頂きました


「…それで……?」
真っ赤になったタケシに首を傾げつつ、サトシは続けた。
 サトシの辞書には、隠し事とか内緒とかいう文字は、一応あるけど意味はあまりない。
ただし、ハナコママには言えないが。
ほら、母子だからこそ言えないことってあるじゃん。
「てっきり食べられると思ってたからさー、
目が覚めたときはビックリしたぜ」




 うー、体が重い。だるい。
寝ていたいけど、それもしんどい。
億劫そうにサトシは目を開けた。
「おはよう」
まず最初にサトシを覗き込んでいる深海の色と深緑の瞳が目に入る。
深いのに、どちらも吸い込まれそうに透き通っていて、
サトシもぼんやりとそれを見つめ返した。
「…綺麗な色だなぁ……」
「それはどうも」
両の瞳を細め、シゲルは微笑した。
「……あれぇ?」
段々と頭がはっきりとしてきて、気絶する前のことも思い出してきた。
オレ、食われたよな?
「何でシゲルがここにいるんだ?」
「覚えてないのか?」
シゲルが小首を傾げる。
「だって、オレ、食われたんだろ?
ならここは、三途の川なんじゃ…」
「三途の川なんて、よく知ってるねぇ」
「……とにかく!」
サトシは勢いよく起き上がった。
何か体がちょっとおかしいけど、まあ大丈夫だ。
シゲルは状況の読めないサトシに、笑いをこらえながら説明してやる。
「安心しろよ、ここは三途の川じゃない。
君が気絶する前の場所と変わっていないから」
「ええ?
だってオレ、食われたんじゃ…」
「そうだねぇ、確かに頂きました」
「???」
「…確かに頂いたんだけど、君のいう食べるとはまた違うってことだよ」
「どう違うんだ?」
「……」
説明してやってもいいけど、その後の反応も楽しそうだけど、
何か面倒だな。
「…君さ、さっきのこと覚えてる?」
「覚えてるぜ。なんか触られて舐められた。色々と」
「うん、それで?」
「それでって、その後お前が……」

ゴニョゴニョゴニョ。

あからさまに言われちゃった。
「………………そうですね」
流石に真顔で言われると気恥ずかしい、
というか、サトシはどうしてそんな何事もなかったように言えるんだろう。
自分がやらかしたくせに、シゲルはふとそんな疑問が生じた。
「…えーと、僕が言うのも今更なんだけど……」
「うん?」
はだけたというか、もうほとんど脱げている着物を着直しながら、
サトシはシゲルの方に注意を向けた。
「嫌じゃなかったのか?」
「何で?」
サトシは首を傾げる。
「何でって…痛くなかった?」
「別に。変な気分にはなったけど」
「…………そうですか」
嫌がらなかったし、
パニックになってたけど、気持ちよさそうだったし、
相性は悪くないなぁ、
とシゲルはぼんやり思う。
 少し調子に乗ってみよう。
「……なら、またしてもいい?」
「今日以外だったら構わないぜ」
え、何でそんなにあっさりしてるの。そういうものなの!?
自分で言っておきながら唖然としているシゲルを、
サトシは首を傾げながら、不思議そうに見つめていた。




 ちなみに、その後で「食べる」の意味を教えろとしつこいので、
さっきしたことだと言い捨てたら、
サトシは、ホントに食べられなくて良かった、と安堵した。
食べているときの反応を見る限り、
絶対慣れているはずはないのに、
変だなぁ、
とシゲルはつくづく思うのだった。








「……」
タケシは言葉もない。
「あ、タケシ、オレもう行かなきゃ。
シゲルと約束してるんだ」
「……そうか」
ウサギとネコなのに、
いきなり食われたのに。
感心すべきか呆れるべきか、
タケシは鼻歌交じりでウキウキと楽しそうなサトシを見つめる。
「……くれぐれも、罠には気をつけるんだぞ」
色々様々な意味を含めて、タケシはそう言ってやるしかできなかった。

























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こうして二匹は付き合い出すのです。