実のところ、大谷から貰った"厄払い"の効果はあったのだ。
そうでなければ、いくら誕生日とはいえ、あの官兵衛が無事に鍵を手に入れるなどあり得るはずもなかっただろう。
しかし、あの官兵衛であるので、やはりこのまま無事に終われるはずもなかった。
皆に祝福された官兵衛が、よせばいいのに感極まって鍵を頭上に高々と掲げた時だ。
「おいおい! あんた、そんなことしたら――」
「えっ……?」
慶次が声を掛けるが間に合わない。
プレーアブル武将たちの中では身長が高い方である官兵衛が掲げた鍵、
つまりは光物の煌めきにときめいて、超真空流星隼号が華麗に滑空して、官兵衛から鍵を掠め取ったのだ。
「ば、馬鹿か、アンタは!」
束の間唖然として、次の瞬間、今までの苦労が水の泡になった一同が騒然となる。
その一同を代表して、とりあえず政宗が官兵衛の頭をぽかりと殴った。
「ハハハ、これは愉快だ」
一方で、松永は文字通り愉快そうに焼酎を飲んでいる。
ちなみに、官兵衛が島津義弘から貰った百年物の貴重な焼酎だ。
どうやら大風呂敷のところから見つけたらしい。
先程、酒より茶の方が良いとかぼやいていたが、割とちゃっかりしている。
「とにかく、早く鍵を取り戻すんだ!」
「でも攻撃できないんでしょ? どうするの?」
まず動いたのはかすがだ。
が、飛び去られる心配があるので、無闇に攻撃はできない。
苦無を構えるかすがを、まあまあと佐助が宥める。
「そうだ、あの鳥の好物でおびき寄せるってのはどうだ!?」
そう思い付き、官兵衛が声を上げる。
「鳥の好物? 食べ物かのう?」
「それだ、北条殿!」
「いや、料理には目もくれずに鍵を取っていったんだ。厳しいだろう」
氏政の言葉に乗りかけた官兵衛に、小十郎は重々しく首を振る。
「だったら、あれしかねえな、光物」
そう言って、政宗は超真空流星隼号がときめきそうな光物はないかと辺りを見渡す。
が、現在ここにある光物など、武将たちの武器ぐらいしかない。
「……しかし、刃物類でおびき寄せるなど、食べ物以上に無理ではありませぬか?」
「しかもオレや真田は一戦やり終えた後だしな」
また研ぎに出さねば、と心なしか楽しそうに会話している幸村と政宗に、官兵衛は言い募った。
「何でもいい、とにかく何とかしてくれ!」
「そうは言ってもな……あ、そうだ、アンタのあの技……八つ当たり?
ほら、鉄球叩いて衝撃波を出す技、あれなら火力も無いし、遠距離まで届くから良いんじゃねえか?」
「"厄当たり"だよ!
言っておくが、難易度低いと一発で雑魚を蹴散らせるから、そんなに火力低いわけでもないんだからな!」
「安心しろよ、今の難易度は婆娑羅だ」
「難易度婆娑羅だったの!?
って、そういう問題じゃあなくて、今回の小生は、諸事情により戦えないんだ!」
天海とお市にせっかく磨いてもらった鉄球を汚してしまうのは流石に気が引ける。
それにあの二人は、たとえ距離が離れていても鉄球が汚れたらすぐ気が付くような得体の知れない気味悪さもある。
「黒田殿、その諸事情とは?」
言い合いをしている官兵衛と政宗の間に割って入り、幸村は率直に尋ねた。
「え、ああ、大坂城でこの鉄球を天海様と第五天に磨いてもらってな、汚すと恐らく怒られるんだ」
「ああ、そういや、いつもより光ってるな」
官兵衛の説明に、政宗が納得した様子で呟いた時である。
超真空流星隼号が官兵衛のその鉄球の輝きにときめいたらしく、
一直線に飛んできて、何とその鉄球と鎖の繋ぎ目に留まったではないか。
「えっ……?」
突然の事態に思わず固まってしまった官兵衛に、家康が慌てて声を掛ける。
「官兵衛、早く捕まえないと飛び立ってしまうぞ!」
「あっ、そうだった!」
家康の声に我に返り、官兵衛は超真空流星隼号を両手で抱え込んだ。
その爪にはしっかりと鍵が掴まれている。
やった、遂にやった。
まさか、半ばヤケで親友と呼び名前まで付けた鉄球に救われるとは思わなかった。
ありがとう、親友!
ありがとう、天海様、第五天!
と、官兵衛が感極まっていると、政宗が突然、超真空流星隼号の爪から官兵衛の鍵を取り上げてしまった。
「ど、独眼竜、何をするんだ! それは小生の鍵だぞ!」
抱えていた鷹を半ば放り出し、官兵衛は怒気すら滲ませ、政宗を睨み付ける。
「何をするも何も、アンタに持たせておいたら、また取られちまうかもしれねえだろ。
それに、いやそもそも、手枷付けられている奴がどうやってその枷の鍵を外すってんだ?」
呆れた様子でそう言ってから、一つ息を吐き、政宗は苦笑した。
「ほら、手出しな。外してやるから」
「……は?」
状況について行けずに、ぽかんと間抜けた顔をする官兵衛に、
仕方ねえな、と呟き、政宗は官兵衛の腕を持ち上げた。
錠が外れ、枷が地面に落ちた音に気付き、官兵衛は地面へと目を落とし、
一同へと目を遣ってから、再び目の前の政宗へと顔を向ける。
その官兵衛に笑いかけ、政宗は言った。
「Congratulations!」