「ちょっと出かけてくるわ。」

と言って、グリードは朝から出て行ってしまった。
だからあたしはこれからフリー。
グリードが側にいると、あたしはいつも彼にくっついていてしまう。
でもくっつくものがないからあたしはフリー。

とはいえ、いざ自由な時間があるとなると、今度はどうしたらいいかわかんなくなった。
本を読んでみたけど、肩が凝ったのですぐにやめた。
お店の掃除をしてみたけど、いつもロアが綺麗にしてるから意味なかった。
(実のところ、ロアはあれで結構几帳面なのだ)
通りに出てみたけど、暑かったのですぐにお店に戻った。
もうすることがなんにもなくなった頃、ドルチェットが剣の手入れをしているのを見つけた。



「ドルチェット〜、あんたなんで今日は留守番なの?」
「そういうこともあんの。」
「東の島国の昔話、知ってる?
 死んでしまった主人を、犬が駅でずーっと待ってる、ってやつ。」
「お前なあ、それグリードさん侮辱してんのか、俺を侮辱してんのかどっちだよ・・・。」
「どっちも違うよ。犬はあたしのことだもん。」



くっつくものがなくなったあたしはフリー。
だから本当は、あたしはフリーになるのが怖い。
でも、それはどうして?
せっかくのフリーな時間、嬉しいはずが怖いなんて。






グリードが帰ってきてから、今日一日のことを話してあげた。
ついでに主人を待つ犬の話も詳しく話してあげた。
あたし今日、フリーな犬になったのよって。


「やっぱり人間っていうのは、不自由を美徳とする生き物なのかも。」
・・・お前賢そうなこと言いつつ馬鹿だろ。」
「な、なにがよ!」
「お前は単に俺が大好きなだけだろ。
 くっつくものがなくなったというよりも、俺がいないから寂しかったんだろうが。」
「・・・・ああ、その通りかも。」
「かもじゃなくてそのとおりなんだっつーの。」
「グリードったら傲慢。」
「俺は強欲だ。」




うん、あたしフリーな時間、もういらないかも。