再会


 数日が過ぎた。
あれから何度かマサラ山には行ったのだが、あの賑やかなウサギには会わなかった。
あのウサギに会うためではなく、マサラ山が散歩のコースに入っているのだ。
たとえ、柵の外から忍び込まなくては行けない保護区であっても、散歩のコースだから、仕方がない。
別にあのウサギが気になっているからではない。
シゲルは自分をそう納得させながら、今日もマサラ山を訪れた。
 いつものように、秘密の抜け道を通り抜け、山を登っていく。
奥まで入り込んで、散歩のコースを進む。
終点は間抜けなウサギが罠に引っかかっていたあの場所だ。
辿り着き、辺りを見渡してみるが、近くに動物の気配はない。
もちろん人間の気配も、人間っぽい気配もない。
少し落胆しつつ、そろそろ帰って、昼寝でもしようかと思い、
踵を返しかけたその時、背後の繁みの先から物音がした。
 耳をピンと立て、音の聞こえる方向に、こちらは音もなく近寄っていく。
幸い今はネコの姿なので、静かに近付けるのだ。
別に期待しているわけじゃない、そう自分に言い聞かせながら、
シゲルは繁みに隠れて、その先を期待を込めて覗き込んだ。
「……」
呆れた。あの間抜けは、また。
別のウサギではない。
間違えるはずはない。
シゲルは繁みを抜け、二度も罠にかかっている、シゲル曰く間抜けなウサギに近づいた。
「ホントに間抜けだな、君は」
「!?」
いきなり現れ、話しかけてきたネコに一瞬驚くが、
左右で異なる目の色を確認して、サトシは、顔を綻ばせた。
「シゲル!久しぶりだな!!」
「そんなことどうでもいいよ。
何で二度も罠に引っかかるんだ、それも前の罠とほとんど離れていない場所で」
シゲルの言葉にサトシはむっとなる。
「仕方がないだろ、考え事してたんだから」
「その油断が命取りになるんだ」
反論もとい言い訳にそう言い捨て、シゲルはサトシの隣にしゃがみ込んだ。
「……まったく……」
おなじみの煙の後に、もう一つの姿が現れる。
もちろん、ネコの足では縄は解けないからだ。
姿の変わったシゲルは、五本指で事も無げに縄を解いた。
「サンキュー!」
サトシは立ち上がると、以前と同じように周りをぴょんぴょん跳び回る。
あれが喜びの表現なのだろうか。
別にどうでもいいが。
 ひとしきり跳び回って気が済んだのか、サトシは再びシゲルのところに戻ってきた。
シゲルはサトシを見下ろして、話しかけた。
「とりあえず、姿変えてくれる?」
「何で?」
首を傾げて、サトシは尋ねた。
シゲルは答える。
「見下ろすと疲れるから」
「……」
何か引っかかるが、それは気にしないことにする。
それよりも、問題はシゲルの注文だ。
「……オレ、変身苦手なんだけど……」
ついでに言えば、
シゲルがネコの姿になれば問題ないんじゃないかな、とも思ったが、
一応、恩人からの注文だ、聞き入れた方がいいだろう、
と思い直し、サトシは目を閉じた。
煙を立て、人間の姿が現れる。
今回もばっちり大きな耳がついている。
「……ホントに下手なんだね……」
「……」
そうですよ、悪うございましたね!
口を尖らせて、サトシはそっぽを向いた。
そんなサトシにシゲルは声をかける。
「怒るなよ。今度コツでも教えてあげようか?」
「ホントか!?」
先程の怒りはどこ吹く風か、サトシは目をキラキラと輝かせ、シゲルに向き直った。
感情の変化の激しいサトシに、シゲルは苦笑するしかない。
しかし、ネコの自分に全く物怖じすることなく話しかけてくるとは、
なかなか度胸のあるというべきか、
それとも……
たぶん後者だと思う。

























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キリが悪いところで;
はてさてどこまで続くのか、と言いつつ、
実はまだ、まともに始まってすらいない……;