初代拍手(2005.11.10〜2006.3.21)





魔法 (シゲサト)


 ソファに座って、本を読んでいると、隣でソファの上に寝転んでいるサトシが突然口を開いた。
「シゲルの手って、魔法みたいだな」
「……いきなり何だ?」
今の今までゲームに熱中していたのに、飽きたのか、とシゲルはサトシの方に目を向ける。
「ゲームに飽きたのか?」
「いや、すっげー面白い。こいつが魔法で仲間を助けたり、敵をやっつけたりしてくれるんだ。
もうドキドキする!」
サトシは画面をシゲルに見せ、興奮しながら画面のキャラクターを指差した。
相手をしないと怒り出すので、シゲルは画面に目をやった。
見た覚えのある映像だ。
少し考えて、シゲルはテレビCMで見かけたことを思い出した。
「ああ、あのRPGね。最近発売されたやつだっけ」
「あーるぴーじー? それって――」
「新しいポケモンじゃないよ。
ロール・プレイング・ゲームの略。
君が今やっているようなゲームのこと」
次に続こうとしたサトシのいつもの台詞を遮って、シゲルは説明してやった。
「へぇ、シゲルは物知りだな」
「そりゃあ、君よりはね」
感心するサトシに、そう返した。
半分嫌味で、半分本気だった。
サトシは少しむっとしたのか、口をとがらせた。
気にせず、シゲルは尋ねる。
「で、僕の手が魔法みたいだとか言っていた意味は?」
「あ、あれはな……」
損ねた機嫌はすぐに元に戻った。
サトシは言いながら、シゲルの腕を掴み、彼の手を自分の頬にぴたりと当てる。
サトシの突然の行動にシゲルは驚いた。
「お前がこんな風に、触ったり撫でてくれたりするとさ、
オレ、すっごいドキドキするんだ」
サトシはシゲルの手の上に、自分の手を重ねた。
「でも同じくらい、気持ちいいんだ。ほっとするんだよ」
サトシは照れながら、シゲルに笑いかけた。
「だから、魔法みたい」
「サトシ……」
こいつは、どうしてこう……
シゲルはサトシを優しく腕の中に包み込んだ。
「へへっ、あったかいな〜」
サトシも嬉しそうに抱き返す。
シゲルは照れ隠しに、からかった。
「……どこを触ったら、気持ちいいんだ?」
「色々だよ!」
そう言って、赤くなった顔を隠すために、サトシはシゲルの胸に顔を埋めたが、
シゲルはサトシの表情が見ることができた。
「魔法か……」
僕にとっては、君の存在そのものが魔法だ。
心の中でそう言って、しっかりとサトシを抱きしめた。













二代目拍手(2006.3.21〜2006.7.29)





気まぐれエンジェル (シゲサト)


「シゲル、シゲル」
自分を呼ぶ声が聞こえる。
それが知っている声だったので、眠気がひどかったが、重い瞼を開けた。
サトシがシゲルの上に覆い被さって、シゲルを見下ろしていた。
「……サトシ」
名前を呟くと、サトシがくすぐったそうに笑う。
顔を近付けて、まだ少し寝ぼけ気味のシゲルに、触れるだけのキスをした。
無意識にシゲルは腕をサトシの背に回した。
まだ残る眠気と、自分の頬に触れてくるサトシの手が心地よい。
再び目を閉じて、ぼんやりとそう思っていると、サトシがもう一度キスをしてきた。
 不意に、あまりにも幸せなので、もしかしたら夢かもしれないと思ってきた。
閉じた瞼を開けば、変わらずサトシは微笑んでいて、シゲルを見下ろしている。
良かった、夢じゃない、と安心しかけたが、
逆にふと思い立って眠気が吹っ飛んだ。
どうしてサトシがこんなことしているんだ!?
「サトシ!?」
慌てて起きあがったので、シゲルはサトシを上にのせたような形になる。
普段なら嬉しいが、それはひとまず置いておく。
「君、何しているんだ?」
「何って……」
言いかけて、その先を言うのが恥ずかしいらしく、ぽっと頬を赤らめる。
「そういうこと、言わせるなよ」
赤い顔を隠すように、シゲルの胸に顔を埋める。
「……なんで、そんなに積極的なんだ?」
「たまにはいいだろ!」
そうなのだ。たまにこんなのが来ると、確かに嬉しい。
だが、同時に押されると引いてしまうのが、悲しいながら自分の性なのだ。
 落ち着け、自分、と言いながら、シゲルはサトシの肩を掴んで、自分の胸に埋めたサトシの顔を離させ、覗き込んだ。
「嬉しいよ、本当に嬉しいんだけど……」
だけどな、サトシ、と続けようとした時、
サトシが上目遣いでシゲルを見上げ、また抱きついてきた。
シゲルの心臓が高鳴った。
「嬉しいなら、良かった」
「サ、サトシ…!」
どうしたんだ、サトシ!?と疑問はつきないが、
サトシの行動に思考が飛んでいった。
寝起きだし、誘ってきたのはサトシだし、もうこのまま流されればいいか。
 理性と理論を捨て、感情に従うことにした。
抱きついているサトシの背に腕を回すと、サトシはもう一度シゲルを見上げ、頬を染めたまま微笑んだ。
どれだけ可愛いんだ、こいつは。
と心の中で言って、シゲルはサトシに顔を近付けていく。
サトシも目を閉じる。  だが、互いの唇が触れあう、ほんの数センチ前のところで、サトシは唐突に閉じた目を開いた。
そして、さっきとは別の意味で頬が真っ赤になる。
サトシの変化にシゲルが僅かに眉を寄せた。
「うわーーっっ!!」
どうしたのかと、呼びかけようかと思った瞬間、
叫び声と同時に勢いに任せたサトシの拳が飛んできた。
叫びたいのはこっちだ、と思いながらすんでのところで、それをかわす。
正直、彼のパンチは結構強力だ。
「何するんだ、シゲルのバカー!」
それはこっちのセリフだ、と言い返す前に、
回されたシゲルの腕を振り解き、サトシは脱兎のごとく走り去ってしまった。
シゲルは唖然としたまま、それを見送った。
「……」
サトシ、一体何がやりたかったんだ?
そして何でこんなことになったんだ?
僕が何をした?
サトシの行動の意味も、そして今の状況も理解できないまま、
シゲルはしばらくの間、呆然としていた。


後に、マサトのいたずらで、サトシは催眠術をかけられたことが判明したとか、していないとか。

























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懐かしすぎて恥ずかしすぎてもう見られない…;