すみれ





 気に入らないが、男と女の体格差というものはやはり覆し難い。
男に組み敷かれているこの状況に嫌でもそれを思い知らされ、孫市は眉を顰めた。
が、意に介した風も無く、男は直向きな目で眼下の孫市を見据えている。
 油断したつもりは無かったが、正味この男がこんな行動をするとは思っていなかった。
ならば、結果的にはやはり油断したことになるのだろう。
至った結論に顔を顰めるが、おそらくどうでもいいのだろう、変わらず男は孫市を見下ろしており、
彼女の頭の上で縫い止められている両腕も微動だにしない。
 男の空いた方の手が装束を剥ぎ取り始めたところで、ようやっと孫市は男に声を掛ける。
「石田」
「黙れ」
とりつく島もないが、身体を愛撫する手は丁寧かつ慎重で、意外にも気遣われているようだ。
それに些か絆され、反抗の気が削がれかけるものの、両腕を締め付ける力の強さに思い直した。
「石田、腕を離せ」
眉を顰め、石田は孫市を睨め付ける。
それを見つめ返し、孫市はもう一度腕を離すように言った。
「……抵抗など許さない。すれば、その刃が貴様を切り刻む」
傍らに置いた鞘に収められた刀を指し、そう念を押してから、
石田は漸く孫市の両腕を押さえ付けていた手を離した。
息を吐いて孫市が痛む腕をさすっていると、
石田は胸元まで下ろした彼女の腕を邪魔そうにどかし、
露わになっている彼女の胸の膨らみに唇を寄せてきた。
肌に吸い付かれる感触に微かに眉を寄せ、
声が上擦らぬよう注意しながら、孫市は口を開く。
「石田、確かに我らはお前と契約した。だが、これは我らの契約の範疇に無い」
眉を顰め、石田が目線だけ上げ孫市を睨み付けるが、構わず孫市は続けた。
「個を求めるならば他を当たるのだな。我らに求めるのは筋違いだ」
「……」
緒が切れやすい男だ、てっきり怒り出すかと思ったが、石田は眉間の皺を少し深くしただけだった。
その顔を上げて再び孫市を真っ直ぐに見下ろし、口を開く。
「貴様は、私を個と見なしていないのか?」
普段他人を窺うことをしない男からの問い掛けに少し面食らい、孫市は束の間応えに窮した。
しかし、石田は手を止めたまま孫市の答えを待っている。
先程の気遣いといい、この問い掛けといい、ただ欲に駆られているだけでは無いようだ。
「孫市、答えろ」
とは言え、勿論辛抱強い訳でも無い。
苛ついた様子の石田の声に促される形で、孫市も口を開く。
「そうだな……お前は、我らと契約するに足る者だとは思っているが……」
口が先になったせいか、石田の意外さによる戸惑いが思考を遮ったか、
彼女にしては珍しく、頭が追い付いていない。
普段よりも歯切れが悪くなってしまったが、石田は相変わらず孫市を見つめたまま真顔で言い捨てる。
「ならば、貴様自身にも、この私にも、疑心を抱くな」
「……」
その言葉で思考も追い付いてきたのか、言葉選びが不得手なこの男の言わんとする意味が分かった気がした。
そしてそれは、単に孫市の自惚れという訳でも無さそうだ。
石田にまた名を呼ばれ、孫市は微かに眉尻を下げた。
「……成程、そうなるとこれは、公平では無いな」
公私の区別も無い男だ、始めから全も個も些末に過ぎなかったのだ。
むしろ、線引いていたのはこちらの方だったか。
「……何を言っている」
呼び掛けにも応えず、意味の通じぬ独り言を零し思考を巡らせる孫市に眉を寄せ、石田がそう咎めてくる。
それが少しいじけているようにも見えて、孫市は微笑して応えた。
「いや、私もお前のことは嫌いではない」
「……」
数瞬沈黙した後に、常に険しいその顔が微かに和らいだ気がしたが、
そのまま再度胸に顔を埋めてしまったので、結局よくは分からなかった。
しかし、どのみち大したことでも無いと思い至り、最後に石田へ声を掛けた。
「だが石田、一つだけ言っておこう」
「何だ」
寄せていた唇を胸から喉元へとずらすついでに顔を上げた石田に、
肌を伝う舌の感触に吐息を零しながら孫市は言った。
「中には出すな。孕めば戦には不便だ」
「分かった、留意しておく」
大真面目な顔で頷き、石田はそう応えた。

























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石田くんをできるだけ幸せにしてみよう第一弾。
もとい、姐さん青ルートやって何このハッピーエンドとなったノリと勢いの産物…あれ、似たようなことこの前も言ったな。

台本の注釈が無いと分かりにくい石田くんをさりげに理解してる孫市姐さんすごいよね、愛だよね。
二人の間に言葉なんか要らないんだよね。ラブいよね。
でもこの二人も大概ボケとボケだよね。