ポケ風邪ネタ
病は気から (グリレ)
「鬼の攪乱ってこういうことかな?」
「一言目に言う台詞がそれか?」
部屋に入って来た途端の言葉に、グリーンも負けじと言い返すが、咳き込み、あまり勢いも迫力も無かった。
「おいおい、無理するなよ。風邪引いてんだろ?」
「無理させてんのはどこのどいつだ」
つまらないコントは続くが、それを終わらせたのは、レッドだ。
「何か食う?色々買ってきたぜ〜」
「お前がいい」
「アホなこと言うな。病人は大人しく寝てろ、バカ」
アホとバカ呼ばわりだ。
病人に対して容赦なく言い放ち、レッドは半分起きかけたグリーンを無理矢理ベッドに押さえつけた。
「お前、それが病人に――」
グリーンの反論もまともに言わせてもらえない。
「風邪にはハチミツがいいんだよなぁ〜あとタマゴやショウガやニンニクかな」
「……」
「玉子酒でも作るかな」
待て、まさかそれ全部入れる気じゃないよな。
「レッ――」
呼び止めようと声を出したと同時に、バタンとドアを閉められた。
「ほら、出来たぜ」
カップに注がれ湯気を立てる白濁した液体をまじまじと覗き込み、幾分不安そうにグリーンはレッドを見上げた。
「レッド流スペシャル玉子酒。栄養満点だぜ」
自信に溢れた笑顔を返され、ますます不安になる。
「念のため聞くが、まさかさっき言っていたやつ、全部入れたのか?」
「…企業秘密」
視線を逸らすということは、つまりそういうことなのだろう。
「飲めるのか?」
本人としては、なるべく優しい言葉で伝えるつもりなのだが、グリーンは言葉を飾るようなことはあまりしないというか、向いていない。
結果、レッドに対して失礼な聞き方になったのだが、そこはそれ、いつものことなので、レッドも怒らない。
でもレッドも言うことは言う。
「味オンチに言われたかねーよ。いいから飲め」
グリーンは味に鈍感だ(過去に公式で言われていましたので)。
カップを押し付けられ、三度目の不安な視線を今度はカップに向けた後、
観念して、ほんのりニンニクの香り漂うレッド流スペシャル玉子酒を口に含んだ。
「…………う、美味い…」
その直前の間が気にならないこともないけど、と前置きしてから、レッドはえへんと胸をそらした。
「オレの腕を甘く見るなよ。伊達に何年も家事やってねーんだぜ?」
「すまん、ムチャクチャ甘く見てた」
「素直なだけに腹立つな、お前…」
先程の躊躇いはどうしたのか、勢いよくグリーンは玉子酒を飲み干していく。
レッドはそれを眺めながら、まあ、いいや、と満足そうに笑い、
お代わりあるからな、と声を掛けた。
呼吸とは吸って吐くもの (シゲサト)
「なーんか、風邪引いたみたいなんだよなぁ…」
サトシが机に向かうシゲルに話しかけると、シゲルが回転式の椅子を回してこちらを向いた。
「だったら、診察してあげようか?」
机の引き出しを開き、中から何故か聴診器を取り出した。
「何でそんなもん持ってんだ…!?」
「まあ、気にしない、気にしない」
次に先程明けた引き出しの下の引き出しから、ペンライトを取り出した。
「はい、口開けて」
あーん、という台詞が続きそうな程自然な流れに、サトシはつい素直に口を開いた。
「あー、少し腫れてるねぇ…」
「うん、喉は痛いし、咳も出るし…」
「鼻は?」
「噛みすぎで痛い」
ご丁寧に症状を机の上の紙に書留め、シゲルは再びサトシの方を向いた。
「じゃあ、聴診器当てるから」
「……それは脱げってことか?」
「いや、脱がなきゃ音が聞こえないし」
彼の言葉に、サトシは不審そうにシゲルを見つめた。
「……変なこと考えてないよな?」
「…変なことって?」
シゲルが聞き返すと、サトシは少し頬を赤く染めた後、非難めいた顔でシゲルを睨んできた。
「や、やらしいことだよ!」
そして、勇気(サトシにとっては)を出して、そう言った。
「別にそれは考えてないよ」
しかしシゲルにそう即答され、拍子抜けした。
呆けた顔をしたサトシに、シゲルがくすりと笑った。
「して欲しいならするけど?」
「欲しくないよ!」
「じゃあしないから、早く脱いで」
「……」
あっさりそう言われると、何故か腑に落ちない気がする。
いや、して欲しいわけでは決してないけど、引かれると押したくなるというか…
いやいや、押したくはないんだよ。
そういう思いを頭の中でぐるぐるさせながら、サトシは服を捲り上げた。
「ほら、これでいいんだろ」
「ではでは」
聴診器が胸に当てられる。
ひやっとした感触に一瞬びくりとすると、シゲルから声がかかった。
「大きく息吸って」
言われた通りにサトシは大きく息を吸う。めいっぱい吸う。
何で息吸うんだろう、とサトシは思うのだが、
シゲルは真面目に診察している、ようだ。
「もう一度深呼吸して」
やっぱり言われた通りに、大きく息を吸い、吸った分だけお腹は膨らみ…
「?」
……あれ?
「もう一回大きく深呼吸して」
「シ、シゲル…!」
サトシが焦った様子でシゲルに声をかけた。
シゲルは不思議そうに微かに首を傾げた。
「どうしたんだ?」
シゲルがそう尋ねる間に、サトシは大きく息を吐き、そして尋ねた。
「いつ息を吐けばいいんだ?」
暫くの間の後、シゲルに笑われた。