「……ジェラシーだよ」
「ジェラシー?
……誰に?」
ジェラシーという言葉を知っていたサトシに、シゲルは失礼とは思ったが少々驚いた。
が、それは置いておき、素直に答えた。
「そのシュウって奴にだよ」
「……何で?」
「……君、ジェラシーの意味本当に分かってる?」
「うん。前にタケシが教えてくれた」
「……」
色々言いたいこともあったが、サトシの台詞から推測するに、
サトシ自身は肯定しているが、よく理解していないことは明らかである。
この鈍感にどのようにしてわかりやすく説明しようかとシゲルは思案をめぐらす。
「サトシ、僕たち付き合ってるよな?」
「……うん、そうだな」
サトシが少し頬を染めながらも頷いた。
「僕が女の子たちと楽しそうに話してたら、君、どう思う?」
「……前はよくしてたな」
「……今はしてないだろ。いいから質問に答えてくれ」
話がまた違う方向に行きそうなので、
開き直って、シゲルはサトシに催促した。
サトシはちょっと考え込む。
そして、俯き、小さく呟いた。
「……ちょっとイヤ……かも」
とりあえず、サトシもそれなりにヤキモチは焼いてくれるらしい、
とシゲルは内心本気でほっとした。
「……それと同じことなんだけどね」
どうしてここまで自分の感情を、しかもわかりやすく説明してやらなくてはならないのだろう、
とシゲルはなんだか情けなくなってきた。
「……」
サトシはどうやらまた考え込んでいるらしく、沈黙したままだ。
 少しの間サトシの様子をうかがっていたが、変化がないので、
とりあえず、いいかげん服を着ようと、シゲルは起きあがり、横に置いていた服に手を伸ばした。
 シゲルが服を着終わり、サトシにも渡そうと彼の服にも手を伸ばしたところで、
ようやくサトシはシゲルを見上げて、口を開いた。
「……そうか、それでいきなり機嫌が悪くなったんだな」
「……まあね」
サトシから改めて言われ、少し決まり悪そうに答えながら、シゲルは服を彼に渡した。
サトシも起きあがり、服を着る。
 着終わってから、サトシはシゲルのすぐそばに近づき、抱きついた。
「サトシ?」
驚くシゲルの頭を、サトシはぐしゃぐしゃと撫でて言った。
「バカだな、オレが好きなのはシゲルだって。
そんなこと、お前も分かってるだろ?」
「……」
シゲルは目を見開いた。
少し頬を赤くして、しかし何も言わずにサトシを見つめる。
サトシは続けた。
「……確かにシュウのことは好きだけど、お前に対する気持ちとは、違うんだから」
そこまで言った後、不意にサトシはうつむいたが、すぐに顔を上げた。
その頬は真っ赤に染まっていた。
「シゲルのこと好きだって気持ちは、特別なんだからな!」
そう言って、赤くなった顔を隠すように、サトシはシゲルの胸に顔を埋めた。
「サトシ……」
素直なサトシの告白が、シゲルには嬉しくて、サトシを強く抱きしめた。
サトシが愛しくて愛しくてたまらなかった。








 しばらくサトシを抱きしめていると、
突然サトシがシゲルの腕の中で暴れ出したので、シゲルは抱きしめる力を弱めた。
するとサトシは首をぶんぶんと横に振りながら、顔を赤くしたまま、早口で叫びだした。
「あー、もう!なんでこんなに恥ずかしくなんなきゃいけないんだよ!!
だいたいシュウのこと話したのだって、シュウの話し方とか性格とかがシゲルに似てたってことを
言いたかっただけで、シュウと話してたら、シゲルと一緒にいる気がするからなんだよ!
そりゃシュウには悪いとは思うけど、シゲルとなかなか会えないんだから、
少しぐらいそんなこと思ったっていいだろ!!
シゲルのバカ!!」
「……」
呆気にとられながら、
そういえば、サトシは感情が高ぶりすぎた時、
特に恥ずかしさが限界を超えた時は、
一気に思っていることを言ってしまうということをシゲルは思い出した。
そして、最後はいつもシゲルへの悪口で終わるのだ。
まあ、それはサトシが何か失敗をしたのをシゲルがよくからかっていたからなのだが。
「相変わらずだね、君は……」
懐かしさを覚え、シゲルはそう呟いた。
「もういい、疲れた」
一気に自分の思いを吐き出して、少しは落ち着いたらしく、
サトシは大きく息を吐いてから、またシゲルの胸に顔を埋めた。
相変わらず、サトシは変わってない。
心身共に当然成長はしているが、
本質的なところは、昔のままだ。
それが嬉しかった。
なかなか会えなくて、寂しいのはシゲルとて同じで、
それよりも大きいのは不安だった。
違う道を歩み出した自分たちには、埋められない溝があって、
一緒にいない時間が増えるほどに、その溝が深まっていく気がした。
そしていつか、サトシの心が遠くに行ってしまって、
自分をもう必要としない日が来るのではないかと、
それがとても怖かったのだ。
だが、
「……よかった」
そう呟いて、シゲルは腕の中のサトシの頭を優しく撫でた。
「え?」
シゲルの呟きが聞こえたらしく、サトシは顔を上げた。
シゲルはサトシに微笑みかけた。
「ごめんな、サトシ」
「……」
謝られる理由が分からず、サトシは不思議そうにシゲルを見つめる。
そんなサトシに触れるだけのキスをして、
微笑んだまま言った。


「僕も愛してるよ、サトシ」















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恥ずかしいバカップル……