頂きます


 ここは罠が近いし、人間にも見つかりやすい、ということで、
シゲルはサトシを連れ、別の繁みに移動した。
サトシはおとなしくついてくる。
腕を掴んでいるせいもあるだろうが、
途中で逃げ出すとちょっと思っていたのに、そんな様子は微塵もない。
本当に変わったウサギだ。
興味がわいてくると、食欲もでてくるものだ。
自分にしては珍しく、ちょっとウキウキしている。
 そういえば、確か、人間のことわざに、
据え膳、食わぬは男の何とやら、
とかいうのがあったな、とシゲルはふと思った。
まさに今にぴったりだ。
ん?ことわざだったか?
「……まあ、いいか」
「…な、何がいいんだ?」
シゲルの呟きに、サトシは恐る恐る尋ねてきた。
シゲルは後ろのサトシに目を向ける。
「据え膳って知ってる?」
期待しないで聞いてみると、案の定サトシは首を振る。
「……知らない」
「人間の言葉だけどね、
食べる人の目の前に、食べ物が置いてある状態のことだよ」
「……」
つまりは今みたいな状態なのか、とサトシは理解して、何だか虚しくなった。
動物本能は逃げろ逃げろと訴えてくるけど、お礼が……
それに、目の前のこのネコは、
最初に会った時から、野生のキツネとか、タカとかと違って、
嫌味な奴だけど、何ていうか、嫌な感じはしなかった。
助けを求めたのは、そのせいもある。
まあ、結局オレ、今から食べられちゃうんだけど。
ちくしょう、こんなことなら昨日のおやつ、
とっておいたりしないで、食べてりゃ良かった。
一番おいしいとこ、残してたのに。
「ここならいいかな」
シゲルの声にはっとなり、足を止めようとするが間に合わず、サトシはシゲルの背中にぶつかった。
柔らかい生地の着物なので、痛くはなかった。
「何してるんだ、君は……」
「……何でも」
ぶっきらぼうに答えるサトシにシゲルは苦笑する。
まあ、今から食べられるのだから、愛想を出しても仕方がないか。
 繁みに、サトシを座らせ、自分も向かい合って座る。
サトシの顔を見れば、瞳が不安に揺れている。
「……戻った方がいい?」
サトシの質問に少し考えた後、シゲルは首を振る。
「…いや、そのままでいい」
手を伸ばして、シゲルはサトシの頬に優しく触れ、撫でる。
髪を梳いて、一房に唇を落とす。
シゲルの行動一つ一つを、サトシは落ち着かない様子で見ている。
いつガブリといかれるのか、
なるべく痛くないといいな、
とそれだけ願う。
「……痛くしないから」
見透かした様子で、シゲルはサトシに声をかける。
サトシは不安を拭えぬまま、シゲルの言葉に頷いた。
 指を、絡めていた髪から離して、シゲルはサトシの首筋に顔を寄せてきた。
食われる……!
サトシはぎゅっと目を閉じる。
ゴメンなさい、ママ。
オレがいなくなっても、元気でいてね。
それにしても、オレの人生、じゃなくてウサギ生、
まさかここで終わるとは思わなかった。
誰にもお別れ言ってないし、
まあ、成り行き上、言える訳ないんだけど。
「ひゃあ!」
首筋を舐められたので、思わず声を出すと、
シゲルがサトシの顔を覗き、苦笑した。
「……色気ないなぁ……」
「……い、色気って……」
食べられるというのに、何で色気出さなきゃいけないんだ。
「まあ、いいよ。
どうせそのうち出てくるだろうから」
「……」
なんで?
と疑問が生じるのと同時に、シゲルの手がサトシの着物にかかる。
脱がせようとするが、大きな帯がそれを邪魔した。
 焦らされるな、と思いながら、シゲルはサトシの背中に手を回し、帯の結び目を解いた。
腰から胸の下までもある大きな帯を弛めながら、ゆっくりと外していく。
解けた帯に引かれ、着物がはだけ始め、肩が外気に晒された。
腹の辺りが楽になって、サトシは無意識に身体の力を抜いた。
 妖しく微笑して、シゲルは色の違う両の瞳でサトシを見据えた。
それがサトシを捉え、サトシの思考が停止する。
シゲルはサトシに顔を近付けていき、その唇に、自分の唇をそっと重ねた。




え、なんかおかしくない?
食べるんだろ?
食べるって言ったよな?


「…えーと、味見?」


味見なの!?
味見にしては、何か変だろ!?


「変じゃない、変じゃない」


いや、変だって。
ていうか、変なトコ触ってるって!


「もう君、黙っててくれ」


何か変だって、
あれ、むしろオレが変…
なんだ、これ、訳わかんねぇ。


……とりあえずさ、もう耳は触んないで、舐めないで。

耳は、弱いんです。

























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食われちゃった(笑)
そんなシーン期待した方、ゴメンなさい…;

サトシの着物はチマ・チョゴリっぽいもので、
シゲルは普通に上衣と袴な感じで。

なんでアニマルが服着てるかなんて、
気にしちゃあ、ダメだよ;
パラレルだからね。

さて、次はどうしようか……