ウサギとカメ


 ヨサファのカメ・タケシ。
生まれて僅か15年の若ガメに過ぎないが、
その落ち着きぶりは同年代の仲間と格段に差がある。
更に、世話焼きで、気配りも抜群なところは、
種族を越えて他の生物達にも慕われている。
 そんなタケシがサトシと初めて出会ったのは、
タケシの生まれ故郷であるニビ池だった。




 日光浴のため、石の上でのんびりとしていると、
一匹の白い子ウサギが池のほとりで、無心に水面を見つめていた。
「……」
タケシが嫌な予感を覚えたのと同時に、
案の定、子ウサギはポチャリと音を立て、池に頭から落ちた。
「…!?」
何で頭から!?
そう思ったが、思うと同時にタケシは水の中に飛び込んでいた。
日光浴は十分にしていたので、身体もよく動いた。
手足をバタつかせながらも沈んでいく子ウサギの下に回って受け止め、
自分の甲羅の上に乗っけてからタケシは水面に浮上した。
ケホケホと咽せている音を背後に聞きながら、
タケシは岸まで辿り着き、子ウサギを下ろした。
「大丈夫か?」
子ウサギはプルプルと身体を振って水気を払う。
しかし、
「みみとれない……」
悲しそうに言うその言葉の意味は、たぶん、
その大きな耳の中に入り込んだ水が取れない、
ということなのだろう。
タケシは一瞬躊躇ったが、岸に上がって、例の煙を出して人間に姿を変えた。
「……!」
ぽかんとしている子ウサギの頭を撫でて、
大丈夫だから、と言ってやってから、
タケシは子ウサギをひっくり返して膝の上に乗せ、
耳の中を着物で拭いてやった。
変身後に何故か着ている服だから、濡れていないのだ。
何て便利なヨサファの服!
「……」
耳の中がスッキリとした子ウサギは、その耳をピンと立て、じっとタケシを見つめる。
「怪しい者じゃあない、よ?」
その真っ直ぐすぎる視線にたじろぎながら、タケシは子ウサギにそう言うが、
心の中では説得力ないなぁ、とか思っていた。
 種によって差はあるが、ヨサファは同種にとっても勿論変わった存在であるので、
一線をおかれるのは珍しいことではない。
だから、ヨサファはむやみやたらに変身したりはしない。
その生涯を通して、同族に自分がヨサファということを知られなかったヨサファだっている。
第一、同種の間で変身したって、あまり意味がないのだ。
そしてタケシも極力変身を避けるようにするタイプだった。
「……ビックリ、した?」
「……よさふぁ?」
まだまだ発音が幼い言葉遣いが何とも愛らしい。
「…そうだよ」
こんな小さいウサギがヨサファという言葉を知っていたことが驚きだったが、
タケシは頷いた。
それを見て、子ウサギがぱっと目を輝かせた。
「おなじおなじ!」
「え?」
タケシの膝の上でピョンピョンと飛び跳ねた後、
子ウサギは目を閉じてうーんと唸った。
特有の煙が上がり、次の瞬間には膝の上に男の子が乗っているので、
タケシは仰天した。
「ね、おなじ!」
敢えて言うならば、
男の子は耳もしっぽも、
ついでに手足の先っちょもウサギのままなので、
変身の出来は同じではない。
しかし無邪気に同じヨサファに会えたことを喜ぶ男の子もとい子ウサギを見ていると、
わざわざ上げ足を取ることでもなかった。
 後でウサギに何をしていたのかと尋ねると、
どんぐりが転がって池に落ちたから、
追いかけて見てたら自分も落ちたということだった。
たぶん耳の分だけ頭が重いから。
何でウサギにどんぐりなんだろう、とタケシは今でもしみじみと思う。




これがタケシとサトシの出会いだった。

























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タケシは良い父母上だよね…
流石保護者(笑)

タケシがカメなのは、
元々アニマルセレクトはポスペからでしたので…;