
「言いやがったな、独眼竜。鬼をなめたこと、後悔すんなよ」
細かいことは気にしない性格(になりました、前よりは)の元親だが政宗の嫌味をスルーできる程大らかでもない。
「上等だ。食いちぎられても知らねぇぞ」
典型的な売り言葉に買い言葉。
睨み合った鬼と竜の勝負は、しかし流石の意地で鬼に軍配が上がった。
「く、アンタの勝ちだぜ、元親…」
相変わらず良い声だぜ。
何だよあの低音。反則だろ。
しかもシリーズ追うごとに低音が増してやがるし。
これがあのGWパイロットの五の奴と同じだなんて。
あれ、コレ前にも言った?
じゃああれだ、聞いたことないけどルカリオ部長と同じ声だなんて。
とか思ってたらアニポケに出てた。
でも鳴き声だと分かんねぇよ!
身体と低音に任せた一勝負で、その低音に散々耳元で囁かれた政宗は、
紅潮したままの顔でどことなく満足そうにそう呟いて、意識を失った。
「おいちょっと待て、政宗。俺の出番コレで終わり!?」
勝ち誇った顔の元親は直ぐさまその表情を驚愕に変え慌てて取り縋るものの、
寝入った政宗からは返事も反応もなかった。
「……まぁ、いっか」
普段は決して見せない安らかな寝顔の政宗を見られただけでも良しとしよう。
そう納得させて元親は政宗から再度取り上げた煙管を銜え、ゆっくりと煙を吐き出した。
だって仕方ないよね (シゲサト)
「オレはスルーでお願いします、シゲルくん」
「開口一番での全身全霊での拒絶、どうもありがとう」
初っぱなから呆れた様子を晒す羽目になったシゲルに何だか申し訳ない気分になったことはなったけれど、
堪えられない状況を想像してやっぱり全力で拒んだ。
「ゴメン、でも自分の声について色々言われるなんてオレ堪えられない。
お前絶対わざと意地悪なこと言うに決まってるし」
「……心外だねぇ。僕は心から湧き上がってくる君への感情を言葉で表現しているだけなのに」
肩を竦め、大袈裟にため息をつくシゲルにうーと唸りながら、サトシは言い返した。
「プラス、オレの反応を楽しむっていうのが入ってるだろ!」
「……たまに鋭いこと言うようになったよねぇ、君。
でもそれじゃあサトシが僕の声について語ることになるけど、君に出来るの?」
図星を突かれたシゲルは、じゃあ仕方ない、と諦めて、代わりに率直にサトシにそう尋ねた。
「バカにするなよ、シゲル。オレにだってお前を口説くくらいできるってとこ見せてやる!」
主旨がずれていることはこの際気にしないことにしよう。
シゲルはそう思い、ではどうぞ、とサトシの次の言葉を待った。
「シゲルの声は、色っぽい!」
「……それはどうも」
微妙な表現にシゲルは微妙な顔になる。
「あとは何だ…オレを心配してくれてる時とかは優しくてカッコ良い!」
「……」
何かもう口説くっていうか感想みたいな…でも何だろ、結構嬉しいかも。
珍しくもシゲルは気恥ずかしさを表情に出したのだが、他に無いかと呻っていたサトシは気付かなかった。
サトシはそのまま、シゲルの両手をがしっと掴み、叫んだ。
「シゲル、大好きだ!!」
「――!」
直球ど真ん中ストレートな発言に流石のシゲルも頬を真っ赤に染めた。
いや、これはかなり嬉しいけど、ちょっとというかもう完全に主旨が違うというか、
いやいや、嬉しいけどちょっと待て、もしかしてむしろ今回はこういうコンセプト!?
いやいやいや嬉しいよ。
嬉しいけど、何、僕どんな反応返すべき。
「や、サトシくん、ちょ、ちょっと落ち着こうか……」
辛うじてそれだけ言うものの、サトシは聞いちゃいなかった。
「シ、シゲルー!!」
自分の発言のせいか、それに伴う感情と衝動のせいか、
何かのスイッチが入ったらしく、勢いに任せてサトシはシゲルを押し倒した。
シゲルは器用にも歓喜しながら仰天した。
「いやいやいやいや、ものすごく嬉しくて仕方がないけど、ここでそれ以上はマズイって!
ここシゲサトサイトだから!サトシゲにはなっちゃダメだから!!」
サトシの勢いに押されすぎたせいか、無用(?)な心配からシゲルは変な発言を口走り始めた。
「そりゃあたまにはサトシから誘って欲しいとか思ったりしたけど、
立場まで変わりたいとは思っていないわけで、
やっぱり僕はされるよりする方が好きというか…
いや、サトシもそう思ってたのだとしたら、それはとても申し訳ないとは思うけど、
でも僕も何て言うか……とにかくゴメンなさい!」
動揺したシゲルには自分が何を言っているのか分かるはずもなく、
それならば当然サトシにも分かるはずがなく、
感情だけ先走っていたサトシはここで我に返った。
「え、お前何言ってるの?オレ何で謝られてるの!?」
訳が分からないが、混乱しているシゲルをサトシは四苦八苦しながら宥める。
これを発端に色々な意味で立場が逆転しないようにとシゲルは後に切に願うようになる。
ちょっとずれてるよね (シュウハル)
「シュウ、大変!わたし、あなたを口説かなきゃならないの、どうしよう!!」
「うん、ちょっと落ち着こうか」
息せき切って、とんでもないことを言い出すハルカにそう声を掛け、シュウは彼女を宥めた。
「話の流れ的にそうなってもおかしくないけど、今回はどちらかが相手の声について感想を述べるだけだから。
決して君が僕を口説かなきゃいけないわけじゃないから」
「……」
呆れを通り越してこう諭されると、確かに落ち着くのだが何となく納得がいかない。
言い負かされた感じで悔しいのだ。
しかも馬鹿にされてるわけではないので何も言えないし。
ハルカは束の間微妙な顔になったが、すぐに彼女らしい笑顔に変わった。
「……ま、いいわ。それじゃシュウはわたし(の声)のことどう思ってるの?」
「……」
惜しげもないキラキラと輝いた笑顔(シュウ談)に見惚れ、
そして清々しいまでの直球な質問にシュウは思わず言葉に詰まった。
「……いや、僕そういうキャラじゃないから……」
訳の分からないことを言いつつ、その場からそそくさと逃げようとするシュウの腕を、ハルカは咄嗟に掴んだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ!せっかく久しぶりに会えたんだから、もうちょっとくらい……」
口をついて出た本音に今度はハルカが固まった。
素直に頬を染めてしまったハルカと彼女の先程の言葉を反芻してから漸く、シュウの方もハルカと同じ反応を返した。
一度意識してしまえば掴んだ腕を唐突に離すのも変に思えてきて、二人して仲良く固まっていると、
神様も見かねたのか幸いにも助け船が現れた。
「……アメモース……」
ふわりとシュウの頭の上に降り立ったアメモースのおかげで、石化状態から解放された二人は、
ごく自然というか当然のように話題を変えた。
「良かった、道が分かったのね、アメモース」
「近くに町か何かあったかい?」
そう、相変わらずシュウは自分の現在地を見失っていて、
ハルカはたまたまそれに巻き込まれてしまっていたのである。
二人の質問にアメモースは再び空中へと舞い上がると、先導するようにある方向に進み始めた。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
シュウがハルカに手を差し出し、ハルカはそれを握ってシュウの後に続く形で、
二人はゆっくりと歩きながらアメモースを追いかけ始めた。
後ろからの風に背中を押された。
少し考えた後、ハルカはシュウの背中に向かって呟いた。
「……わたしは、シュウの声好きよ」
同じく少しの沈黙の後、シュウはハルカに振り返り応えた。
「僕も好きだよ」
互いに微笑んで、今度は二人で並んで、次の町へと向かっていった。
というわけで、一度素直になればごくごく自然に手を繋げる程度には、
自覚無しであるものの仲が進んでいる二人だった。
完全に違うよね (グリレ)
「そしてよりにもよってオレ達か…」
「しかもしんがりか。緊張するな…」
「……えーと、オレどこからツッコむべき?」
一、しんがりは古い。
二、緊張って何やる気になってんの。
三、っていうかオレが言いたいのはそこじゃない。
以上三つの選択肢がレッドの頭に浮かんできたが、それを口にする前に、
何故か珍しくやる気満々になっているグリーンが口を開いた。
「そうだな、お前は○○○の時は×××で、□□したら◇◇するから、それなら△△△にしたら――」
「お前何言ってんのーっっ!!」
ある意味誰よりもストレートにレッドの声について語り始めたグリーンだが、
そこはそれ、放送禁止用語の連続発言に赤を通り越して真っ青になったレッドに、
全身全霊のエルボーをかまされ止められた。
流石に呻いているグリーンに、レッドはエルボーの勢いのまま捲し立てる。
「バカ!超バカ!お前よりにもよって……!
だ、大体オレが言いたいのはそういうことじゃねーんだよ!
このテーマでオレ達っていうこと自体おかしいだろ、どう考えたって!!」
先程は無意識というか勢いで強制終了させたものの、
次第に色々と照れやら羞恥やらドン引きやらで動揺しだしたレッドに、
お早い復活のグリーンが宥めに入った。
「……まあ落ち着け。それにオレは別に嘘は言ってないぞ」
「うっ、お前いつもあんなこと思ってたのかよ……オレもう恥ずかしくて死ねる」
どうやら羞恥が優ったらしい。
居たたまれなさに頭を抱えるレッドは今にもこの場から逃げ出してしまいそうだ。
それはグリーンとしても面白くないので、どうしたものかと考える。
「やっぱダメだ。オレもう帰――」
「よし、分かった」
ちなみにここはレッドの自宅であり、お前何処に帰るんだ、とか思わないでもなかったが、
レッドが本当に逃げ出しかけたので、グリーンはレッドの服を摘んで止めた。
「つまりオレが嘘を言っていないことを証明すればいいんだろう?」
服から手首へと掴み直して、更にグリーンはレッドを引き寄せようとする。
バランスを崩したが、グリーンの肩に手を置いて倒れるのを凌いだ。ただし、支えが悪かった。
肩に置いていた手まで掴まれ引き寄せられたレッドは、結局膝を付き、そのままグリーンに押し倒された。
「……これは、何のつもりですか、グリーンくん?」
予想がつかないでもないが、素直にその予想通りになりたいわけでもない。
むしろレッドは全くその気になっていない。
「だから、今から存分にお前の声を聞かせてやるということだ」
しかし生憎グリーンは完全にその気になっている。
「やー、どっちにしてもオレ達には声優さんいないからさー、無理じゃないかな?」
うっすらと冷や汗をかきながら、それでも説得(?)を試みるレッドに、グリーンは珍しくも微笑した。
珍しすぎるし、全然笑っているように見えていなかったことをレッドは後に振り返った。
「ぶっちゃけ、やらせろ」
「やっぱりそれかよ、チクショー!」
ちなみにこの後は案の定押し切ったグリーンが事に及ぶのだが、それは放送禁止なので暗転である。
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