フラグが無いなら作ってやる!





 やがて至った考えに大仰に頷くと、政宗は凭れていた脇息から腕を離し、身体を起こした。
「決めた。小十郎、戦支度だ。狐を叩きに行く」
「……は?」
そうして膝を叩き、側で控えていた右目に声を掛ける。
小十郎は思いきり間の抜けた声を上げたが、
流石は竜の右目だ、すぐに持ち直して主君に伺いを立てる。
「狐、と仰いますと、最上ですか?」
その間に政宗の方は別に控えていた近従に軍議を開くよう言いつけていたので、
少し慌てた様子で小十郎は先走る主を止めに入る。
「お待ち下さい、政宗様、まずはこの小十郎にご説明を」
「攻撃は最大の防御なり。やられる前にやってやる」
小姓に具足を持ってくるよう言い付けながら、政宗は建前で戦のいろはを並べ立てた。
勿論それで引き下がってくれる小十郎ではない。
「ならばまず、状況を読むことが肝要と心得られよ。
 逸るのみの御心で、わざわざ狐を喜ばせる必要はありますまい」
「……」
言い含められ、しかも事実なだけに反論も出来ずに、憮然とした顔で政宗は黙り込んだ。
だが、そこはやはり従者バカの小十郎だ。主君へのフォローは忘れない。
「政宗様、まずは狐を叩くという結論に至った理由をお聞かせ下さい。
 然らばこの小十郎、貴方様の右目として、その背をお守り致しましょう」
「小十郎……」
感じ入って小十郎を見つめていた政宗だが、不意にニヤリと笑った。
「その言葉に偽りはねぇな?」
謀られたことに気付いたが後の祭りだ。
更に嬉々とした政宗に本当の目的を打ち明けられ、小十郎は絶句する。
そして、軽はずみに右目として働くなどと言ったことを、とても後悔した。








「よし、船は任せた、小十郎!」
「政宗様、お待ちを!」
今にも駆け出してレッツパーリィしそうな主君を小十郎は何とか押し止めようとする。
「止めるな小十郎!この先に、あの狐が、鳥が、いやがるんだ!」
しかし政宗の方は、六爪を抜き、既に臨戦状態だ。
テンションMAXの政宗に聞く耳は期待できないが、小十郎は言い募る。
「今一度、御心を静められよ!
 今の貴方様の昂揚ぶり、2の政宗様ストーリーの時と何ら変わりありませぬ。
 同じ轍を踏まれるおつもりか!?」
「お、おう……」
意外に効いたらしく、政宗の六爪状態が解除された。
残った刀も一旦鞘に収め、政宗は腕を組んで独りごちる。
「そうだよなぁ、2はなぁ、ちょっとテンション上がりすぎたんだよなぁ……
 豊臣はまだしも川中島乱入とかなぁ、俺KYすぎるだろ、
 何だよあれ、らしくねぇどころか、全然クールじゃねぇよ……」
ちょっとした黒歴史を思い返し、政宗が頭を抱え落ち込み始めた。
テンションが一気にだだ下がった主君を見て、
このままでは兵の士気にかかわりかねないと小十郎は判断する。
「お分かり頂けているのでしたら、何も申し上げることはございませぬ。
 真なる目的はともかくも、思慮を深めた上での此度の政宗様の御判断、
 小十郎は誤りありとは思いませぬ」
一転して、今度は持ち上げてきた小十郎だったが、政宗は右目の発言に素直に立ち直った。
「だ、だよな。今回に関しては俺も考えた。
 2と違って、ここで狐をのしたとしても何ら影響無し、領地が広がるってだけだ。
 それに、いくら俺が攻め込んだところで最上は死なねぇ。
 実のところ、これさえ何とかなれば言うことねぇんだがな!
 OK、俺は冷静だ。というわけで行ってくるぜ、小十郎!」
「は、御武運を」
結局、政宗のテンションが上下しただけで、しかも結果として始めと大して変わりはなかったのだが、
兵の士気が下がらずに済んだおかげか、それとも単に諦めたのか、
小十郎はもう何も言わなかった。




「吾輩は羽州の狐…スゴくて――」
「以下省略だメンドくせぇ」
登場シーンをぶった切り、政宗は六爪の内、三爪を最上義光へと向ける。
「よおジェントルマン、相変わらずムカつく顔してやがるじゃねぇか」
そうして低く凄むが、最上は動じた様子も無く、持っていた玄米茶をずずずっと啜った。
「やあ政宗君、またしても吾輩をつけ狙っているのかね?しつこい紳士は嫌われるよ」
一息つきながら応じる最上に眉を顰めるものの、抑えて政宗は言葉を継いだ。
「安心しな、今回の狙いはアンタじゃねぇ。用があるのは、アンタの鳥の方だ」
政宗の思わぬ言葉に、湯飲みに残った玄米茶を飲み干し、近くにいた家臣に湯飲みを渡してから、
最上は大げさに驚いて見せた。
「吾輩の鳥?それはもしや超真空流星隼号のことかね?」
「そう、その超真空以下略だ。黙って渡せば命までは取らねぇ(取れねぇし)」
「むむむ!吾輩だけではなく、吾輩の愛禽までつけ狙うとは!」
ビシッと針のような刀で政宗を指し、最上はわざとらしく憤慨して見せるが、
すぐに得意げに笑みを浮かべた。
「さては政宗君、吾輩に、スゴく、憧れているね!?」
「……」
清々しいまでの勘違いっぷりに、怒りと呆れを通り越していっそ感心してしまう。
しかし、政宗は反論しようと開きかけた口をふと閉じて、向けていた三爪を下ろし一度鞘に収めた。
「……ああ、そうだな、羨ましいったらねぇぜ。
 おかげで俺は、俺の青ルートと奴の緑ルート以外掠りもしねぇ。
 しかも後者なんて東軍西軍ほぼ関係ないってのに、
 真田は殺さず俺殺されるとか、あれはマジで意味分からねぇ。
 俺こそ元主人公なのに……無敵よりよっぽど主人公なのに……
 笑えねぇ、笑えねぇなぁ……」
「笑っているじゃないか、政宗君」
一人でぶつぶつと文句を吐いている政宗だが、
その目を爛々とさせ唇の端をつり上げている様は近付き難い迫力がある。
揚げ足を取って、最上にしては珍しく律儀にツッコみはしたものの、
政宗の薄気味悪さに眉を顰め、表情に上らせていた余裕を消した。
 六爪の柄に手を掛け体勢を低くしながら、政宗はその身体から蒼い覇気と稲妻を迸らせると、
竜の独眼で獲物たる狐を真っ直ぐに射抜いた。
「よく聞け最上!俺は、鳥を手に入れて、ついでにてめぇに八つ当たりして、そして!」
鞘から再度六爪を抜くと、低く構えた体勢から一転、
地を蹴って最上へと突進しながら、政宗は高らかに宣言した。
「誰も死なない鍵ルートの奥州走竜戦で、アイツに追い掛けてもらうんだあぁっ!!」
そして轟音と悲鳴とが響いた後、辺りは爆煙に包まれた。








 呼び出された大坂城にて、大谷吉継、石田三成両名に手枷の鍵を空の彼方へ飛ばされ、
それをくわえて飛び去った鳥を探し求め尋ね歩き、北へ北へと幾千里、
結局手がかりを失った黒田官兵衛は、藁にもすがる思いで、先見の目を持つという預言者・鶴姫を訪ねた。
うっかり口を滑らせて鶴姫ちゃんを怒らせてしまったりもしたものの、
どうにかこうにか頼み倒し、鳥の行方を見てもらえることになった。
 祝詞を奏上し、矢を放った先の天へと鶴姫は目を注ぐ。
波以外の音が存在せぬ張り詰めた静謐は、やがて鶴姫の口から紡がれた神託によって緩やかに破られた。
「『竜のもとに鳥は降る』だそうです」
「竜というと…奥州の独眼竜・伊達政宗だな!よしきた!女巫、ありがとうよ!」
固唾を呑んで見守っていた官兵衛は、感謝の言葉もそこそこに、
急ぎ足で重い鉄球をずるずると引き摺りながら立ち去っていく。が、
「…………あれ!?」
もうこれっきりですからね、と頬を膨らませた鶴姫が官兵衛の背に向かって声を掛け、
彼に背を向けてばしっと飛び上がったところで、
ようやっと鶴姫ちゃんの預言がいつもと違っていることに気付き、官兵衛は頓狂な声を上げるのだった。

























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筆頭の黒官への想が瞬を駆け抜けすぎた結果こうなり申した。
黒官相手だと伊達はビックリするぐらいデレるよ。クールな俺を忘れるよ。
そして黒官のことは、黒官が何やっても、アイツマジクール!とか思うんだよ。
浮ついているんだ。いいえ、恋しているんです。

まあ、伊達がどんなに頑張っても、黒官はどのみち最後は超真空流星隼号に鍵取られるんだけどね。
黒官オチには敵わぬよ。