アニマルな彼ら





出会い


 こういうことは日常茶飯事。
食うか食われるかは、世界の常。
嘆いても変わらぬこの世の理だが、
ああ、嘆かずにはいられない。
緑深きマサラ山で、一匹のウサギがそんな世の無常と向き合っていた。
 森の繁みに身を隠し、彼は何とかして、左後足に食い込む縄から逃れようと試みる。
引っ張ってみたり、捩ってみたり、とにかく思いつく限りのことはやってみた。
しかし、非情にも足に絡みついている、この縄はほどけてくれない。
「……ダメだ、どうしよう……」
マサラ山は、保護区域とかいう所だから、人間は誰も自分たちを捕まえたりしないからね。
じゃあ、これは何ですか?
誰にともなく尋ねてみるが、その答えも、彼はすでに教えてもらっている。
自分たちを捕まえることを禁じた場所で、それでも捕まえようとする輩を、人も自分たちも密猟者と呼ぶ。
人間が呼んでいたのを覚えただけだが。
この罠を仕掛けた奴らの正体は、たぶんこいつらだな、と彼は思った。
自分たちを捕まえたりしないけど、密猟者は別だから、気をつけるように。
いつも念を押されていたというのに、何という様だろう。
捕まったら、食べられちゃうのかな、
と不安がよぎって、慌ててぷるぷると首を振った。
首の動きに合わせて、白く長い耳が一緒に揺れる。
「……しょうがない……」
最後の手段を使うことに決め、彼は目を閉じた。
ぽふんと彼の周りで煙が立って、
煙が晴れれば、ウサギの姿はどこにもなく、
そこにいるのは、ウサギの耳を生やした、一見人間の少年らしきもの。
ついでに言えば、座っているので今は隠れて見えないが、しっぽだってある。
「……完璧じゃないけど、まあいいや」
五本の指の生えた手に変わった前足を軽く振った後、
その手を使って彼は再び縄をほどこうと挑戦し始めた。
なるほど、ウサギの足よりは確かに手応えあり。




 多種多様な生物の中で、非常に少なくはあるが一定の確率で、
他の生物そっくりに姿を変えられる能力を持つ、個体が生まれる。
変化する対象は主に人間であるためか、
人間は彼らを総称してヨンサン・ファーティコ、通称ヨサファと呼ぶ。
一説では、民間伝承に数多く登場する、人に化ける動物というのは、このヨサファだとも言われている。
彼らはどうして、姿を変えられるのか。
異種の遺伝子が混ざったとか、
単なる突然変異であるとか、
謎の組織に改造されたとか、
議論は尽きないが、如何せん、その研究対象の能力のおかげで、
捕獲がかなり困難であるため、彼らについての研究は遅々として進んでいない。




 そんな希少な存在、ヨサファがこんなところで罠にかかっているのだから、
人間としては願ってもない幸運だろう。
しかし、彼本人にしてみれば、そんな事情など全く関係のないことである。
人間に捕まる気は全くないし、また、そんなことをしている時間もない。
彼は大切な用事の途中だったのだ。
「あー、もう取れない!こんな時に!」
人間の手に変わって、しっかりと縄を掴めるようにはなったのだが、
それでも彼にはこの縄を解けなかった。
加えて、その焦りがますます状況を悪くする。悪循環だ。
 うーんと唸りながら、それでも諦めずに縄と格闘していると、
不意に近くの繁みがガサリと音をたてた。
思わず彼はビクつく。
続けて、その音は彼の方へと近づいてくる。
彼との距離が縮まっていくにつれて、彼の動悸は速くなる。
そして、繁みをかき分け、彼の前に、人間の少年が現れた。
 姿を変えた自分と、さして年の変わらないであろう年頃の少年だった。
茶色がかった髪の色に整った顔立ち、
片方は深い海の色、もう片方は深緑の、左右の色が違う瞳は、
人の目、この場合は彼の目を引きつける。
「……」
彼は微かに不安を浮かべた表情で、少年を見上げた。
密猟者はこの少年なのだろうか。
一体自分をどうする気なのだろうか。
「……」
少年もまた、静かに彼を見下ろしていたが、息を吐くように、口を開いた。
「……ヨサファのなりそこないか?」
初めての言葉にしては、随分と失礼なんじゃないか。
そりゃあ、完璧に姿を変えられなかったのは確かだけど。
でも苦手なものは苦手なんだ。
彼は少し機嫌を損ねた。
「……どうせオレはヘタだよ、密猟者」
半分開き直りだ。
だが、彼の言葉に少年は、心外とばかりに軽く目を瞠る。
「勘違いしないでくれ、僕は密猟者じゃない」
「じゃあ、どこの誰だよ、人間」
訂正してやると、今度は鼻で笑われた。
何だか癪に障る奴だな、と彼は思った。
少年は肩を竦めると、片手を上げ、自分の側頭部を人差し指で軽く突っついた。
「君に倣うなら、こんな感じかい?」
「!?」
今度は彼が目を瞠った。
ヨサファが姿を変える際の、特有の煙が頭部にだけ小さく上がり、
煙の中から姿を見せたのは、
青灰色の三角耳だった。

























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やっちゃった感の強い、動物もの……;
ど、どうでしょうか……?ダ、ダメ……?
これでもシゲサトと言い張ってみる(苦笑)。
どっちがどっちかは、第2話で……
たぶん分かるだろうけど……分かるよね?
分からない人は「なりきり質問」13番目を見よう!(笑)
何が楽しいかって、私が一番楽しい。
そんなものなんです……
成り行き任せなので、どこまで続くかは考え中……