袋小路の





 はっきりとは覚えていないが、マサラタウンを旅立つ前だった。
二人とも、10歳の誕生日をいよいよ迎えようとしていた時期。
シゲルはいつものように、サトシをからかい、いつものように、サトシは怒った。
そして勝負しろ、と言ってきた。
シゲルは涼しい顔のまま言い返した。
「僕と勝負?
結果が分かり切っているのに、どうして勝負しなくちゃならないんだい?
どうせ僕が勝つに決まっているだろ」
「うるさい!
そんなの、やってみなくちゃわかんないだろ!」
サトシが勝負勝負とうるさく騒ぐ。
シゲルは、それをしばらく見ていたが、
「そこまでいうなら、やってあげてもいいよ」
そう言った。
いつもは無視してどこかに行ってしまうので、サトシは驚いた。
だが、サトシが驚いている間に、シゲルは付け加えた。
「その代わり、僕が勝ったら、
君に何でも言うこと聞いてもらうからね」
「え、何でもって……」
サトシが少々戸惑った様子でシゲルを見る。
だが、
「なんだ、負けるのが怖いのかい、サートシ君?」
シゲルの挑発に、簡単に乗ってしまう。
「ふざけんな!
怖いわけないだろ、やってやるさ!
その代わり、シゲルも、負けたらオレの言うこと何でも聞くんだからな!」
シゲルは鼻で笑った。
「それは絶対にありえないさ」




 あっけなく勝負はついた。
もちろん、結果はサトシの負けであった。
「くっそー……」
「ほーら、あり得なかった」
「うるさい!」
くやしくて、余裕綽々の様子のシゲルを直視できなかった。
どうして、いつも勝てないんだろう。
「さて、まともな勝負にもならなかったけれど、
きちんと約束は守ってくれよ」
「……」
「サートシ君?」
「わかったよ、何やればいいんだよ?」
どうせ、荷物持ちぐらいだろう、それぐらいやってやるさ、
と開き直って、ようやくサトシはシゲルの方を向き、尋ねた。
「そうだねぇ……」
シゲルは腕を組んで、少し考えていたが、座っているサトシを見下ろした。
「……」
一瞬、シゲルの様子が微かに変わったが、サトシは気付かなかった。
「じゃあ、ついて来てくれ」
シゲルは歩き出す。
サトシは慌てて立ち上がった。
「お、おい、どこ行くんだよ、シゲル!?」
質問に答えず、シゲルはさっさと歩いていく。
サトシは急いで後を追った。




 シゲルは、サトシをマサラタウンの裏山の奥に連れてきた。
元々人気のないところなので、サトシとシゲル以外は、誰もいない。
「なあ、シゲル、こんなとこで一体何するつもりなんだよ?」
サトシは先に進むシゲルの背中に、そう呼びかけた。
「ここなら、人も来ないな」
そう呟いて、シゲルはやっと足を止め、サトシの方に振り返った。
相変わらず、余裕の表情だが、サトシはシゲルがいつもと少し違うような気がした。
「僕の言うこと、何でも聞くんだよな?」
「……そりゃ、そう言ったからな……何するんだ?」
サトシがそう尋ねると、シゲルはクスリと微笑んで、言った。
「サトシ、服脱いで」
「え?」
「服だよ、服。意味分からないのかい?」
シゲルの自分をバカにした言葉に、サトシはむっとなる。
「分かるよ!」
そう言い返して、上着を脱ぎ捨てた。
「Tシャツもね」
「何だよ、ったく、もう……」
ぶつぶつと文句を言いながら、
サトシは言われた通りに、Tシャツを脱いだ。
「ほら、これでいいんだろ?」
サトシがそう言うと、シゲルはわざとらしく、ため息をついた。
「僕は、服を脱いでって言ったんだよ。
君はまだ、上しか脱いでないじゃないか」
「って、ズボンもか!?」
「当たり前だろ」
全く、意味が分からない。
一体こいつは何を考えているんだ、と思いながら、
サトシはベルトを外し、ジーパンに手をかけ、下ろす。
幸い、季節は春の終わりかけぐらいであったから、大して肌寒いとは感じなかった。
「脱いだぜ」
「下着も」
そこでようやく、言われるままに服を脱いでいたサトシの手が止まる。
「え、でも……」
さすがにそれは少し恥ずかしい。
サトシが動けずにいると、シゲルはまたサトシを挑発する。
「何でも言うこと聞くって言ったのは、やっぱり口だけなんだねぇ、サートシ君」
「何だと!」
やはり簡単に、サトシは挑発に乗ってしまう。
そして、シゲルの目論見通り、サトシは着ているもの全てを脱いでしまった。
「これでいいんだろ!」
「……」
サトシの言葉に何も言い返さず、シゲルはサトシの身体をじっくりと眺めた。
段々と、サトシは気まずさを感じてきた。
「お、おい、そんなに見るなよ……」
恥ずかしくなってきたし、何だか身体に違和感を覚えてきたので、思わずそう言うと、
シゲルはようやく視線を身体から、サトシの顔へと移した。
「ああ、そうだね。
確かに見ているだけなのも、あれか」
シゲルはゆっくりとサトシに近づいた。
思わずサトシは一歩下がったが、後ろは木で、それ以上は後ずされなかった。
「シゲル……」
いつもと様子が違う。
サトシは、今はもうそれをはっきりと感じていた。
シゲルは更に近づいてきた。
もう、シゲルの呼吸が感じられる程の距離だ。




 変な感覚が走った。
腰から足に電気のような衝撃を感じて、サトシはその場にしゃがみ込みそうになった。
が、堪えて、下を向き、感覚が走ったところを、見た。
シゲルの手が、そこを握っていた。
「シ、シゲル……!」
「何?」
返事をしながら、シゲルは握っている手に力を加えた。
「あっ……」
また衝撃が走って、今度こそサトシはその場に座り込み、後ろの木にもたれた。
シゲルはクスクスと笑いながら、自分も片膝をついた。
「まだ、触っただけだよ。こんな風に……」
シゲルの手が、ゆっくりとそこを撫でる。
「動かしてもいなかったのに」
「……っあ……」
手足の先が痺れる。
こんな感じ、今まで経験したことがない。
「……い、やだ……」
力が入らなくなっている手で、止めようとシゲルの手に触れる。
だがその手も簡単にシゲルに掴まれた。
「何でも言うこと聞くんだろ?
抵抗しちゃダメだよ」
勝負の条件を持ち出され、抵抗の意志をも封じられる。
サトシは唇を噛み、再開されたシゲルの行為に必死で堪えようとした。
しかし、与えられて感じる不思議な感覚に翻弄され、それに反応して声を上げてしまう。
サトシは何とか意味のある言葉を言おうとした。
「何、で……そんな、とこ……」
「ちゃんと言ってくれないと、何が言いたいかわからないよ?」
シゲルの手の動きが、少しずつ速くなっていく。
それがますます言葉を発するのを困難にさせたが、サトシは、必死にシゲルに尋ねた。
「……な、何で……触るの……?」
サトシの質問に、シゲルの手の動きが止まる。
そして、微笑んだ。
「だって、気持ちいいだろ…?」
その笑顔は、サトシにはひどく冷たく感じられた。
 またシゲルの手が動き始めた。
先端を弄くられ、全体は扱かれる。
「……っん…」
「ほら、こんなに感じてる」
感覚の全てが触れられ、弄られるそこに集中している。
与えられる刺激に反応する。
「初めてなのにね」
今はもう、シゲルの離す言葉ですら刺激となって、サトシを攻める。
脚がビクビクと震え、もう堪えられない。
「――っ!」
自分が声を出したのかも分からなかった。
限界が来て、あっという間に過ぎ去った。
疼きのようなものが残っているだけだ。
 息が上がったまま、サトシは目を開けた。
今、自分に何が起こったのだろう。
シゲルと目があった。
シゲルはまだ冷たく微笑んでいる。
「良かったみたいだな」
「…何、が……?」
尋ねると、シゲルはまたクスリと笑い、サトシに顔を近付けた。
「……」
唇を重ねようとしたが、それを止め、
シゲルは代わりにサトシの耳に舌を這わせた。
「……っ……!」
そのまま下がっていって、舌を首筋まで伝わせていく。
普段なら、触られればくすぐったいと感じるだけですむはずのその行為が、
今は自分の頭をおかしくさせていく。
シゲルはサトシの首筋に軽く噛み付いて、吸って、しっかりと痕をつけた。
目でそれを確認した後、ひとまず顔を上げ、サトシの様子をじっと見つめる。
 自分をおかしくさせる動きがひとまず止まったので、サトシは息を吐いた。
頬を紅潮させ、目を閉じているその姿は、
普段の彼からは想像できない程に、艶やかだった。
サトシの様子に、シゲルは思わずゾクリとなる。
が、まだだ。
もう少し自分を焦らしておきたい。
このままで、もっと彼を乱したい。
 右手の人差し指で、サトシの身体をそのラインに沿ってなぞった。
それだけで、サトシはまた小さく声を上げた。
ずいぶんと、身体が敏感になっている。
 シゲルは胸に唇を寄せた。
一回舐めた後、突起部分を舌で転がし始める。
「……やっ…っ…く……!」
新たな刺激に、サトシはまた反応してしまう。
もう片方も、指で弄くられた。
堪えようとする程、その刺激はサトシを攻め立ててくる。
「もっと、声、聞かせて」
シゲルは突起部分を弄くっていた手を下に伸ばしていき、そっと触れる。
「…あっ……」
握って、優しく撫でる。
先端に、軽く爪を立てた。
「んっ……!」
「……サトシ、そんなに感じるの?」
手の動きは止めずに、シゲルはサトシを見つめ、揶揄した。
「いやらしいな……」
「ちが…っ…」
否定の言葉にクスリと笑い、シゲルはサトシの肩を掴んで、草むらに押し倒した。
「木だと、擦れて痛くなるからね」
意味が分からずに何も言えないサトシに、もう一度微笑んで、
シゲルはサトシの上腿を掴み、大きく開かせる。
あられもない格好をさせられ、サトシは慌てて閉じようとするが、シゲルの手がそれを許さない。
「大丈夫だよ、いきなり挿れたりしないから」
何を、と言いかけ、止める。
そんなこと知りたくない。
これからどうなるかも知りたくない。
もう、止めてほしい。
「……もう…やだ……っ」
サトシが身体を捩らせる。
「抵抗するなって言ったはずだけど?」
やれやれといった様子でシゲルがそう言うと、サトシは首を振る。
「シゲル……お願いだ……」
「……」
「……シゲル……」
シゲルの瞳が微かに細められた。
冷たく笑う。
「ダメ」
一言そう言って、シゲルはサトシの勃ちあがったそれを、指で弾いた。
思わず反応してしまう。
「んっ……」
「ほら、こんなになっているんだから」
続いて、手で包み込んで、緩い刺激を加える。
「……やっ……」
「いやじゃないだろ?」
挑発するように言うと、サトシは首を振る。
「やっ…いや、だっ!」
「ふうん?」
これでも?
その言葉と同時に、包み込んでいたそれを強く握る。
「ふあ…っ!」
その声と、自分の握るそれが手の中で反応しているのに満足し、シゲルはようやく手を離した。
 しばらく何もせずに、シゲルは先程のようにサトシの身体をじっくりと眺める。
途中で直接の刺激は止められたが、
その代わりにシゲルの視線が緩い刺激となって、サトシを襲う。
開かされた脚はいまだシゲルの手によって掴まれていて、閉じることは叶わない。
そんな自分の格好をシゲルに見られていることが、恥ずかしくてたまらない。
「……次は、どうしてほしい?」
シゲルが尋ねてくる。
止めてほしいと言ったらダメだと言ったくせに。
身体は我慢できない程疼いていて、
だがサトシにはそれをどうすればいいのか分からない。
シゲルの好きなようにされるしかないじゃないか。
どんなことをされるのか、それすらも分からないのに。
 サトシは首を振る。
シゲルがまた、笑う。
「ちゃんと言ってくれないと分からないって言っただろ?」
「……知…らない、もう……やだ…っ」
必死でそれだけ言うと、シゲルはしばらく考えていたが、微笑んだ。
「じゃあ、早くすませるよ」
掴んで開かせていた脚を上げ、自分の指を口に含み、濡らした後、
シゲルはもう一度付け根をそっと撫でる。
それから後ろの方へと手を伸ばし、指を一本ゆっくりと挿れた。
「――あっ!」
腰を引こうとしたサトシの動きを押さえ、更に奥へと進める。
手は濡れているので、その動きは滑らかで、
探るように指を動かして、中を拡げていく。
「や…やめっ……」
制止の声に従う気はもちろんない。
シゲルはもう一本、指を増やし、動かしていく。
「ひぁ……あっ!」
ある一点に触れた時に、サトシの声が高くなった。
ここが、彼の感じるところらしい。
「ここ、気持ちいいんだ?」
中で指を曲げ、そこで動かす。
「ん…っ…あ……っく…」
呼吸を荒くさせ、声を上げながら、サトシは地面の草を握りしめた。
何かを掴んでいないと、手に力を込めていないと、意識が飛んでしまいそうだった。
 変わらずシゲルはサトシの脚を掴んでいるが、
たとえ掴まれていなくても、もはや身体は思うように動いてくれず、勝手に反応してしまう。
次第に、気付きたくなかった感情が、姿を見せ始める。
怖い。
これから先何をされるのかが分からない。
それが怖い。
だがそれよりも、いつもと違うシゲルが怖い。
いつもの彼は、
人のことをからかって、バカにしてばっかりの彼は、
それでも優しい時があって……
今の彼にはそれがない。
怖い。
オレの知らないシゲルが、何よりも怖い。
意識し始めた恐怖は、瞬く間にサトシの身体を駆けめぐる。
身体が震えてくる。
恐怖と、与えられる刺激で、頭がおかしくなりそうだ。
 指を動かし、時に鋭い刺激を与えていると、中はだいぶ慣れてきたのか、締め付けが緩くなってきた。
「もう少ししたら、挿れてあげるからな」
サトシに声をかけるが、聞く余裕もないらしく、身体中に走る感覚に翻弄されている。
先程よりも更に頬は赤く染まり、
唇からは苦しげな息づかいが聞こえてくる。
本人にその気はなくても、まるで誘っているようだ。
シゲルの身体も熱くなる。
 どうやら自分も限界が近づいてきている。
焦らし続けたそれが疼き、貫くものを求めているのが分かる。
今すぐに、突き刺してしまいたい。
 シゲルは自分のズボンを下着ごと下ろした。
サトシの脚を開かせ、勃ち上がり、固くなったそれをあてがった。
「……っ!」
思わずサトシが反応する。
このまま、腰を進めればいい。
このまま……

























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激しく中途半端…;;
次で終わり。